【JNCAP2017】衝突安全に新しく5車種を追加!
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年大きく2回に分けて発表している「自動車アセスメントJNCAP」。 10月26日に発表された2017(平成29)年前期の「衝突安全性能評価」。 らに5車種が追加されたので、合わせて全10車種のランキングを掲載する。
JNCAP2018年の前期が2018年11月29日に発表されました。記事はこちらです(新しいタブが開きます)。
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年大きく2回に分けて発表している、「自動車アセスメントJNCAP」。2017(平成29)年前期の「衝突安全性能評価」(衝突安全)に関しては、10月26日に5車種の評価結果をお伝えした。
そして、2018年1~2月にかけてさらに5車種の評価結果が追加発表されたので、今回は全10車種をランキングで掲載する。
JNCAPの評価試験は大別して2種類
(初めてJNCAPの記事を読む読者のために同じことを毎回書いていますので、読み飛ばしても大丈夫です)
評価試験は大別して2種類ある。ひとつは、事故を未然に防ぐための技術を評価する「予防安全性能評価」(全11車種による2017年前期最新版の記事はこちら)。もうひとつが、今回紹介する、実際に衝突してしまったときに乗員や衝突された歩行者の安全性を評価する衝突安全だ。
衝突安全で行われる評価試験は大別して3種類。人の頭部および脚部を模したダミーを車体のしかるべき部分にぶつけて衝撃度合いを計測する「歩行者保護性能評価」(100点満点)、実車を用いた衝突試験を行って乗員が受ける衝撃度合いを計測する「乗員保護性能評価」(100点満点)、そして「シートベルトの着用警報装置」(8点満点)の合計208点満点で評価される。
乗員保護性能のための評価試験は、「フルラップ前面衝突試験」、「オフセット前面衝突試験」、「側面衝突試験」の3種類を実施。実際に同一車種3台を一般の購入者としてメーカーには知らせずにディーラーで3台購入し、クラッシュさせる
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上位3車種はどんな顔ぶれ!?
まずはベスト3を発表!
総合得点が208点満点であることから、感覚的にわかりやすくするために100点満点に換算した点数も併記した。
また総合評価は5つ★が最高で、そのクルマは「ファイブスター賞」が授与される。
そしてマークに関しては、【SCA】、【感電】、【ASV++】、【ASV+】の4種類がある。【SCA】は、乗員保護の側面衝突試験においてサイド・カーテン・エアバッグの評価を実施したことを意味する。【感電】は、衝突後に感電保護性能評価試験を実施して評価基準に適合した車種。そして【ASV++】もしくは【ASV+】は、予防安全で好成績を収めたことを意味し、予防安全79点満点中の46点以上で【ASV++】、12点以上で【ASV+】だ。
1位:CX-5(マツダ)
総合得点:187.3点(90.0点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩行者保護:81.12 乗員保護:95.45 シートベルト着用:4.0
マーク:【SCA】【ASV++】
試験を受けたグレード:XD PROACTIVE
マツダのクロスオーバーSUV「CX-5」は、前回のまま1位をキープ。マツダ車の「SKYACTIV-BODY」フレームは、基本フレームのストレート化・連続化によって剛性を確保するのと同時に軽量化を実現している。また、衝撃をフレーム全体に広く分散させて受け止めるマルチロードパス構造にもなっている。2011年から今回の2017年度前期追加分までの同一試験を受けた全92車種による衝突安全総合ランキングでは、前回のまま5位をキープ。ちなみに、先代モデルの12年式は12位。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。
2位:C-HR(トヨタ)
総合得点:185.8点(89.3点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:82.71 乗員保護:91.36 シートベルト着用:5.67
マーク:【SCA】【感電】【ASV++】
試験を受けたグレード:G
トヨタの新型コンパクトSUV「C-HR」も前回の順位をキープして2位。トヨタ車が採用している衝撃安全ボディは「GOA(Global Outstanding Assessment)」と呼ばれ、「C-HR」も採用している。GOAは、前後がつぶれることで衝撃を吸収する構造、乗員を保護する高強度のキャビン、車重や車高の違うクルマ同士の衝突でも双方の被害を抑制するコンパチビリティ性など、現代のクルマの衝突安全性能のスタンダードを備える。その中でも「C-HR」は2016年12月に発売された新型のため、より新しいGOAとなっており、それだけ安全性が高くなっている。全92車種でも6位を維持。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。
3位:《NEW》N-BOX2017年式(ホンダ)/軽
総合得点:184.1点(88.5点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:83.67 乗員保護:88.80 シートベルト着用:6.00
マーク:【SCA】【ASV++】
試験を受けたグレード:G Honda SENSING
ホンダ「N-BOX」は軽自動車ながら3位にランクインした。今回の新型は、15年に評価試験を受けた先代モデルから26.4点のアップを果たしており、中でもアップしたのが16.78点を獲得した乗員保護性能だ。新型では、衝突時に発生する衝撃(G)を制御するホンダ独自の衝突安全技術「G-CON(G- FORCE CONTROL TECHNOLOGY)」をボディに採用。それにより軽自動車としては別格ともいえる乗員保護性能を実現し、全92車種で先代は82位だが、今回の新型は13位と大躍進し、軽自動車としては唯一のベスト30入りを果たした。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。
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4~6位はこんなラインナップに!
