自転車ヘルメットの着用義務の認知度は? アンケート結果から学ぶヘルメット着用の重要さに注目。
今年の「秋の全国交通安全運動」に合わせて、国内ヘルメットメーカーが実施した「自動車ヘルメット着用に関する保護者の安全意識調査」が公表された。2008年の道路交通法改正により定められた自転車乗車時の「ヘルメット着用努力義務」だが、浮かび上がってきたのは、過半数が着用義務について知らないという結果だ。かけがえのない子どもの身の安全を守るためにできることを、本記事をきっかけに今一度考えてみよう。
子どもの自転車乗車時のヘルメット着用率は?
まずは、自転車に乗る子どものヘルメット着用率について見てみよう。
子ども一人の乗車時には55%、親子での場合には62.7%と、いずれにしても半数以上がヘルメットの着用をしているようだ。しかし平均して約4割がヘルメット着用をしていないという事実も浮き彫りになった。
調査をさらに細分化し「第1子から第3子における着用率」を調査した結果、第1子の着用率が60.1%と高く、第2子、第3子と低くなっていく傾向が見てとれる。
おそらく親の子育てへの自信と慣れがこの傾向を導き出しているのだろうが、長子との差がある結果は何だか少々寂しくも感じられる。
「絶対に大丈夫」がないのが交通安全。油断せずに第2子以降にも同様にヘルメット着用を促してあげよう。
まだまだ過半数の人が知らない「ヘルメット着用努力義務化」の認知度
2008年の道路交通法改正で第63条の11「児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない」と定められた。
この条文は、いわゆる「努力義務」と呼ばれるもので、着用義務はないものの着用する努力はしなければならない、というものだ。遵守しなければならないものではないが、法律に定められていることの重さは大きい。それはどれほど周知されているのだろうか。
次の調査結果を見てみよう。
結果を見ると、「知っている」と回答したのは全体の9.5%で、11年経った今でも認知度が低いことが浮き彫りになった。ヘルメット着用率が5割を超えていることに対して、法律の認知度がこれほどまでに低いことは驚きだ。
あくまで 着用 “努力” 義務 であり強制力がないことも理由のひとつなのだろう。しかし、ヘルメットを着用している時とそうではない時では、いざ事故にあった時の結果がまるで違う。法律の認知に係わらずヘルメットを着用している子どもが過半数を占めているのは、危機意識の表れなのだと言えよう。
そのことを踏まえて、次の結果を見てほしい。
自転車死亡事故の損傷部位は「頭」が約6割。
自転車は子どもでも気軽に乗車することができる身近な乗り物だ。だからこそ、もしかしたら事故に遭遇してしまうかも、という意識も薄くなりがちなのかもしれない。
2018年の自転車事故件数は88,614件にものぼる。死亡事故は457件で全体の0.5%(※1)と数字で見れば大きな割合を占めているようには思えないかもしれない。しかし自転車死亡事故が起こっているのは紛れもない事実。
最近は自転車側が加害者になるケースが報道され注目を集めているが、多くは被害者側である。
そんな中、死亡事故における損傷部位については、頭部が約6割を超えており圧倒的だ。(※2)つまり自転車に乗るときに身体のどこを守る必要があるのか、ということに対する結果が明白に出ているということにもなる。
この認知度を調査した結果、「知らない」と「聞いたことがある程度」が半数以上を占めていた。自転車事故における頭部保護の重要性を認識している親が、ほとんどいないという事実が明らかになった。
※1 出典:交通事故総合分析センターイタルダインフォメーション「自転車事故の推移:事故件数及び死傷者数」より
※2 出典:交通事故総合分析センター イタルダインフォメーションNo.97「自転車事故 被害軽減にヘルメット」レポートより
みんなと同じ=安全ではない
では「ヒヤリ体験」をしたことがあったとしたら、ヘルメットに対する意識はどうなるだろうか。子どものヘルメット着用258名に対して調査した結果を見てみよう。
出典:株式会社オージーケーカブト「自転車ヘルメット着用に関する保護者の安全意識調査」
実に半数以上の親が、自転車乗車時のアクシデントなどの際に「ヘルメットがあって良かった」と感じている。
良かった体験がない層も4割ほどいるが、それは幸運であっただけだ。シートベルトやヘルメットなど、あらゆる安全装備は使わないに越したことはないのだが、万が一の事態が今後訪れないとは言い切れない。
万が一の時に役に立ってくれるものなのだからこそ、備えておきたいところだ。
続いて、子どものヘルメット未着用284名に対しては、なぜ着用していないのかを質問した。
すると、トップは「まわりの子どもも着用していないから」という理由だった。続く理由も「ヘルメットのことを考えたことがない」「法律を知らなかった」「すぐにサイズアウトしそうだから」と自分ごとには思っていない様子。
周りに同調することでコミュニティから逸脱せず、「みんなと一緒」であることに安心を感じやすい日本人らしい結果がトップになってしまった。
しかし、その安心感は決して子どもを救ってはくれない。周囲がどうあろうと、我が子の安全を守るために必要なことをする、という強い意思が求められているのではないだろうか。
ヘルメット着用に対する意識は変化するか?
最後に子どもにヘルメットを着用させていない親に対して、このアンケートを通じて感情に変化はあったかを質問した。
「ヘルメット着用努力義務」が法律であることを知ったのちに、ヘルメットを着用させる思いが高まったと回答したのは79.3%。また、87.4%の親は「自転車事故の約6割が頭のケガが死亡原因」だと分かったことで、着用させたい思いを特に強めたようだった。
「あの時かぶっておけば」と後悔しないために
今回のアンケート調査を見ながら、ふと自転車に乗るときにヘルメットをかぶることを「ダサいんだよなぁ」なんて思って避けていた子ども時代を思い出した。(いわゆる「ドカヘル」だったことも理由のひとつだが)
しかし、ダサいとか格好良いとかファッション絡みの問題ではないことは明白だ。ヘルメットはひとつしかない大切な命を守ってくれる重要なアイテム。もしも、お子さんが自転車に乗るときにヘルメットを着用していないのなら、ぜひこの機会に促してあげよう。
子どもの自転車ヘルメット着用に関するアンケート調査【調査概要】
調査期間:2019年6月~7月
対象対象:1歳から10歳の子どもを持つ25歳から49歳までの親 24,920人
調査方法:インターネット調査