ど素人が軽キャンピングカーで一泊してみた【体験レポート】
アウトドアやキャンプに憧れがあるものの、道具もノウハウもないという人は多いのではないだろうか。そんな人でもテントの設営などが要らないキャンピングカーなら、手軽にキャンプ体験ができるはず。実際に編集部員が軽キャンピングカーを借りて体験してみた。
「日常から抜け出し、一人で逃避行したい」
誰もが、時にそんな気持ちになることがあるだろう。私も年に一度くらいは「一人になって逃避行したい」と思ってしまうタイプ。そんな時は何も考えずにクルマを走らせ、健康ランドに一泊して帰ってくるといったことを繰り返していた。
だが、健康ランドで一泊の逃避行もパターン化してきて新鮮味がなくなってきた今日この頃。私は新たな刺激を求めていた。そんな矢先に飛び込んできたのが、今回の「軽キャンパーで一泊する」という企画だった。
一人になりたいクセのある私。実は単独キャンプに強い憧れがあるのだが、残念ながら道具もノウハウもない。しかも真っ暗な山の中で一人で寝るなんて、正直ちょっと怖い。でもキャンピングカーなら話はまったく別。テントの設営も必要なくクルマの中で寝られるなんて、最高じゃないか!
私はこの企画に迷わず手を挙げて立候補した。
軽キャンピングカー体験、その前に?
キャンプなんて何年振りのことだろう。10年近く前に友人たちと海辺で泊まったことはあるが、その時はキャンプ好きの友人が何もかも準備してくれて、私は用意してくれたテントで寝るという「殿様キャンプ」だった。たった一人、外で寝泊まりするのは初めての経験だ。
まずはレンタカーの手配。「軽キャンピングカーのレンタルなんてあるのだろうか?」と思いきや、探すと意外とあるもので、今回の企画にドンピシャで理想的なクルマを手配することができた。
スズキのエブリイをベースにしたキャンピングカー「TASRO」。
赤と黒でコーディネイトされた内装も非日常感を演出してくれる。
大自然に囲まれながら、この空間が自分だけのものになると思うだけでワクワクしてくる。ちゃんとコンセントも付いているので、電気もある程度は使えそうだ。キャンプのノウハウがまったくない私としては、可能な限り文明の利器を活用しながら一人の夜を満喫したい。スマホの充電だってしたい。ワガママだとは思いつつ、キャンピングカーに泊まるとはそういうことだと思っているのは私だけだろうか。
キャンプを実施したのは8/29・30の2日間。千葉県袖ケ浦にある「森のまきばオートキャンプ場」でキャンプ体験をすることにした。AC電源が設置されたエリアもあるので、キャンピングカーさえあれば多少の家電なども使えるはず。行く前からテンションが上がってくる。
だが、ここからが問題だ。事前に何を用意すればいいのかさっぱりわからない。一人で寝泊まりするのに必要なモノは? 食事の用意は? そこで私は同部署のSに相談した。Sは台風だろうが真冬だろうが、休みさえあればキャンプに出掛けるほどのアウトドアマニア。キャンプに関するあらゆるノウハウとアイテムを持っている男だ。実に心強い。私がSに相談をしていると、Sの隣席のYも「キャンプ場でできるアウトドアレシピを記事にしたい!」と便乗。話がどんどん盛り上がってきた。
その結果、日中はSとYもキャンプ場へ同行してアウトドアクッキングを実践することに。なんだか、企画趣旨の方向が変わってきている気がしたが、楽しそうなのでヨシとしよう。
アウトドア&料理の達人のおかげで贅沢な時を満喫。
当日はピーカンの快晴。8月末の灼熱の太陽の下、軽キャンをレンタルした私は、社用車にどっさりアウトドアグッズやら調理器具を積み込んだSとYが待つ木更津のショッピングセンターで合流。一緒に買い出しを行い、無事にキャンプ場へ到着した。
キャンプ場へ到着するやいなや、すかさずアウトドアキッチンの設営を始めるS。見事な手際であっという間に調理場が完成した。
「私の家より充実してるのでは?」というほどの見事なキッチンが、あっという間に完成した。
元シェフだという Yの手さばきは実に見事だった。私はカメラマンに徹して、ひたすらYの調理の様子を撮影することに。
ここからはレシピ記事を担当するYの出番。実はYは元シェフでエスニック料理店で活躍していたという腕の持ち主。元シェフならではの手際の良さで、限られた時間の中で4品を見事に作り上げた。なお、これらのレシピについては後日、別記事で詳しく紹介する予定だ。そちらも乞うご期待!