次は4~6位!
4位:《NEW》JPN TAXI(トヨタ)
総合得点:182.9点(87.9点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:78.59 乗員保護:90.53 シートベルト着用:6.0
マーク:【感電】【SCA】
試験を受けたグレード:匠
トヨタが17年10月から発売を開始した、新開発のタクシー専用車「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。4位にランクインした。全方位コンパチビリティ構造と歩行者障害軽減構造を備えるボディとなっている。また後席のシートベルト着用を促す「リアシートベルト非着用警告灯」により、シートベルトの着用警報装置も点数が6点と高い。そのほか、乗員保護に関しては、6つのエアバッグで前席と後席をカバーしている。全92車では18位。MEGA WEBにて撮影。
5位:《NEW》ステップ ワゴン2017年式(ホンダ)
総合得点:180.9点(87.0点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:77.21 乗員保護:91.33 シートベルト着用:4.0
マーク:【感電】【SCA】【ASV++】
試験を受けたグレード:SPADA HYBRID G Honda SENSING
5位にランクインしたホンダの大型ミニバン「ステップ ワゴン」。今回試験を受けた「SPADA HYBRID G Honda SENSING」は、17年9月の2回目のマイナーチェンジで登場した、高級グレード「スパーダ」の内の2モーター・ハイブリッドモデルだ(2017年式)。「ステップ ワゴン」にもホンダ独自の衝撃制御技術「G-CON」が採用されており、乗員保護性能が高い。全92車種では、2015年式「スパーダ」が22位で、今回の2017年式は27位となった。
6位:《NEW》シビック(ホンダ)
総合得点:180.8点(86.9点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:69.49 乗員保護:93.82 シートベルト着用:5.00
マーク:【SCA】【ASV++】
試験を受けたグレード(ボディタイプ):SEDAN
国内では、海外と比べて1~2年ほど後となる17年9月からの販売となった10代目「シビック」。セダン、ハッチバック、走りを追求したスポーツモデル「タイプR」の3種類があるが、今回試験を受けたのはセダン。衝突安全性能としての特徴は、ポップアップフード式のボンネット。万が一の事故で歩行者が車体に乗り上げてしまったとき、頭部への衝撃を緩和できる仕組みだ。全92車種では28位にランクイン。
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ランキングの最後は7~10位
続いて7~10位
7位:トール(ダイハツ)※SCA付き
総合得点:180.3点(86.7点)
総合評価:★★★★
歩行者保護:78.70 乗員保護:87.90 シートベルト着用:6.00
マーク:【SCA】【ASV+】
評価試験を受けたグレード:OEM車「ルーミー カスタムG」(トヨタ)
ダイハツのコンパクト・トールワゴン「トール」は、16年11月発売。側面衝突時に乗員の頭部を守るのに有効なSCA(サイド・カーテン・エアバッグ)付きとなしでそれぞれ別個に評価試験を受けた。なおOEM供給車として、トヨタ「ルーミー」/「タンク」、スバル「ジャスティ」がある。「トール」を含めたダイハツ車に採用されているのが、独自の衝突安全ボディ「TAF(タフ:Total Advanced Function)」だ。TAFは”総合的に衝突安全機能が進化したボディ”という意味合いを持ち、衝撃を効率よく吸収・分散させるボディと強固なキャビンという、現代の衝突安全の定番で構成される。全92車種でSCA付きは29位にランクインした。
8位:《NEW》リーフ2017年式(日産)
総合得点:179.4点(86.3点)
総合評価:★★★★★
歩行者保護:67.82 乗員保護:94.78 シートベルト着用:4.0
マーク:【感電】【SCA】【ASV++】
