洗車のやり方をプロに聞いた!道具・洗剤の選び方、水シミを作らないコツ。
キレイになった愛車を見ると気持ちのいいものだが、自慢の愛車が汚れたとき、どんな方法で洗車をしているだろうか? 洗車・コーティングの専門店「キーパー」が実施する技術コンテストで優勝した「全日本チャンピオン・中嶋彩貴さん」に家庭で手洗い洗車をする際のコツや注意点を教えてもらった。
洗車の先生は、キーパー技術コンテスト全日本チャンピオン中嶋彩貴さん!
今回洗車の方法を教えてくれたのは、2019年キーパー技術コンテスト全日本チャンピオンに輝いた中嶋彩貴さん。洗車・コーティングの専門店「キーパー」では、所属するスタッフを対象に毎年、技術コンテストを実施している。その参加者は実に全国約3200人。しかも、洗車・コーティングを職業とする専門家たちである。その専門家たちの頂点に立ったのが中嶋さんなのだ。いわば「洗車とコーティングの匠」である。
中嶋さんは「スタンドで働く女性になんとなくカッコイイというイメージがあった」という理由で19歳からアルバイトとしてガソリンスタンドで働き始め、大学卒業と同時にそのままガソリンスタンドに就職。3年前から同コンテストに挑戦し、昨年の全国大会で5位に入賞した。その後、チャンピオンになれなかった悔しさをバネに1年間練習を重ね、ついに今年全国大会で優勝してチャンピオンにとなったという。
今回は、キーパーの洗車ブースにお邪魔して、そんな中嶋さんに実際に洗車をしてもらいながらコツや注意点について説明していただいた。
洗車に最適な服装は?
それではさっそく洗車の準備にとりかかろう。まずは服装から。
中嶋さんは「水や泥がはねて服が汚れることがあるので、動きやすくて、汚れてもいい服を選んでください。アクセサリーやベルトのバックルなどの金属はボディに触れて傷がつく可能性があるので外した方がいいです」という。
確かに指輪をしていたりするとボディに大きな傷をつけてしまう可能性があるし、ベルトのバックルもルーフを洗うときにボディやガラスに当たる可能性がある。愛車を傷つけないために余計なものはすべて外した方が無難だろう。プロはつなぎを着用しているのでその点の抜かりはない。また、水をたくさん使うので長靴や防水シューズを履いておきたい。
洗車用洗剤の選び方。食器用洗剤は使わない!
次に洗車用品を準備しよう。洗剤を選ぶ際の注意点は以下の通り。
中性洗剤
最も一般的な洗車用洗剤。アルカリ性や酸性洗剤と比較すると洗浄力は低いが、ボディ塗装やコーティングへの影響が最も少ないので普段の洗車向き。どのような汚れにも効果を発揮するが、こびりついた虫や油汚れなどのしつこい汚れを落とすには不向きだという。
アルカリ性
アルカリ性の洗車用洗剤は、こびりついた虫や油汚れなどのしつこい汚れを落とすのに向いている。「高い洗浄力」とうたっている洗剤の多くはアルカリ性や弱アルカリ性の製品が多いそうだ。
「洗車用洗剤にはさまざまな種類がありますが、家庭ではボディの塗装やコーティング(コーティング車の場合)に影響を与えない中性洗剤を選ぶことが大切です」と中嶋さん。
中性ならば家庭用の食器用洗剤や洗濯用洗剤でも大丈夫では? と疑問が湧くものだがどうなのだろう。
中嶋さんによると「キーパーで実際に数種類の洗剤をクルマの塗装面に付けて、そのまま乾かすという実験をしたところ、一部ですが食器用や洗濯用洗剤の中には、塗装表面が膨らんだり、シミ跡が残ったりしたものもありました。洗車用の中性洗剤でもまれにそういった変化のあるものがあるので、信頼できる洗車用の洗剤を使ってください」とのこと。
プロの洗車では汚れや場所に合わせて洗剤を使い分けるそうだが、間違った知識で塗装やパーツを傷めないように洗車用中性洗剤を選ぶのがベターなようだ。食器用洗剤や洗濯用洗剤などは使用しない。
洗車スポンジは大きめを2つ準備するといい
次はスポンジ選びだ。小さなスポンジで何度も往復すると傷がつきやすく、ムラにもなりやすいため、スポンジは柔らかくて大きなものを選ぶといいという。また、汚れの多い足回りを洗ったスポンジでボディを洗うと傷をつけてしまう可能性があるので足回り用とボディ用とスポンジを2つ用意するといいそうだ。
