クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ2018.01.23

レースもエコ化進行中! HV&EVレーシングカー、ますます増殖中。後編

この記事をシェア

 現代のモータースポーツもエネルギーの有効活用が叫ばれている。それにより、F1では2種類のエネルギー回生システムを備えたパワーユニット(PU)が搭載され、WEC世界耐久選手権ではガソリンエンジン+モーターのハイブリッド(HV)レーシングカーが参戦できる最高峰クラス「LMP-1H」がある。

 さらに、そのほかのカテゴリーにも目を向ければ、近年は三菱「アウトランダーPHEV」をベースにしたプラグイン・ハイブリッド(PHV)のラリーカーや、トヨタ燃料電池車(FCV)の「MIRAI」をベースにしたラリー仕様車なども登場してきた。そんなHVやEV、FCVのレーシングカーやモータースポーツの競技車両を紹介する後編は、2010年代半ばから現在までの最新モデルを紹介する。マクラーレン・ホンダのF1マシンとエンジン、トヨタのWEC参戦マシンも複数ずつピックアップしてみた(前編はこちら)。

kn180117-01-01b.jpg

メルセデス-AMG ペトロナス「F1 W08 EQ POWER+」。ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスが17年を戦ったマシン。ハミルトンはこのマシンで17年王座に輝いた。メルセデス-AMGのパワーユニットは、現在のF1に搭載されている2種類のエネルギー回生システムが最も優れているといわれている。東京モーターショー2017のメルセデス・ベンツブースにて撮影。

kn180117-01-02.jpg

WECのLMP-1Hクラスで15~17年と3年連続王者となったポルシェ「919 Hybrid」。同車は14シーズンから導入されており、毎年モディファイされ、カラーリングも変更されている。チャンピオンナンバー1を背負ったこのカラーリングは17年のものだが、実際には16シーズンのマシンに17シーズンのカラーリングを施した展示車両だ。モータースポーツジャパン2017の富士スピードウェイブースで撮影。

kn180117-01-17.jpg

12年、WEC初年度に開発されたトヨタのHVレーシングカー「TS030 HYBRID」に搭載されたPU。トヨタのPUは、「TOYOTA HYBRID System – Racing(THS-R)」と呼ばれる。これが新たに開発されると、マシン名の3桁の数字が増えていくとされる。ガソリンエンジンはV8のNAで、排気量は3.4L。最高出力はエンジンが390kW、モーターが221kWの合計611kW。

→ 次ページ:
次はプラグイン・ハイブリッドのラリーカー!

「バハ・ポルタレグ500」で完走!三菱「アウトランダーPHEV」

sn171205-01-03.jpg

三菱「アウトランダーPHEVラリーカー」(増岡浩選手搭乗・2015年バハ・ポルタレグ500参戦651号車)。2009年を最後に、三菱はラリーシーンから撤退していたが、2015年、ポルトガルで開催されたクロスカントリー・ラリー「第29回バハ・ポルタレグ500」に参戦し、久しぶりのモータースポーツ活動となった。技術軽展示会「オートモーティブワールド2017」の明電舎ブースで撮影。

 2015年に三菱は、ダカール・ラリーで2度の総合優勝経験を持つ増岡浩氏を選手権監督として、PHV車「アウトランダーPHEV」をベースにしたラリーカーで、「第29回バハ・ポルタレグ500」に挑戦した。

 同ラリーは、スペシャル・ステージ(競技区間)が約440km、リエゾン(移動区間)が約230kmで構成され、クロスカントリーラリー・ワールドカップの第10戦として、ポルトガルで開催された。

 2015年時点でツインモーターの4WDのPHV車は「アウトランダーPHEV」のみ。同車はEVおよび4輪制御の技術を磨くために同ラリーに参戦した。結果は、11時間45分47秒で完走し、総合47位となった。

【ノーマルからの変更点】
・フロントとリアのモーターの高出力化
・ジェネレーターの発電量のアップ
・駆動用バッテリーの容量アップ
・ラリー専用制御プログラムによるトラクション性能の強化
・地上高アップ
・サスペンション・ストロークの増大
・ラリー専用大径タイヤの装着

→ 次ページ:
続いては、FCVのラリー仕様車!