元シェフのYが手際良く作った4品がこちら!
「とりあえずお疲れっ!」ジンジャーエールで乾杯。
こうして料理も無事完成し、ようやく3人揃ってのお楽しみの時間。少し遅めの優雅なランチタイムと思いきや、Sがこう口にした。
「オレ、今夜すごい大事な飲み会があって、絶対に間に合うように帰んなきゃなんないから10分で食って撤収だからな」
買い出しの時点でかなり時間が押していたのは事実。実はこの日、私がレンタカーを借りに行く直前に財布を忘れたことに気づき家に取りに帰ったことで、大幅に時間のロスが生じていたのだ。時間が押した発端は私にある。「何だよそれ」という言葉を飲み込みつつ、目の前の4品を掻き込むように平らげ、即座に洗い物を済ませる私とY。ものすごい効率の良さでキッチンを撤収するS。確かに気づくと時刻は夕方4時を過ぎていた。
ものすごい勢いで撤収作業を始めるS。楽しい時間は瞬く間に過ぎ去ってしまった。
ちょっと前まで美味しい料理が並び、華やかだったキャンプエリアがあっという間に寂しさいっぱいに。ギャップが凄すぎる。
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いよいよ夜の部。サバイバルがスタート!
いよいよ軽キャンピングカーでのサバイバルが始まる?
仲間が去り徐々に日も暮れかけてきた。さて、いよいよここからは何もかも一人でやっていかなければならない。って、何すればいいんだろう? とりあえず、さっきの料理の残りを食べながら考えるか。
さっき食べたばっかりなのに旨い。キャンプ場は外にいるだけで、なぜかやたらお腹が減る。
まずは後部座席をフラットにしよう。だが、ここで早くもトラップが。クルマを借りた際に説明を受けたにもかかわらず、どうしても後部座席が床下におさまってくれないのだ。
後部座席を畳んだ様子。ここまでは難なくクリアしたのだが、これ以上シートがビクともせずに苦労することに。
上の写真のように畳んだ後部座席をさらに足元まで、もう一段下げて収納しなくてはならないのだが、座席がこれ以上びくともしない。10分近くあれこれ戸惑った結果、座席後部にベルト状の紐を発見。この紐を引っ張ったところ、やっとスムーズに座席が床下にスライドしてくれたが、レンタカーや用具を借りる際は、事前に一度は操作しておくべきだということを痛感されられた。小さなトラブルとはいえ、時間と体力を無駄に浪費してしまった。しかも、こんなことをしている間にそこそこ日も暮れかけてきた。
次の作業は電力の確保だ。ACサイトと呼ばれるエリアにはコンセントが用意されており、ここから電源が供給できるようになっている。
このようにブレーカーとコンセント差し込み口が用意されていた。ちなみに、このキャンプ場の電気使用量は1サイトにつき10A(1000W)までだった。
クルマ側の電源取り込み口は、後部ナンバーの横にあった。
今回借りた軽キャンは外部からの電源を取り込む口があるので、さっそく接続してみた。これで車内の照明もバッテリーを気にせず点灯できる。さっそくスイッチON!
これで基本となるフォーメーションは確定した。スペース的にも一人で過ごすには十分だ。
誰にも邪魔されずに好きなように過ごせる自分だけの城がついに完成した。両脇の棚がすでに山積みで、妙に生活感のある空間に感じられるのはご愛敬。
夏期の車中泊に必須の網戸を作ってみた。
さて、次の作業は「網戸作り」だ。
夏場の就寝時には熱中症を防ぐためにも、窓を開けて車内に風を通すことが必要だ。だが、キャンプ場で窓を開けていれば車内に虫が飛び込んでくるのは必至。夏場の車中泊に網戸は必須なのだ。と、キャンプマニアの同僚Sに教わったので、ホームセンターで事前に以下の3点を用意しておいた。
用意したのはこの3つ。網戸張替用のネットとハサミ、そして両面テープ。
まずは網戸張替用のネットをクルマの窓枠に抑えつけ、はみ出した周囲を大きめにハサミでカット。次に窓枠に両面テープを貼り付けて、カットしておいた網を貼り付ければ簡易網戸の完成だ。
車内から窓枠に沿って両面テープを貼り付けている様子。
両面テープで網を貼り付けてから、はみ出した部分をハサミでカットして整える。
網戸作りの所要時間は、左右の両窓分で強いて20分ほどだった。網戸を貼った後、クルマの窓を開けてみると、早くも車内の照明に向かって飛んできた虫が網の外側に張り付いてきた。自分で作った網戸が役に立ってるというだけで、ちょっとした偉業を成し遂げたようなカタルシスを感じる。
軽キャンピングカーの車内で家電を使ってみる。
必死に網戸作りをしていてあまり意識していなかったが、窓を閉じていた車内の気温と湿度はなかなかの数値になっていた。
