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最終更新日:2019.03.07 公開日:2019.03.07

60年強の歴史!! 現行モデルまで15代を数えるトヨタ「クラウン」が集結【クラウンDAY at Motomachi】後編

トヨタのフラッグシップモデル「クラウン」。1955年1月7日に誕生し、以来15代にわたって国産高級車の代名詞的存在だ。そんな「クラウン」の60年以上の歴史を振り返るイベント「クラウンDAY at Motomachi」が、2月23日・24日に神奈川トヨタと横浜・元町ショッピングストリートのコラボレーションにより開催された。

 前編では、初代、初代後期、2代目、3代目(ステーションワゴン)、6代目、8代目の昭和から平成初期のモデルを紹介した。後編では、平成最後の10年に登場した13代目、14代目とそのオープンカー、現行15代目とその神奈川トヨタ80周年記念オリジナル特別仕様車「スポーツ スタイル リミテッド」の5台を掲載する。

 その前に、前編最後に紹介した8代目から後編最初の13代目までについても、簡単ながら紹介しておきたい。

【9代目】

9代目JZS140系は1991年10月に登場。このときは、主力の4ドアピラードハードトップのみフルモデルチェンジが実施され、「ロイヤル」シリーズというモデル名が初めて設定された。最上級モデルの「クラウン マジェスタ」が登場したのも9代目から。ただし、「マジェスタ」は「クラウン」の名こそ冠するが、モノコックボディを採用するなど、系統として別のクルマとして誕生した(2代目では、10代目「クラウン」とプラットフォームを共用)。セダン、ステーションワゴン、バンなどは8代目のマイナーチェンジのみが実施されたが、現在では9代目として扱われている。バンは9代目が最終モデルとなり、1999年12月をもって生産終了した。

【10代目】

10代目JZS150系が登場したのは1995年8月のこと。まず、8月に4ドアピラードハードトップ(「ロイヤル」シリーズ)と「マジェスタ」がフルモデルチェンジ。10代目は伝統のペリメーターフレームをやめ、「マジェスタ」とプラットフォームを共用するモノコックボディが採用された。セダンは同年12月にフルモデルチェンジとなり(実質9代目だが、現在では10代目とされている)。このときに、タクシー用の「クラウン コンフォート」が誕生した。同じタイミングでステーションワゴンもフルモデルチェンジとなり、最終モデルの10代目が登場。10代目は「クラウン エステート」とモデル名が改められた(2007年6月に生産終了)。

【11代目】

11代目JZS170系の登場は1999年9月。6代にわたって採用してきた4ドアピラードハードトップスタイルを終了し、ガラスサッシ付きのドアを持つ一般的なセダンとした。ただしセンターピラーをブラックアウト処理にして4ドアピラードハードトップらしさを残すデザインとし、系統もそのままとしている。また8年ぶりにスポーツ系の「アスリート」を復活させ、モデルラインがラグジュアリー系の「ロイヤル」シリーズとの2系統となった。また「マジェスタ」も同じタイミングで3代目が登場。そしてセダンは、2001年8月に最後のフルモデルチェンジ。ただし、実際のところは「クラウン コンフォート」の装備充実モデル。6代目「マークII」ベースのプラットフォームを用いており、「ロイヤル/アスリート/マジェスタ」とは系統が異なるクルマだった。

【12代目】

12代目GRS180系は2003年12月に登場。「ゼロからのスタート」を開発テーマに掲げ、プラットフォーム、エンジン、サスペンションなどが主要コンポーネントが一新された。11代目までとはエクステリアデザインも大きく変わり、現行(15代目)にもつながるより現代的なデザインとなっている。「マジェスタ」のフルモデルチェンジは半年後で、2004年7月に4代目が登場。4代目は12代目「クラウン」をベースにボディの前後のデザイン、内装、エンジンなどを専用仕様とした。2006年6月に「セルシオ」が販売終了したため、「マジェスタ」がトヨタブランドのオーナーズカーのトップモデルとなった。

「ハイブリッド」が加わる13代目からは「3.0ロイヤル サルーン G」(2008年2月発売)

13代目のGRS202型「3.0ロイヤルサルーンG」2008年式。全長4870×全幅1795×全高1470mm、ホイールベース2850mm。車重1600kg。排気量2994cc・V型6気筒DOHCエンジン「3GR-FSE型」搭載。最高出力188kW(256ps)/6200rpm。13代目の「ロイヤル」シリーズは5グレードあり、「3.0ロイヤルサルーンG」は上から2番目。

 2008年2月に登場した13代目からは、「3.0ロイヤル サルーン G」が展示された。13代目は当初、ラグジュアリー系の「ロイヤル」とスポーツ系の「アスリート」がラインナップされたが、3か月後に「ハイブリッド」も追加設定された。「ハイブリッド」は実質的には13代目の1グレードとして扱われているが、系統的には「クラウン」シリーズの新モデルとして扱われており、初代「ハイブリッド」となっている。また最上位モデルの「マジェスタ」は、1年以上あとの2009年3月にフルモデルチェンジして5代目が登場した。