ラリーで00カーを担当したトヨタ「MIRAI ラリー仕様車」
2014

kn180117-01-06.jpg

「MIRAI ラリー仕様車」。近年、全日本ラリーもHVやEVなどの「AE車両」の参戦が増えているという。FCVもEVと同じモーター駆動のため、トップスピードはガソリンエンジン車ほど出にくいのだが、加速性能は逆に高いので、サーキットでのレースよりもラリーや、ジムカーナのようなスピード競技向きといえるかもしれない。

 ラリーでは、競技車両が実際に走行を開始する直前に、コースの安全確認を目的として、競技車両と同等の性能を持つ車両が2回走ることになっている。その内、競技車両の1台目がスタートするおおよそ30分ぐらい前に、ラリーの競技区間であるスペシャルステージにおけるオフィシャルの配置の確認を主目的として、比較的スロー走行するのが「00(ダブル・ゼロ)カー」だ。

 全日本ラリー選手権の14年最終第9ラウンドとして愛知県新城市で開催された「新城ラリー2014」にて、「MIRAI ラリー仕様車」はこの00カーを担当し、実際に285kmを走行した。

 同車のモーターの出力やボディサイズなどはノーマルのままだが、車内には安全性の確保を目的としたロールケージが組み込まれ、足回りもラリー用に専用チューニングが施されている。そのほかアンダーガードやマッドガードを備え、シートも競技用に交換された。

 FCVは駆動系はEVと同じモーターなので、アクセルを踏み込んだ際にトルクフルなのが特徴。全日本ラリーにも参戦するトヨタの競技向け車両である「ヴィッツ GRMNターボ」はノーマル状態での最大トルクが206N・mなのに対し、「MIRAI」は335N・mと太い。

 また、「MIRAI」は基本的に機器類が床下に配置された低重心設計のため、見た目以上にスポーツ走行に向いているという。ただし車両総重量は「ヴィッツ GRMNターボ」の1345kgに対して、「MIRAI」は2070kgもあり、本格的に参戦するためには徹底的な軽量化を行う必要はあるだろう。

 なお「MIRAI」はノーマル状態でも静音性が高いが、この「MIRAI ラリー仕様車」はさらなる静音性を求めてインバーターの高周波音や、コンプレッサーの作動音がチューニングされた。

【ノーマルからの変更点】
・ロールケージの取り付け
・サスペンションの専用チューニング
・アンダーガードおよびマッドガードの装備
・専用シートへの交換

→ 次ページ:
空力性能と燃費のよさはレースでも武器に!

スーパーGTに連続参戦中のトヨタ「プリウス apr GT」
2015

kn180117-01-07.jpg

「プリウス」というと、エコなイメージが強いので、どちらかというと燃費レースなどに向いているように思うかもしれないが、実は空力性能が高く、HVならではの燃費のよさもあり、大幅な性能の強化は必要だが、実はスーパーGTのような本格的なレースでも活躍できる素養はあるのだ。

 全日本GT選手権時代の98年からGT300クラスに参戦しているapr。チューニングメーカーのレース部門としてスタートし、00年からは独立して活動しており、99年にはトヨタ「MR2」で、02、05、06年には「MR-S」で年間王者となっているチームだ。

 同チームが12年からスーパーGTに投入しているのが、トヨタ「プリウス」。展示車両は15年のものだ。

 同車は名称こそ「プリウス」だが、スーパーGTで勝利を得るために別物といっていいほど手が加えられている。FIAが定めた国際レース規格のGT3マシンとするため、市販車ではフロントに搭載されていた直4・1.8Lエンジンを、トヨタがスーパーGTおよびスーパーフォーミュラ用に開発したV8・3.4LのNAエンジン「RV8K」に変更してミッドシップにレイアウト。ただし、HVシステムは市販車のものをそのまま流用している。

 優れた空力性能とHVならではの燃費のよさから参戦初年度から活躍し、初勝利は13年の第2戦でトヨタ勢のホームコースである富士スピードウェイ。15年は、嵯峨宏紀選手と中山雄一選手のドライブにより、開幕戦の岡山国際サーキットと最終第8戦のツインリンクもてぎで年間2勝。表彰台3回、ポールポジションも2回獲得し、ドライバーズランキングは年間3位となった。

 なお、12年から15年まではaprはチームとしては2台体制だが、「プリウス」は1台のみでエントリーしてきた(もう1台はシーズンによって異なる)。しかし、16年からはプリウスの2台体制となっている。

【スペック】
全長×全幅×全高:4620(4480)×1950(1745)×1100(1490)mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1305(1310~1400)kg
エンジン(RV8K)
 排気量:3.4L
 最高出力:220.6kW以上
 最大トルク:392.2N・m以上
 ※カッコ内は市販車のスペック

→ 次ページ:
ホンダ第4期のF1用PUの3年間を振り返る!

