「GT-R」でなければ「GT-R」に勝てない!! 今もって人気の3代目R32型
16年ぶりとなる通算3代目の「GT-R」が復活したことを最大の特徴とする、8代目・R32型「スカイライン」。その3代目「GT-R」に迫る。
R32型「GT-R」。R33型以降、ボディが大型化していったこともあって、今となってはコンパクトなイメージである。日産グローバル本社ギャラリーにて撮影。
1980年代半ば、日本を含めて世界中で”グループA”と呼ばれる市販車ベースのレースカテゴリー「ツーリングカー選手権」が人気を博していた。しかし、国内の「全日本ツーリングカー選手権(JTC)」は、国産メーカーが欧米メーカーに苦戦を強いられていた。
そこで日産ではJTCで勝てるクルマの開発をスタートさせ、そうしたタイミングで1989(平成元)年5月にデビューしたのが、8代目となるR32型「スカイライン」だった。なおR32型とは、型式「BNR32」の略である。
R32型「スカイライン」が、それまでの3代目から7代目までと大きく異なっていたのは、通算3代目となる「GT-R」が16年ぶりに復活したこと。現行モデルの6代目・R35型からは「GT-R」という独立した車種となったが、このときはまだ「スカイライン」の最上位グレードだった。
R32型「GT-R」を正面から。R32型スカイラインの中では、かなり無骨なデザインとなっている。ひとつ下の「GTS-4」以下は、ボディ各部がもっとスッキリしている。
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R32型「GT-R」はどのようなクルマだったのか?
レースで勝つことを目的に開発された!
右斜め前から。海外のスーパーカーのような派手さはないかもしれないが、質実剛健で戦闘的なイメージ。サーキットでの戦闘力は、倍以上の価格のスーパーカーたちを上回っていた。
「GT-R」は”グラン・ツーリスモ・レーシング”の略であり、初代はレースで49連勝という伝説を作り上げた。日産、「スカイライン」、そして「GT-R」ファンの間では、いやがおうにも期待はふくれあがっていく。
エンジンは、専用設計された2600cc・直列6気筒DOHCツインターボの「RB26DETT」型を搭載。当時の国内自主規制の280馬力いっぱいをノーマルで叩き出す性能を有していた。しかも、レースで勝つことを目的とした開発だったため、チューニングを施せば600馬力は確実というモンスターエンジンだった。
また駆動方式には、FRベースながらスリップ状況などを判断し、4輪に自在に駆動力を配分する電子制御トルクスプリット4WD機構「アテーサETS」が採用され、FRと4WDの長所を掛け合わせたような走りを実現した。さらに、サスペンションには4輪共に「マルチリンク」方式を採用。これらにより、”500万円のスポーツカー”という枠を遥かに超越し、スーパーカークラスすら打ち負かすような性能を実現したのである。
側面。発売時のままのノーマル仕様のため、車高は下げられていない。
国内のレースで29連勝を達成!
側面から。
1990(平成2)年、R32型「GT-R」はかねてからの計画通り、遂にJTCに参戦。同年から1993(平成5)年までの4シーズンで、「GT-Rでなければ勝てない」といわれるほどの桁違いな戦闘力をもって29連勝を達成した。初代の49連勝までは届かなかったが、それに迫る戦績を残したのである。
R32型「GT-R」の活躍は、今もって記憶が古びていないレースファンも多い。元祖”日本一速い男”と呼ばれた星野一義のインパルブルーのR32型「GT-R」が、コーナーの縁石をショートカットしているシーンは有名だ。片輪走行どころか、4輪とも宙を舞っているような、”鬼神の走り”などといわれた鳥肌ものの走りは伝説のワンシーンとなっている。
さらにR32型「GT-R」は海外のレースにも打って出て、マカオGPやスパ24時間レースなどに参戦。後続を引き離す圧倒的な勝利を見せ、後に4WD車はウェイトハンデを積むといったルール改正を招くことになったという。そしてR32型「GT-R」の戦闘力を見て、オンロードの市販車ベースのレースでは4WD化の波が来るのである。
真後ろから。
90年代チューニングカーブームの中心となる
左斜め後ろから。
レースでの活躍が手伝い、市販のR32型「GT-R」は、500万円の最上位スポーツグレードとは思えないほどのヒットを記録。90年代のチューニングカーブームの中心となった。
それがまた「頭文字D」や「湾岸ミッドナイト」といったコミック・アニメでの活躍を呼び、そこからさらにファンを獲得していき、国内のスポーツカーやスーパーカーで、ここまでフィクションの中で活躍しているクルマはあとはRX-7(マツダ)など、限られたクルマしかない。
なおR32型「GT-R」のカテゴリーに対し、”スポーツカー”とする人と、”スーパーカー”とする人と分かれるところ。これは海外でも同様で、スーパーカーとして認識している人たちも多い。性能に対して圧倒的に価格が安いことから、「日本製の格安・ハイテク・スーパーカー」などという表現をされることがあるほどだ。
そんな伝説的な1台が、R32型「GT-R」。現在、「GT-R」は6代目まで数えているが、登場から30年近く経つ今でも最も人気のある「GT-R」なのである。
リアスポイラー。
R32型「GT-R」のスペック
【スペック】
全長×全幅×全高:4545×1755×1340mm
ホイールベース:2615mm
トレッド(前/後):1480/1480mm
車重:1430kg
サスペンション(前/後):前後共マルチリンク方式
ブレーキ(前/後):前後共ベンチレーテッドディスク
タイヤ:225-50-R16 92V
【エンジン】
型式:RB26DETT(直6・DOHC)
排気量:2568cc
最高出力:280ps(206kW)/6800rpm
最大トルク:36.0kg・m(353N・m)/4400rpm
「GT-R」のエンブレム。
2017年12月15日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)