日が沈み、多少涼しくなったとはいえ、車内温度は28度。湿度は90%ほどになっていた。
こんな時のために用意してきたのがUSBタイプの小型扇風機。車内ならシガーソケットに接続するタイプのUSBソケットでも使えるが、今回借りた軽キャンには後部のキャビネットにコンセントが付いているので、差し込んでスイッチONしてみた。おお! バッチリ使えるじゃないか。
車内のコンセントから電力を供給して稼働したUSBタイプの小型扇風機。
調子に乗って、普段家で使っている電気ケトルも試してみた。最大消費電力が900Wというのはチェック済みだったので問題ないはずだ。こちらもスイッチON! おおっ、ちゃんとお湯が沸いたぞ。
普段家で使っている電気ケトルでお湯を沸かすこともできたので、持参したハーブティーを淹れてホッと一息。
さらに恐る恐るドライヤーが使えるかどうかもチャレンジ。いざ、スイッチONしてみると問題なく使えた。すごいぞ軽キャンの車内電源!
ワイルドな気分を盛り上げるガスバーナーの炎。
ハンドメイドで網戸を作ったり、面白がって家電を試したりしているうちに、気づくと時刻は21時過ぎになってしまった。キャンプ場の消灯時間は22時なので、そろそろ夕飯を済ませなければならない。昼食はゴージャスだったので、夕飯はシンプルに袋ラーメンだ。よくアウトドアのイメージ写真で見るような、炎を見つめながら過ごす孤高の時を感じてみたかったので、同僚のSから借りたガスバーナーと鍋でラーメンを煮込んでみた。
そうそう。やりたかったのは、まさにこの雰囲気!
「ゴオオオオオ」というガスバーナーの炎の音だけが夜の闇に響く。袋ラーメンに卵を落として煮込んでるだけなのに、雰囲気だけはアウトドアの達人だ。これぞ私が体験してみたかった孤高の時。焚火をするほどの用意もノウハウもないが、夜のキャンプ場でガスバーナーの炎を見ているだけで、どんな自然の中で生き抜くことができるタフでワイルドな男に生まれ変わったような気がした。文字通り、気のせいだが。
大自然の中、孤高の時間を過ごしていると、思った以上にテンションが上がりワイルドな気分に浸ることができる(実際はラーメンを食べているだけ)。
こうして孤高の夜は更けていった。
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起きたらどしゃ降りの雨! さあどうする?
翌朝はまさかの大雨!
普段から朝が苦手な私だが、この日の目覚めにアラームは不要だった。私の目を覚まさせてくれたのは想像を絶する豪雨。クルマのルーフに当たる激しい雨音で叩き起こされた。しかも雨で気温が下がっており、想像以上に寒い。
朝、目覚めるとビックリするほどのどしゃ降り。昨日作った網戸に紅葉した葉っぱが貼り付き、雨模様を背景にちょっとしたアートのようになっていた。
豪雨とはいえ、クルマの中にいる限り浸水や雨漏りの心配は一切不要。テント泊と異なり、多少の天候不順でも問題なく過ごせるのはキャンピングカーで宿泊する大きなメリットだ。おかげで大雨の中を一歩も外へ出ることなく、前夜に作って水筒に入れておいたハーブティーを飲みつつ、予め買っておいたロールパンで朝食を取ることができた。しかし、ここで大問題が発生。
どうしてもトイレに行きたい。
さて、どうする? 考えたが、こればかりはどうしようもない。雨が降るとは思いもしなかったため、傘もレインコートも一切用意してなかったが、クルマのドアを開けてその場で用を足すわけにもいかない。私は覚悟を決めた。どしゃ降りの雨の中、前日に来ていたシャツで頭を覆ってトイレまで猛ダッシュ。戻ってくるやいなや、ドライヤーで髪と体を乾かした。まさかこんなところでドライヤーが活躍するとは思わなかったが、ずぶ濡れのまま過ごすことなく済んで本当にありがたかった。
この頃には車内はすっかりマイルームと化し、完全に生活空間ができあがっていた。
本来は爽やかな朝を迎え、朝食を堪能するシーンも想定していたのだが、待っていたのは豪雨の中のトイレダッシュ。まぁこれもキャンプの醍醐味だと思うことにしよう。
この後、雨は2時間ほど降り続け、雨足が収まってきたのは午前10時過ぎ。完全には雨が降り止まない中、そそくさと荷物をまとめ、座席を走行時の状態に戻して撤収することに。こうして私の軽キャン宿泊体験は終了した。
キャンプに持ってきて良かったモノ、持ってくれば良かったモノ
私にとってこれが初めての単独キャンプ体験となったわけだが、キャンプど素人の私が「持ってきて良かった!」と思えたモノと「持ってくれば良かった!」と思ったモノをここで整理してみたい。
◆「持ってきて良かったモノ」ランキング ◆
【第1位】クリップ付きミニLEDライト!
