大分~鹿児島の最短ルート「中九州縦貫ルート」とは。九州南北軸の「第3ルート」になる!? 湯布院・高千穂へのアクセス良好に【いま気になる道路計画】
大分県~鹿児島県まで、九州の内陸部を貫く新たな南北道路ネットワーク「中九州縦貫ルート」が構想されている。ルートやメリット、現在の進捗状況を見ていこう。
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「九州内陸部」の南北軸「中九州縦貫ルート」とは
中九州縦貫ルートの概要。3つの構想路線で構成されている。
東西200km、南北300kmにおよぶ九州には、さまざまな都市や観光地が点在し、それらをつなぐ道路ネットワークも順次整備されてきた。
そのなかで、南北軸となるのが「九州自動車道」「東九州自動車道」で、それぞれ西側と東側の沿岸ルートを形成している。東九州道は2016年に北九州市~宮崎市が全線開通し、現在は宮崎市~志布志市の開通をめざして整備中となっている。
さて、それに加えて第3の南北軸となる「中九州縦貫ルート」という道路構想がある。九州内陸部を縦に貫くルートで、大分~鹿児島までの最短ルートとなる。詳細を見ていこう。
中九州縦貫ルートの1つ「湯布院竹田道路」の位置図。
「中九州縦貫道路」は、2021年に国が策定した「新広域道路交通計画」に、「湯布院竹田道路」「大野高千穂道路」「中九州縦貫道路」という3つの構想路線としてリストアップされている。
すべて開通すれば、大分県の湯布院~竹田・豊後大野、宮崎県の高千穂~小林を結ぶルートになる。大部分が急峻な山間部で、大型車の通行が容易な現道は存在しないため、九州の各エリアを短絡するルートとして期待されている。
●湯布院竹田道路
日本有数の温泉地である大分県の湯布院からまっすぐ南下し、竹田・豊後大野付近に到達する、総延長約20kmの道路だ。構想ルートでは、「朝地IC」付近で「中九州横断道路」に直結し、阿蘇・熊本方面へと直結する高規格道路だ。
県道30号(庄内久住線)、県道47号(竹田直入線)などによって湯布院~竹田は結ばれているが、大型バスやトラック輸送などの重交通には厳しい線形で、熊本方面への高速移動は大分市内まで東へ迂回しなければならず、現状の大きな課題となっている。
急峻な山間部の「道路空白地帯」に壮大なネットワーク構想
宮崎県内陸部を南北につなぐ国道は、いずれも狭隘で急峻な峠道ばかりだ。
●大野高千穂道路
竹田・豊後大野付近から南下し、宮崎県高千穂町へ到達する、総延長約35kmの道路だ。熊本~延岡を結ぶ「九州中央自動車道」に直結する。高千穂エリアにとっては、大分県への最短ルートが誕生することとなり、日帰り周遊などでも大きなメリットがあるだろう。
課題としては、祖母山・傾山などを含む、九州有数の急峻な山地が立ちはだかっていることだ。大部分でトンネルや橋梁を建設する計画になる可能性がある。現道ルートである県道7号(緒方高千穂線)は、谷筋に沿って進む狭隘な山道で、ほとんどがセンターラインもない。延々と続く「険道」の様相を見せている。
●中九州縦貫道路
高千穂町から南下して小林市へ到達する、総延長80~90kmの道路だ。「宮崎自動車道」に直結し、鹿児島市方面へ連絡する。九州北部から鹿児島県を最短で結ぶショートカットルートの総仕上げかつ本丸ともいえる区間だ。
途中には椎葉村(しいばそん)、西米良村(にしめらそん)など、都市部から隔絶されたような内陸の山間部を経由するルートだ。実現すれば、まさに「道路空白地帯」の宮崎県内陸部に主要南北軸が誕生することとなり、緊急輸送ルートとしても沿岸ルートの代替として強い役割を果たすこととなるだろう。
現道の国道265号は、九州でも指折りの「酷道」で、狭隘・急カーブ・急勾配が続く山道だ。中長距離ネットワーク性が高いものの、実用性が低い道路で、国道に指定されたのもこの「中九州縦貫道路」を作るための足がかりと言えるだろう。
こちらも施工性が課題で、長大トンネルを採掘する必要があることから、計画が実現しても開通まで年月がかかると予想される。
「湯布院竹田道路」「大野高千穂道路」「中九州縦貫道路」いずれも目立った動きなし
渓谷美などで知られる高千穂。
このように、壮大なスケールで描かれている、九州の第3の南北軸構想「湯布院竹田道路」「大野高千穂道路」「中九州縦貫道路」はどこまで計画だ進んでいるのだろうか。
結論から言えば、いずれの道路も、計画具体化の第一歩となる、概略ルート・構造決定プロセスである「計画段階評価」にも至っていない。
大分県も宮崎県も、議会答弁や委員会で「長期的な視点で検討を重ねていきたい」「5年、10年で何か動き出すというようなイメージより、もう少し長いスパンが必要」というスタンスをとっている。国が計画段階評価を進める前段階として、地元で移動実態や便益に関する調査が行われ、それを持って国に働きかけが行われるのが一般的だが、それも目立った検討は進められていないのが実情だ。
両県にとって当面の最優先課題は、九州東西軸である「中九州横断道路(熊本~大分)」と「九州中央道(熊本~延岡)」の全線開通だ。西側と東側が有機的につながることが、九州全体の物流・観光を底上げする前提条件といえる。
そのうえで、湯布院~小林を結ぶ「中九州縦貫道路」は、東西軸整備後の次なるステップとして検討される構想だろう。実現すれば内陸部のネットワークは一段と強化されるが、具体化にはなお時間を要しそうだ。今後の議論の行方を見守りたい。
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