高山~伊那を結ぶ! 山岳地帯の短絡ルート「伊那木曽連絡道路」整備進行中。“復活した工区”の進捗は?【いま気になる道路計画】
長野県伊那市と木曽町を結ぶ山岳地帯の短絡ルート「伊那木曽連絡道路」の整備が進行中だ。厳しい峠を越える区間にトンネルが開通してから約20年が経過し、現在も延伸工区の整備が続いている。計画の概要と整備のメリット、現在の進捗状況を見ていこう。
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「伊那木曽連絡道路」は木曽・伊那エリアの短絡ルート
伊那木曽連絡道路の位置図。
中部地方の東西移動には、木曽山脈・伊那山地・赤石山脈といった南北方向の山岳地帯が幾重にも立ちはだかる。古来より人々は、比較的標高の低い地点を峠として越え、地域間を行き来していた。
自動車の普及とともに輸送需要が高まるなか、こうした旧来の峠道は安全性や定時性の面で課題も多く、各地で安定した走行が可能な高規格ルートの整備が計画されている。
その1つが、木曽山脈を貫き、長野県木曽町と伊那市を結ぶ地域高規格道路「伊那木曽連絡道路」である。
伊那木曽連絡道路の概要。
「伊那木曽連絡道路」は、塩尻市から南へ約30kmに位置し、木曽川と天竜川の周辺、鉄道でいえばJR中央本線とJR飯田線の沿線地域を結ぶ東西ルートだ。
国道361号のバイパスとして整備が進められており、高山~伊那を最短距離で結ぶ道路ネットワークを形成する。
これまで木曽・伊那エリアの往来は、塩尻市方面へ大きく北上して山脈を迂回する必要があり、同じ長野県内でありながらも地域間の交流は限定的だった。本路線には、こうした状況の改善という役割も期待されている。
1994年に計画路線として指定されてから約30年が経過した現在も、まだ全線開通には至っていない。紆余曲折を経ながらも、事業が動き続けている。
山岳区間の総仕上げ「姥神峠道路(延伸)」が事業再開
2006年に開通した権兵衛峠道路。
整備の中核となるのが、2002年に開通した延長1826mの「姥神トンネル」、そして2006年に開通した延長4467mの「権兵衛トンネル」だ。
姥神峠はそれまで不通区間となっており、1996年の事業化から約6年をかけて完成。北側の奈良井地区へ大きく迂回する必要がなくなり、国道としての機能がようやく整った。
一方の権兵衛峠は、等高線に沿って延々と続く過酷な山道。狭隘・急勾配に加えて連続急カーブがドライバーの大きな負担となっていた。通行自体が困難で、実用に乏しいルートだった。
姥神トンネルと権兵衛トンネルを含む延長12.2kmの開通により、夏期にクルマで90分かかっていた伊那市-木曽町間の所要時間は約50分短縮された。開通後9か月で利用台数は約100万台に達し、観光バスも月あたり約200台が周遊ルートとして通過している。
周辺には木曽福島や宮ノ越など中山道の宿場町が点在しており、両トンネルの開通によって伊那エリアとあわせた広域周遊が可能となり、1日で各地を巡る観光プランも現実的になった。
一方で、姥神トンネル西側から国道19号へ接続する約3.5kmの区間は、現在も未整備のまま残されている。
同区間は2002年に事業化したものの、優先順位の低さから予算配分が進まず、2012年にはいったん事業中止となった。その後、2018年に「重要物流道路」に指定され、セミトレーラーの通行確保が求められたことに加え、2020年7月の豪雨災害を契機として必要性が再認識され、2021年度にふたたび事業化を果たした。
現在は橋梁などの詳細設計が順次進行中で、現場では工事用道路の準備が始まっている。
伊那市の「未事業化区間」はどうなる?
伊那木曽連絡道路の概要。
残るのは、事業化に至っていない「権兵衛トンネル東側~伊那市中心部」に至る約8.8kmの区間だ。中央自動車道に接続し、天竜川東岸で国道153号伊那バイパス(事業中)と直結する計画となっている。
このエリアは、平野部に位置する比較的走行条件の良い区間であるため、現時点では概略ルートの具体化に向けた動きは見られない。県議会・市議会でも特段の議論はなく、まずは再事業化された姥神峠道路延伸部の着実な整備進展が期待されている。
とはいえこの区間は、「伊那市中心部の交通対策」という別の意味を持つ可能性が高い。このエリアの国道361号は生活道路の様相を呈しており、大型車による中長距離移動には厳しい状況だ。特に繁華街周辺ではセンターラインすらない狭隘な区間も多く、天竜川東岸へ渡るには、広い道路を求めて複数回の右左折を強いられる。
一方、北側では県道「伊那インター線」の整備が進み、一部区間は中央分離帯を備えた4車線道路として、貴重な東西軸を担っている。将来的には、このルートを伊那木曽連絡道路が取り込み、天竜川を渡る新たなバイパス橋梁によって東進する構想も考えられる。
木曽と伊那を最短で結ぶルートとして整備が進められてきた「伊那木曽連絡道路」。トンネル開通によって峠越えのハードルは大きく下がり、地域間の移動や観光のあり方にも変化が生まれている。一方で、西側の未整備区間や東側の未事業化区間など、全線開通に向けた課題は依然として残っている。今後の進展にも、引き続き注目したい。
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