ホンダ第4期最初の3年間のF1用PUを振り返る!
2015~2017

 現在のF1のPUは、14年にレギュレーションが改正され、ガソリンエンジンが8気筒・2.4L・NAから6気筒・1.6L・シングルターボとなった。そして、09~13年に搭載されていた運動エネルギー回生システム「KERS(カーズ:kinetic Energy Recovery System)」に代わって、「MGU-K」と「MGU-H」という、2種類のエネルギー回生システムが搭載されることとなった。

 MGU-Kはクランクシャフトに接続されているMGU(モーター/ジェネレーター・ユニット)。KERSの発展系で、こちらも「運動エネルギー回生システム」と訳される。減速時の運動エネルギーをMGUで電気に変換してバッテリーに蓄積し、加速時にその電力でモーターを駆動させてエンジンをアシストするという仕組みだ。MGU-Kの「K」は「kinetic(運動)」の頭文字である。なおMGU-Kは最高出力が120kWで、1周当たりの回生は最大2MJ、バッテリーの最大貯蔵量は4MJという制限がある。

 一方のMGU-Hの「H」は「Heat(熱)」の頭文字で、「熱エネルギー回生システム」と訳される。エンジンからの排気(排熱)エネルギーを利用して発電する仕組みで、同じく排気を利用するターボと同軸上に配置されている。ターボには、エンジンの回転数が低くて排気量が少ないためにタービンを回せない「ターボラグ」という短所が存在する。それをなくすため、MGU-Hで発電した電力でコンプレッサーを回転させてタービンを回し、低回転域でもターボが働くようにしているのである。

 MGU-Hの回生およびアシスト量は共に無制限のため、それをどれだけ利用できるかが、現代のF1ではポイントとなっている。要は、排気量が増大する全開加速時は、ターボのタービンを回転させても排気エネルギーに余力があるため、MGU-Hの発電にも回せるようになる。その電力をMGU-Kに直接送り込んでエンジンをアシストすることは、MGU-Kの制限に縛られない。そのため、そこが各パワーユニットサプライヤーの技術力の見せ所のひとつとなっているのだ。

kn180117-01-12.jpg

ホンダの第4期初年度の15年にマクラーレン・ホンダ「MP4-30」に搭載されたパワーユニット「RA615H」。最小重量は145kg。ホンダの第4期はパワーユニットサプライヤーとしての活動となる。パワーユニットとは、ガソリンエンジンに加え、ターボ、MGU-K、MGU-H、コントロールユニットを含めた一式のこと。5%がバイオ燃料のエクソンモービル製の無鉛燃料を使用。ウェルカムプラザ青山にて撮影。

kn180117-01-14.jpg

16年のマクラーレン・ホンダ「MP4-31」に搭載された「RA616H」。なお型式名称の「RA」とは1960年代のホンダ第1期F1活動から受け継がれる略称で、「Racing Automobile」を意味する。そのすぐ後ろの数字は6気筒を意味する(気筒数の下1桁)、その後ろの2桁は西暦だ。最後のアルファベットは、かつてエンジンを表す「E」だったが、第4期からはHVを表す「H」となっている。東京オートサロン2016・ホンダブースにて撮影。

kn180117-01-16.jpg

17年のマクラーレン・ホンダ「MCL32」に搭載された「RA617H」。燃料はBPカストロール製となった。東京モーターショー2017・ホンダブースにて撮影。

→ 次ページ:
マクラーレン・ホンダ第4期のF1マシンの3年間を振り返る!