 13代目のエクステリアデザインは12代目のデザインを踏襲し、それを発展させたものとなっている。フロントホイールアーチを強調するフェンダーラインが特徴で、ヘッドランプユニットもそれに合わせた複雑な形状が採用された。「ロイヤル」と「アスリート」では異なるデザインが採用されており、「ハイブリッド」は「ロイヤル」のグリルと「アスリート」のバンパーを組み合わせたまさにハイブリッドなデザインとなっていた。

王冠型フロントグリルが特徴的な14代目からは「ハイブリッド アスリート S」(2012年12月)

14代目のAWS210型「ハイブリッド アスリート S」2012年式。全長4895×全幅1800×全高1450mm、ホイールベース2850mm。車重1660kg。排気量2493cc・直列4気筒DOHCエンジン「2AR-FSE型」+モーター「1KM」搭載。エンジン最高出力131kW(178ps)/6000rpm+モーター最高出力105kW(143ps)。実質的に「ハイブリッド」は14代目の「ロイヤル」と「アスリート」それぞれの1グレードという扱いだったが、系統的には「クラウン ハイブリッド」の2代目。生産開始は2013年1月からだった。

 2012年12月25日のクリスマスに登場した14代目。「ロイヤル」と「アスリート」という2ラインに対し、それぞれに「ハイブリッド」が用意されたのは13代目と同じだ(「ハイブリッド」は系統的には異なり、2代目「ハイブリッド」とされている)。またプラットフォームも13代目から踏襲された。エクステリアデザインは、ヘッドランプユニットの形状は12代目からの流れを残しつつも、グリル部分が一新。メインとロアのグリルを一体化させて王冠風にした、特徴的なデザインとなっている。「アスリート」に関しては、その上にスピード感も加えたデザインとなっていた。「マジェスタ」は2013年9月にフルモデルチェンジして6代目が登場。2018年に販売終了となった。

 14代目からは安全装備も大きく進化。トヨタ車としては初めて、衝突被害軽減ブレーキ「プリクラッシュセーフティシステム」などが装備された。そのほか、周囲を超音波でセンシングする「インテリジェントクリアランスソナー」、誤発進を抑制する「ドライブスタートコントロール」、夜間にハイビームを保持しつつ周辺車両に影響のある部分のみを自動遮光する「アダプティブハイビームシステム」なども、グレードに応じて設定された。

新色「モモタロウ」で塗装された14代目の特別仕様車「ReBORN PINK」を改造したオープンカー

14代目の限定モデル「ReBORN PINK」をベースにした「クラウンオープンカー」。後席シートの後方上部に取り付けられるシートがトランク内に用意されており、オリンピック選手などの凱旋パレードではそこに選手たちが座って沿道の人々からよく見えるようにする仕組み。

 14代目の「ハイブリッド アスリート G」および「アスリート G i-Four」に特別仕様として設定されたのが「ReBORN PINK」と呼ばれる限定モデル。2013年9月1日から1か月間だけ注文を受け付け、なんと約650台の受注があったという。このオープンカーはその「ReBORN PINK」を、パレードなどで使うためにオープンカーとして改造したもので、市販されていない特別な車両だ。現在、オープンカーはピンクが2台、ホワイトが2台の計4台があり、オリンピック選手を乗せた凱旋パレードなど、全国各地で使用されている。

 ピンクが選ばれた理由は、「クラウン」にとって”意外なボディカラーだからだ。このピンクは「ReBORN PINK」のためだけに新規開発された「モモタロウ」という新色。また内装もダッシュボードなどがブラックで、シートなどがホワイト。そこにテリー伊藤氏がカラーコーディネートを手がけ、メーター指針やハイブリッド車のパワースイッチおよびガソリン車のスタートスイッチがピンク色になっているほか、各所の差し色やシートのステッチなどにピンクが使われている。

2018年6月に登場した現行15代目は初代コネクティッドカー!