タオルはマイクロファイバークロス
「洗車用のタオルなんて拭ければなんでもいいんじゃ?」と思うものだが、選び方を間違えると細かな傷だらけのボディになってしまう可能性がある。
中嶋さんによると「洗車用ではないタオルや雑巾でボディを拭くと、硬い繊維でボディを傷つけてしまう可能性があります。また、砂や埃などを巻き込んでしまう恐れがあるので、洗車用のマイクロファイバークロスを使うのがおすすめです」とのこと。
さらに、1枚のタオルで車全体を拭かずに用途別に使い分ける。ボディ用、ドア内側のステップやボンネット内側用、ホイール用と最低でも3枚を用途によって使い分けると傷が付きにくいんだとか。
加えて、洗車直後に水を手早く大まかに減らすためにクロスよりも吸水力のある「合成セーム」もあると便利だという。拭き上げる前に、合成セームを使用して大まかに水を吸い取ってから、マイクロファイバークロスで仕上げるといった流れが綺麗な仕上がりに欠かせないのだという。
以上のことから今回は、上写真のように、カーシャンプー、大き目のスポンジ2つ、合成セーム、マイクロファイバークロス3枚を使用して洗車を行った。
洗車の手順
洗車作業は、気を抜くと大切な車にキズを付けてしまうこともある。洗車キズを付けずに綺麗に洗うためのコツやポイントを、手順に沿ってわかりやすく紹介していこう。
【前準備】バケツに洗剤を入れて、泡立てる
中嶋さん「バケツに洗剤を規定量入れて、勢いよく水を加えて泡立てます。」
たっぷりの泡を含ませたスポンジを使ってボディを優しく洗うと傷がつきにいんだとか。
①足回りの汚れを水流で流す
ホースなどを使用して勢いよく水をかけ、タイヤやホイール、足回りに溜まった砂や汚れを水流で落とす。高圧洗浄機があればそれを利用するとさらにいいだろう。
中嶋さんは「ホイールやホイールハウスは砂やブレーキダストで汚れているので、普段見えない部分にも水をかけて水流で汚れを落としてください」と言って、ホースの水が上に向かうように持ち替えてホイールハウスに水をかけた。ホイールハウスや車体の下は普段見えない部分だが、一番汚れている部分なので忘れずに。
②汚れの多い足回りから洗浄→洗い流す
一番汚れている足回りから洗浄を始める。まずは下回り用のスポンジによく泡を含ませ、ホイールの隙間やホイールナットの凹凸など、汚れが溜まっている場所に注意して洗う。暑い季節に野外などで作業する場合は、汚れを含んだ洗剤がすぐに乾いてしまうので、洗浄した部分ごとに流していくといいそうだ。
③ボディについたホコリや砂などを水流で流す
ボディについたホコリや砂などを上から下へむかって、ルーフ→窓→ボンネット→トランク→サイド→バンパーという順番で流していく。
パネル縁の溝やドアバイザーの隙間、フロントグリルなどにも汚れが溜まっているようで、中嶋さんは溝に沿って水を丁寧に流していた。また、ボディにホースが当たらないように常に気を配っていたのが印象的だった。ホースがボディに当たると容易に傷がついてしまうので気を付けたい。
④上面パネルを洗浄→洗い流す
下回りに使ったスポンジは砂・泥などで汚れているので、間違ってボディに使用してしまうとキズを付けてしまう。必ずボディ用のスポンジに持ち替えて作業する。
こちらも泡をよく含ませてキズをつけないように優しく洗う。
プロの洗車を見ていると、上写真のようにまず枠をとってから、その内側を塗りつぶすようにして洗っていることがわかる。中嶋さん曰く、これが効率よく、洗い残しがない洗い方なのだとか。
中嶋さん「上面パネルを洗う順番は、ボンネット→フロントガラス→ルーフ→リアガラス→トランクと一周まわるように洗います。」
中嶋さん「万一、地面にスポンジやクロスを落としてしまった場合は、使用しないで下さい。付着した砂・泥が深いキズを付けます」
洗い流すときは、泡と汚れを水流で上から下へ、ルーフ→窓→ボンネット→トランクという順番で流していく。