マクラーレン・ホンダのF1マシン
2015~2017

 続いては、前ページで紹介したホンダの第4期F1・PUの搭載車を紹介する。ホンダは、第4期として15年にF1に復帰するに当たり、88年に全16戦中15勝を挙げたかつての黄金コンビを復活させる道を選択し、マクラーレンとタッグを結成。その3年間にF1に参戦したマシンたちだ。

kn180117-01-08.jpg

15年のマシン「MP4-30」。20号車フェルナンド・アロンソが11点(選手権17位)、22号車ジェンソン・バトンが16点(同16位)、合計27点でコンストラクターズは10チーム中9位となった。ウェルカムプラザ青山にて撮影。

kn180117-01-09.jpg

16年のマシン「MP4-31」。14号車のアロンソが54点(10位)、バーレーンGPをアロンソに代わって走った新人で、全日本スーパーフォーミュラ選手権出身のストフェル・バンドーンが1点(20位)、22号車のバトンが21点(15位)の合計76点で、コンストラクターズは11チーム中6位。オートサロン2016(幕張メッセ)・ホンダブースにて撮影。

kn180117-01-10.jpg

17年のマシン「MCL32」。心機一転、これまでの「MP4-」というマシン名を「MCL」と改めた。2号車のバンドーン13点(16位)で、14号車のアロンソ17点(15位)の合計30点でコンストラクターズは10チーム中9位。東京モーターショー2017・ホンダブースにて撮影。

→ 次ページ:
最後はトヨタのWEC用マシンの変遷を見てみる!

トヨタWECマシンの変遷をたどる!
2015~2017

 トヨタは99年以来、13シーズンぶりにル・マン24時間レースに復帰を計画。ただし、ル・マンはこの年から開催されたWECに組み込まれており、ル・マンだけに参戦することはできないため、WECのレギュレーションに則ったマシンが開発された。それが、最上位クラスのLMP-1H(ル・マン・プロトタイプ-1ハイブリッド)に参戦するためのHVレーシングカー「TS030 HYBRID」で、12年と13年の2シーズンを戦った。「TS030 HYBRID」に搭載されたのが、冒頭で紹介したPUである。

 ここでは、「TS030 HYBRID」の進化型として14年から導入された「TS040 HYBRID」の15年仕様と、さらにその進化型として16年に投入された「TS050 HYBRID」、さらにその17年仕様の3台を紹介する。

kn180117-01-03.jpg

14、15年をWECで戦った「TS040 HYBRID」。「TS030 HYBRID」との大きな違いは、減速時のエネルギー回生をキャパシタに蓄電し、加速時にそれで駆動するMGUをフロントにも搭載し、4輪駆動とした点だ。エンジン382kW以上、モーター354kW以上で、合計736kW(1000ps)以上に。展示車両の15年仕様は、14年仕様から空力、フロントのクラッシャブルストラクチャー、サスペンションが改良された。15年は164点となり、マニファクチャラーズでLMP-1Hクラスで3チーム中3位。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。

kn180117-01-04.jpg

「TS040 HYBRID」の進化型の「TS050 HYBRID」(16年仕様)。V8・3.7LのNAエンジンから、V6・2.4Lツインターボに変更され、蓄電に使われる機器もキャパシタからリチウムイオン電池に変更された。それに伴い、エネルギー回生システムの放出エネルギー量が6MJから8MJへとアップされている。前輪用MGUの小型化などにより、空力もさらに向上した。合計出力は735kWで「TS040 HYBRID」と同じだが、エンジン366.5kW、モーター366.5kWと、比率が変わって50:50となった。16年は229点で、LMP-1Hのマニファクチャラーズランキングは3チーム中3位。AUTOMOBILE COUNCIL 2017のトヨタブースにて撮影。

kn180117-01-05.jpg

「TS050 HYBRID」の17年型。外見上、16年型と比べてすぐわかるのは、ヘッドランプ周辺。切り立った形となり、ランプ自体も丸目から角目に変更された。また、17年仕様の空力レギュレーションに対応するために変更されたフロント部も違いが見て取れる。エンジンに関しては燃焼室、シリンダーブロック、シリンダーヘッドなど、主要部品すべてが全面改良されて熱効率の向上が図られた。ターボもサイズの見直しとインペラ形状が改良され、ターボラグを減少させたという。17年は286.5点を獲得し、マニファクチャラーズランキングは2チーム中2位。東京モーターショー2017・トヨタブースにて撮影。

2018年1月23日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(2月29日まで)
応募はこちら!(2月29日まで)