今回は、15代目は6台展示されたが、そのうちの通常モデル5台はすべてハイブリッド(年式はすべて2018年式)。上写真は、排気量2487ccの直列4気筒「A25A-FXS型」を搭載した2WD車のグレード「G」。15代目は、「ロイヤル」、「アスリート」の2系統のモデルラインがなくなった。ハイブリッド車がメインとなっており、ガソリン車よりも種類が多い。グレードはどのモデルであっても「RS アドバンス」が最上位だ。

 今回、現行モデルの15代目は通常モデル5台、特別仕様車が1台展示された(すべて2018年式)。15代目も”トヨタ車初”の技術を搭載する伝統を守っており、車載通信機DCM(Data Communication Module)を全車標準装備。”コネクティッドカー”として、煩雑な接続作業などの必要なく、定額で常時通信が可能となった。それにより、車両盗難時に車両位置を追跡できるセキュリティサービスや、道路情報も常時自動更新するサービスなどを利用できるようになったのである。

 プラットフォームは、TNGA(Toyota New Global Architecture)コンセプトに基づく新型を採用。エンジンは、ハイブリッド車用が熱効率41%(ガソリン車は40%)の高効率を達成した「ダイナミック・フォース・エンジン」シリーズ(※1)の1基である「A25A-FXS型」(排気量2487cc・直噴・直列4気筒)など3種類。予防安全パッケージは第2世代の「トヨタ・セーフティ・センス」を搭載しており、現在のトヨタの”最新”が詰め込まれている。

 エクステリアは、輪郭が変更されたがメインとロアが一体化したフロントグリルが14代目から踏襲された。フロントホイールアーチに合わせた形状のヘッドランプユニットは12代目から踏襲。より切れ長になり、シャープなデザインとなっている。

※1 熱効率41%を達成した「ダイナミック・フォース・エンジン」については、別記事『【人とくるまのテクノロジー展2018】トヨタは2Lの新型直4NAエンジンなどを展示! 新車に搭載する…らしいぞ!?』に詳報。

15代目の神奈川トヨタ80周年記念オリジナル特別仕様「スポーツ スタイル リミテッド」

「スポーツ スタイル リミテッド」。フロントスポイラー、サイドスカート、リヤバンパースポイラーのエアロ系はTRD製。ホイールはBBS製アルミホイール「RI-A(18×8.5J+48)」。特別仕様用の限定色となっており、ピアノブラックとセンターキャップの赤となっている(タイヤ換装、マックガード社製ロックナット付き)。マフラーは、神奈川トヨタとTRUSTが共同開発したDTEC製オリジナルマフラー。DTECとは神奈川トヨタが立ち上げた、日本初のカーディーラーによるチューニングブランド。そして15代目クラウン専用で開発されたDTEC製「COXボディダンパー」も採用。ボディダンパーとはスタビライザーやタワーバーとは異なる発想で開発された、走行時に刻々と変化するボディの変形や振動を穏やかに整えることで、直進安定性や乗り心地を向上させる効果がある補強部品。ペダルも、レクサス「LS」と共通のアルミペダルに変更されている。

 今回のイベントを主催した神奈川トヨタは、神奈川県初の自動車ディーラーとして1939年に創業し、今年で80周年。全国のトヨタ系販売店の中でも指折りの歴史を有する。そんな神奈川トヨタが、創業80周年を記念し、80台限定で販売している特別仕様車が「スポーツ スタイル リミテッド」だ。ベース車両は、A25A-FXS型エンジン搭載の「RS」もしくは2WDの「RSアドバンス」で、特別装備は上写真のキャプションで説明した。販売期間も限定で、2019年12月31日までだ。ノーマルの15代目と比較すると、各部が異なっているのがわかるはずだ。


 「クラウンDAY at Motomachi」で展示された車両を中心に、15代+αを前後編に分けて紹介した。「クラウン」は、代が変わってもエクステリアデザインが大きく変わらないことが多いことを見て取れたはずだ。それは、トヨタはおろか、国産車のフラッグシップモデルともいえる「クラウン」だけに、購買層の年齢が高く、またタクシーやハイヤー、公用車などの法人需要も多いことから、斬新さや冒険ではなく、地に足の着いたトラディショナルなデザインが求められるからだろう。

 しかしその一方で、技術的な挑戦は毎回行われている。車両価格が高いことから新技術を搭載しやすいという面があるだろうが、技術的に”トヨタ車初”を搭載することを「クラウン」は宿命として求められているのだという。トヨタのその時代の最新技術が詰まったクルマが「クラウン」なのだ。

 21世紀に入ってからの「クラウン」は4~6年でモデルチェンジしていることから、16代目は2022~24年頃に登場するものと思われる。そのときにはもうガソリン車モデルは設定されない可能性もあるし(※2)、全固体電池の開発に成功していれば「クラウン」初のEVモデルが誕生することも考えられるだろう。今後も、技術的な挑戦をしつつ「クラウン」は姿を現し続けるはずだ。多くのクルマがさまざまな理由から過去の車種として姿を消していったが、クルマという乗り物が存在する限り、「クラウン」には代を重ねていってほしいものである。

※2 2017年12月18日にトヨタが発表した「2025年頃までには、全車種を電動専用車もしくは電動グレード設定車に」関しては、別記事『トヨタ、2025年までにエンジンのみの車種を廃止! 世界のEV化の潮流にのるか!?』に詳報

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