ド迫力の生のカースタント!オートジャンボリー2019
大宮の北に位置する埼玉自動車大学校において、7月20日(土)・21日(日)にクルマとバイクの祭典「オートジャンボリー2019」が行われた。300台弱の旧車が集合した「ヒストリックカー展示」を初め、さまざまなクルマとバイクの展示があったが、圧巻は2日目のカースタントショー。実際にクルマをクラッシュさせる大迫力のカースタントが大勢の来場者を驚かせていた。
「オートジャンボリー」は今回で13回を数える人気イベントだ。その中でも評判なのが、モーターサイクルステージで開催されるカー&バイクスタントショーである。初日はバイクスタントチームの「ノーリミットジャパン」が単独でバイクのエクストリームショーを行うが、迫力満点なのが2日目にカースタントチーム「チームラッキー」との共演によるスタントショー。実際にクルマをクラッシュさせるほどの大迫力のカースタントを、来場者の目の前で実演してくれるのだ。
「西部警察」でカースタントを担当した大友千秋氏率いるチームラッキーとは
カースタント担当のチームラッキーを率いるのは、今年で72歳、ロールオーバー回数3000回以上という世界記録保持者である大友千秋氏。かつて、伝説のスーパーポリスアクションドラマ「西部警察」シリーズで5年間カースタントを担当したひとりである。また1978年に公開された劇場映画で、日米のカースタントチームがスタントの迫力を競い合う内容の「マッハ’78」にはスタントドライバーのひとりとして登場。日本のカースタント史の生き証人、そして”ロールオーバーの神様”と呼ばれる人物である。
そんな大友氏が率いるチームラッキーは、日本屈指のカースタントチームで、海外にもその名が知られているほど。実際、2006年公開のカーアクション映画「ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT」においては、日本国内での撮影でカースタントを担当したそうである。
大友氏によれば、その昔、日本では各地で催し物としてカースタントショーが行われていたという。ときには連日の如くロールオーバーを行い、その結果3000回以上という回数に到達したのだそうだ。しかし、現在は一般客の前で実際にクルマをクラッシュさせるようなカースタントショーは数が少なく、オートジャンボリーはその貴重なイベントとなっている。
オートジャンボリーの来場者もそのことを理解しているようで、スタントショーの時間には、会場のモーターサイクルステージ(競輪の競技場のような、外側にバンクがついているオーバルコース)は数千人が集まっていたと思われ、技が披露されるたびに大きな歓声があちこちから上がっていた。
大門団長登場!? まずはパトカーが白煙を上げて軽い準備体操
最初にバイクのノーリミットジャパンが一輪走行や立ち乗りなど、曲芸乗りを披露したあと、いよいよチームラッキーのカースタント。まずは、埼玉自動車大学校所属のパトカー2台がドリフトしたり、その場で白煙を上げまくったりして軽く準備体操し、場の雰囲気を盛り上げる。ちなみに、その盛り上げ役に一役買っていたのが、同校の先生のひとり。元々角刈りだったようで、渡哲也氏が演じたスーツにサングラスという大門団長ルックでパトカーに乗り込んだ。
まずは軽トラックによる片輪走行から
本格的なカースタントは、まず軽トラックによる片輪走行からスタート。なんでも軽トラックは片輪走行の練習に最適だという。車重が軽いから片輪状態で運転しやすく、失敗して横倒しになっても起こしやすい。その上、形状的にロールオーバーしにくいそうで、逆さまになってボディが大きく痛んでしまう心配がないのだそうだ。
ここで物理の話を少々。物体には、必ず重心の直下の地点を中心に「支持基底面」と呼ばれる範囲が存在する。その支持基底面から重心がはみ出さない限り、物体は倒れることはない。クルマはタイヤが4輪とも接地した通常の状態なら支持基底面は広く、重心も低いのでひっくり返すのは困難だ。
しかし、片輪走行をしているときは異なる。支持基底面は極端に狭くなり(前後輪を結ぶ帯状)、左右どちらかに重心がはみ出やすい。要は、浮いているタイヤが接地してしまうか、反対側に転倒してしまうか、どちらかの可能性がとても高いのだ。そこを、ドライバーは自らが座る位置を工夫し、微妙なステアリング操作で重心を微調整しつつ走っているのである。
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続いてはロールオーバー!
いよいよクルマをクラッシュ! まずはロールオーバーから
徐々にカースタントは激しさを増し、実際にクルマがクラッシュするような危険な技に突入。片輪走行の際に使用したスロープを用いて、今度はロールオーバーである。4台のコンパクトカーが、2台ずつ実施し、激しく転がった。
2回目はさらに激しいロールオーバーを披露!
続いての2台は、最初の2台をストッパーとして、よりスピードを上げて勢いよくロールオーバー。これだけ激しくロールオーバーしながら、スタントドライバーは誰ひとりどこもケガをしていないのには驚かされる。
続いては1.5トン強のセダンがジャンプ!!
次はセダンがジャンプに挑む大技。先程ロールオーバーした4台をストッパーにし、そこに突っ込むという過激なアクションだ。それでは、そのジャンプする勇姿を連続写真で!
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いよいよメイン! 「Tボーン・クラッシュ」が炸裂!!
メインイベントはさらに高く舞ってからの「Tボーン・クラッシュ」!
メインもジャンプ技。ただし、さらに高く舞い、より激しくストッパー役のクルマに激突する、「Tボーン・クラッシュ」と呼ばれる大技だ。スロープに加え、先程跳んだセダンを踏み台にすることで、さらに高くジャンプするのである。
そして宙を舞うのはパトカー(受け止め役は引き続き4台のコンパクトカー)。しかも今度は、”火薬師”と呼ばれる、テレビや映画のアクションで火薬を使う特殊効果を担当する専門家が協力。ジャンプ台の一部となるセダンに火薬を取り付け、轟音と視覚効果を加えるのである。
もちろん、どのスタントもプロ中のプロが安全を確保できるよう計算しつくした上で、極限状況を見せることで観客の安全意識の向上を狙ったものだ。当然だが、絶対に真似はしないように。
オートジャンボリーは300台近い旧車や最新車種の本格的なカットモデルの展示、警察や自衛隊などのはたらくクルマ、埼玉自動車大学校が所有する高級スポーツカーなどを間近で見られたりするほか、近隣の高校などの協力も得て実に数多くの催し物が用意されている。
埼玉自動車大学校は大宮からニューシャトル・丸山駅から徒歩で数分。入場無料のイベントなので、まだ見たことがないという人は、来年はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。