ANCAPで古い車と新しい車の衝突実験。安全性能はどちらが上?
NCAP(New Car Assessment Program:通称エヌキャップ)とは、新車の衝突安全性能や予防安全性能をテストしてその結果を公開する調査プログラム。自動車ユーザーにより安全な車選びを促す目的で、米国のNCAP、日本のJNCAP、欧州のEuroNCAPを始め、世界各国で実施されている(テスト内容等は、それぞれ異なっている)。安全性能の高い車の開発を自動車メーカーに促すことも狙いだ。
今回は、オーストラリアやニュージーランド等が行っているANCAP(Australasian New Car Assessment Program)が、普段の新車のテストとは別に、古い車と新しい車の衝突事故を想定したテストを実施したので、そのレポートを紹介したい。使用した車は1998年式のトヨタ・カローラと2015年式トヨタ・カローラ。車の前面どうしをオフセットした状態で時速64kmで衝突させた。
はっきりいって、旧車大好き人間からするとイヤな予感しかしないタイトル&内容だが、結果はいかに?
(以下画像及び映像:ANCAP)
ガシャーン! 見るのも怖い写真。左が古いトヨタ・カローラで、右が新しいトヨタ・カローラ。意外に古いカローラ善戦か?
いや、上から見ると左のカローラが結構へこんでる。両車を引き剥がしてみると……
車の衝突安全性能を評価するうえでもっとも重要なことの一つに、キャビンの変形がどれだけ抑えられているかということがある。乗員の生存空間確保が最重要課題なのだ。そのために、バンパーからAピラーまでを極力やわらかく、Aピラーより後方を硬くするのが鉄則。結果は一目瞭然。左の古いほうは車体全体がゆがみ、特にフロントシート部分は大きくひしゃげてる。右の新しいほうは、ボンネット部分は大きくへこんでいるが、キャビン自体は無傷なのでは?と思えるほどの状態。
「あー痛かったー」というダミー(傷害の程度を測るための人形)の声が聞こえそう。いや、人だったら無事じゃ済まないですから。
ANCAPによると、「古いカローラのほうはドライバーの頭部・胸部・足への致命的、あるいは重傷を負うリスクが極めて高かった」としている。数値で表すと、16点満点中0.4点しか取れなかった。ANCAPでは星の数で車の安全性能を表現(星の数が多いほど安全)しているが、この車では星の数「ゼロ」とのことだった。対して新しいカローラは12.93点で星3つを獲得している。また、統計上から古い車の致死率は新しい車の4倍というショッキングなデータも合わせて公表した。
今回のテストで注目したいポイントは、新旧の同じモデルの安全性能を同じ条件下で比較したところにある。テスト結果は、近年の車の安全性能の向上は目覚しいものだということを物語っている。旧車好きとしては、かなり残念な結果だったが、古い車に乗り続けることは、事故の際に大きなリスクがあるということを知っておいたほうがよいだろう。
(動画はコチラ↓)
2018年2月27日(JAFメディアワークス IT Media部 伊東 真一)