⑤側面パネルを洗浄→洗い流す
中嶋さん「次に側面パネルを洗浄していきます。背側面パネルを洗う順番は、サイド→バンパーです。」
側面パネルをサイド→バンパーという順番で洗い流していく。パネル縁の溝やドアバイザーなどくぼんでいる部分には泡が溜まりやすいので丁寧に洗い流す。
⑥優しいタッチで拭き上げ
家庭の洗車では水道水を使うので、拭き上げ工程でいかに水滴を綺麗に拭き取るかがキモである。水道水に含まれるミネラル分が白い水シミやムラの原因になるからだ。この水シミはイオンデポジットと呼ばれ、一度こびりついてしまうと落とすのがかなり難しいという。水シミがつかないように水分を拭き上げていこう。
まず合成セームを広げて優しく滑らせるように全体の水分を減らす。合成セームは水を吸収しやすいので、ボディ上を優しく滑らせるだけでも大きな水滴を吸い取ってくれる。
次に、四つ折りにしたマイクロクロスでボディ全体を拭き上げる。マイクロファイバークロスが水分を多く含んできたら、よく絞ってから拭く。拭き上げの時は、力を入れると細かな傷がついてしまうので優しいタッチで拭きとる。
中嶋さん「何回も同じ場所をこすらず、できるだけ1回で拭き上げるのがポイントです。」
さらに「拭き上げのマイクロファイバークロスは最低3枚を使い分けてください」と続けた。
拭き上げの際は、ボディ用、ボンネットとドアステップ用、ホイール用とを使い分けることでキズが付かないよう配慮するのだ。
ステップ用のマイクロファイバークロスに持ち替え、ボンネットやトランクを開けた縁の部分、ドアを開けたステップの部分などを拭き上げていく。見えにくい場所なので忘れがちだが、水滴が溜まりやすいのでしっかりと拭き上げる。
さらに、足回り用のマイクロファイバークロスに持ち替えて、ホイールやタイヤなどの足回りについた水分を拭き上げる。ホイールの隙間やホイールナットの凹凸などには、水が残りやすいのでしっかりと水分を拭き取る。
これらのコツやポイントを押さえることで、効率よく綺麗に洗えるだけでなく、洗車作業による洗車キズの心配がなくなるそうだ。
ちなみ中嶋さんの勤務するスタンド(アドバンス・カーライフサービスDDセルフつくば研究学園店)では、ミネラル分をほぼ完全に除去した「純水」を使用して洗い流しているそうだ。それにより水シミができないだけでなく、透明感のある仕上がりになるのだという。一般家庭にこの純水マシーンがあるはずもない。水道水を使う我々は、とにかく水滴が残らないように丁寧に拭き上げるしかない。
洗車ビフォーアフター
それでは今回の洗車のビフォーアフターを上写真で比べてみよう。左が洗車前、右が洗車後である。さすがプロが洗車しただけあってムラもなく光が均一に反射していて、見違えるほどにキレイになっていることが分かる。洗車前は縦縞のようについた汚れがかなり目立っていたが、バッチリと落ちている。
このように市販の洗車グッズを使用してもしっかりと手順を踏めば、クルマをキズつけずにキレイに洗車できることがわかった。基本的にどの工程でも汚れを上から下に、そして優しいタッチで洗っていくことが重要なようだ。大切な愛車を美しいまま長持ちさせるために手洗い洗車に挑戦してみて欲しい。
そして最後に中嶋さんは「普段の家庭での洗車をより簡単にしたり、汚れがつきにくくするためにクルマにコーティングやワックスをかけることがおすすめです。艶が出るだけでなく水はじきもよくなります。キーパーでコーティングすると洗車がもっと楽しくなりますよ!」と営業トークも抜かりなかった。さすが洗車とコーティングの匠である。
今回洗車のコツを教えてくれた中嶋さんが働くお店と洗車グッズの詳細は下記を参照のこと。
店舗詳細など
・株式会社アドバンス・カーライフサービス Dr.Driveセルフつくば研究学園店
※こちらの店舗では、今回使用した洗車グッズの取り扱いはありません。
住所:〒305-0817 茨城県つくば市研究学園1-2-9
電話:029-868-6710