ズバリ「持ってきて良かったモノ」第1位は「クリップ付きライト」。手に持って使えるキーホルダータイプのLEDライトも腰にぶら下げていたのだが、こちらは一切使うことなくクリップで固定できるタイプが本当に重宝した。固定できれば両手が使えるし、就寝前などに車内をちょっとだけ照らしておきたい時にも大活躍してくれた。
クリップ付きライトは固定できるのが最大のメリット。
【第2位】地面に噴射するタイプの虫よけスプレー
当初、体にスプレーするタイプの虫よけを用意しようと思っていたのだが、同僚のSが勧めてくれたのがキャンプやガーデニング用の虫よけ。地面にスプレーしておくだけで虫を寄せ付けないので、今回のように一か所で拠点を作る場合にはオススメだ。
地面に時々スプレーしておくだけで効果てきめんだった。
【第3位】キッチンペーパー
最初は食事後の食器を拭くだけに使っていたのだが、食べこぼしや泥汚れなどタオルで拭くのに抵抗があるようなものを拭くのに大活躍してくれた。ちなみに最も重宝したのが、豪雨の中をトイレダッシュした後の泥だらけの足を拭いた時だった。
◆「持ってくれば良かったモノ」ランキング ◆
【第1位】クーラーボックス
飲み物や日中の料理で余った食材などは、やはりクーラーボックスに入れておきたいもの。特に夏場は間違いなくあった方が快適だ。
【第2位】レインコート
実は準備していたものの、家に置いてきてしまったレインコート。山の天気は変わりやすいのは百も承知だったが、事前準備の際に天気予報をチェックした上で、結局持ってこなかったのが悔やまれる。
【第3位】ペットボトルの水
汲み置きの水でもいいのだが、今回のように豪雨に見舞われてしまった場合でも、車内に水があればお湯を沸かして温かいドリンクを飲むことができるし、手を洗ったり口をゆすいだりするのにも使うことができる。
他にも「あると重宝するもの」としては、予想以上に気温が下がった場合に備えての厚手の上着。フードもあって動きやすいパーカー系がオススメだ。それから、車内の窓付近にかけておくと目隠しにもなるハンガーとバスタオル。さらにトイレや炊事場などにちょっと出かける際に気軽に履けるサンダルといったところだろう。ちなみに私もサンダルがあったおかげで豪雨の中のトイレダッシュの際、靴まで汚さずに済んで非常に助かった。
初めての一人キャンプ体験を終えて。
初めての一人キャンプ体験は、思った以上に楽しく有意義な時間となった。あっという間に過ぎ去った感もあるが、何を食べてもうまかったし、非日常感を堪能することもできた。今回足を運んだキャンプ場は、トイレは水洗だし300円で5分使えるコイン式シャワーも常備。さらに寝床はキャンピングカーとなれば、本気のキャンプに抵抗があるという人でも気軽に楽しめることが実証できたのではないだろうか。
ただし「一人で夜を過ごすのが怖い」という人や「虫や生き物が苦手」という人は、ちょっとした試練が待っているかもしれない。私も体験する前は、一人で夜を過ごすのはちょっと怖い? と思ったが、実際は何のことはなかった。キャンプ場で夜を過ごしたからといって、スマホやカーナビの画面から貞子が出てくることもなかったし、トイレに花子さんもいなかった。だが、コイン式シャワーの脱衣所では手のひらを広げたくらいの大きさの巨大クモと遭遇。この時はさすがにギョッとしたが、こちらが刺激しなければ攻撃されることもないのでそっとしておいた。その後、シャワールーム内で再び遭遇した時はもう一度驚ろかされたが。
夜も更けた頃、クルマのガラスに貼り付いていたアマガエル。きっと私が中で楽しそうに過ごしていたので、うらやましくなって覗きに来たのに違いない。