17年9月から販売を開始した日産のEV、2代目「リーフ」。8位にランクインした。「リーフ」に採用されている日産独自の「ゾーンボディ」は、高強度キャビンと衝撃吸収構造で構成され、車重や車高の異なる車両同士でも自分と相手のクルマの双方の被害を低減させるコンパチビリティにも対応しているなど、現代の衝突安全の定番といえる機能を備えている。万が一の事故で乗り上げた歩行者の頭部や脚部への衝撃を緩和できる歩行者傷害軽減ボディにもなっている。全92車種では、先代モデルの53位から今回の2代目は32位にジャンプアップした。「CEATEC2017」にて撮影。
9位:トール(ダイハツ)※SCAなし
総合得点:169.6点(81.5点)
総合評価:★★★★
歩行者保護:78.70 乗員保護:77.23 シートベルト着用:6.00
マーク:【ASV+】
評価試験を受けたグレード:OEM車「ルーミー カスタムG」(トヨタ)
こちらは、SCA(サイド・カーテン・エアバッグ)なしのダイハツ「トール」(OEM車のトヨタ「ルーミー」/「タンク」、スバル「ジャスティ」を含む)。SCAがないことで影響が出ているのが、乗員保護性能評価の点数。3種類の衝突試験の内の「オフセット前面衝突試験」と「側面衝突試験」でSCAが有効なため、SCA付きは87.90点だが、なしだと77.23点と10点以上の差がついた。全92車種は55位。
10位:ワゴンR/同スティングレー(スズキ)/軽自動車
総合得点:163.0点(78.4点)
総合評価:★★★★
歩行者保護:73.42 乗員保護:75.76 シートベルト着用:4.00
マーク:【SCA】【ASV++】
評価試験を受けたグレード:HYBRID MX
17年2月発売のスズキのワゴンタイプの軽自動車「ワゴンR」および高性能グレード「ワゴンRスティングレー」。マツダ「フレア」はOEM車。「ワゴンR」を初めとするスズキ車が採用する独自の軽量衝撃吸収ボディが「TECT(テクト:Total Effective Control Technology)」。広範囲に高張力鋼板を配置し、衝突時の衝撃を吸収するクラッシャブル構造や、衝撃を効果的に分散する骨格構造、高強度なキャビン構造などで構成される。全92車種は68位。12年9月発売の先代モデルの83位から順位を上げた。
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最後は衝突安全性能の項目別ランキング
項目別ランキング
最後は、歩行者保護、乗員保護、シートベルトの項目別に全10車種でランキングを掲載する。
歩行者保護
1位:N-BOX(ホンダ) 83.67点
2位:C-HR(トヨタ) 82.71点
3位:CX-5(マツダ) 81.12点
4位:トール(SCA付き)(ダイハツ) 78.70点
4位:トール(SCAなし)(ダイハツ) 78.70点
6位:JPN TAXI(トヨタ) 78.59点
7位:ステップ ワゴン(ホンダ) 77.21点
8位:ワゴンR/同スティングレー(スズキ) 73.42点
9位:シビック(ホンダ) 69.49点
10位:リーフ(日産) 67.82点
乗員保護
1位:CX-5(マツダ) 95.45点
2位:リーフ(日産) 94.78点
3位:シビック(ホンダ) 93.82点
4位:C-HR(トヨタ) 91.36点
5位:ステップ ワゴン(ホンダ) 91.33点
6位:JPN TAXI(トヨタ) 90.53点
7位:N-BOX(ホンダ) 88.80点
8位:トール(SCA付き)(ダイハツ) 87.90点
9位:トール(SCAなし)(ダイハツ) 77.23点
10位:ワゴンR/同スティングレー(スズキ) 75.76点
シートベルトの着用警報装置
1位:N-BOX(ホンダ) 6.00点
1位:JPN TAXI(トヨタ) 6.00点
1位:トール(SCA付き)(ダイハツ) 6.00点
1位:トール(SCAなし)(ダイハツ) 6.00点
5位:C-HR(トヨタ) 5.67点
6位:シビック(ホンダ) 5.00点
7位:CX-5(マツダ) 4.00点
7位:ステップ ワゴン(ホンダ) 4.00点
7位:リーフ(日産) 4.00点
7位:ワゴンR/同スティングレー(スズキ) 4.00点
2018年3月12日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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