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道路・交通最終更新日:2022.01.19 公開日:2022.01.19

雪道での大量立ち往生を防ぐため、国交省が大型車の雪道対策を公開。

大雪の影響で高速道路の通行止めや立ち往生が発生している。大量の車が立ち往生する要因として、大型車が最初のきっかけになることも多く、大型車ドライバーの雪の備えへの責任は大きい。このため国交省は、大雪時の大型車立ち往生防止対策として、冬用タイヤとチェーン装着についてのパンフレットを公開した。立ち往生しやすい大型車のタイプも説明。該当車輌は要注意だ。タイヤの選び方やチェーンの効果などがまとめられており、乗用車ドライバーにも役立つ内容なので紹介しよう。

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立ち往生しやすい大型車には特徴がある

降雪時の立ち往生イメージ

降雪時の立ち往生イメージ © Lubo Ivanko – stock.adobe.com

 22年の年明けは、昨年末に引き続き強い寒気の影響で大寒波来襲とともに始まった。数年に一度の大寒波ともいわれており、1月6日から7日にかけては都内でも10センチを超える積雪を記録した。今後も、大雪の影響は各交通機関に影響を与えそうだ。NEXCOや高速道路各社では、高速道路での立ち往生や通行止めを防ぐため、チェーン装着など雪への備えを呼びかけている。

 国交省では、昨年12月、大型車を対象としたパンフレットを公開し、大型車の立ち往生による交通渋滞や通行止めが発ししないよう、積雪・凍結路では適切な冬装備が必須であることを喚起した。ちなみに同省によると、立ち往生が発生しやすい大型車両には、以下の4つの特徴があるという。該当する車両では、特に積雪への注意が必要だ。

【立ち往生が発生しやすい車両の特徴】

<一軸駆動車(※)>

一軸駆動車は、二軸駆動車に比べて駆動軸が空転しやすい

出典=国交省

二軸駆動車に比べて駆動軸が空転しやすい。

※ 駆動輪である後輪の軸数が1つである車両のこと。高速道路を利用した長距離移動で牽引に用いられることが多い。

<連結車>

連結車は、トレーラー付近の積雪により走行抵抗が増大する

出典=国交省

トレーラー付近の積雪により走行抵抗が増大する。

<空荷状態>

空荷状態時には、駆動軸に十分な荷重がかからず発進性能が低下する

出典=国交省

駆動軸に十分な荷重がかからず、発進性能が低下する。

<年式の古い車両>

年式の古い車両は、トラクションコントロール等の機能が搭載されていない

出典=国交省

トラクションコントロール(※)等の機能が搭載されていない。

※発進時等に駆動輪の回転を制御し、空転を低減する装置のこと

深い積雪時のオールシーズンタイヤは危険

スタッドレス表記(左)とスノーフレークマーク(右)

出典=国交省

 公開されたパンフレットには、大きく分けて「冬用タイヤ」と「チェーン装着」の2つについて記されている。

 冬用タイヤの項目では、冬用タイヤの選び方と使用限度について解説。まず、タイヤの選び方のひとつとして、積雪路や凍結路を走行する場合には、スタッドレス表記(国内表記)またはスノーフレークマーク(国際表記)が表示されている冬用タイヤを全車輪に装着するよう呼びかけている。

 言うまでもなく積雪路の走行には、スタッドレスタイヤを装着する必要があるが、少量の降雪程度であればスノーフレークマーク付きのオールシーズンタイヤであれば問題なく走行できるという。実際、高速道路などでも降雪によるチェーン規制に対しては、スノーフレークマーク付きのオールシーズンタイヤであれば通行が許可される場合も多い。

 しかしオールシーズンタイヤは、冬期以外の走行性能も確保するために、積雪路や凍結路の性能はスタッドレスタイヤと異なる。冬の道路事情に対して万全を期すためには、スタッドレスタイヤを装着しておく方が望ましいといえよう。

スタッドレスタイヤの「プラットホーム」は溝の深さが50%になると現れる

スタッドレスタイヤの「プラットホーム」は溝の深さが50%になると現れる 出典=国交省

 次は、冬用タイヤの使用限度についてだ。使用限度については、冬用タイヤとしての使用限界を示す「プラットホーム」が露出していないことを確認する必要があるという。プラットホームはスノープラットフォームの略で、夏用タイヤのスリップサインのように、タイヤ溝の中に凹凸で記されているものだ。一般的に新品スタッドレスタイヤの溝は10ミリなので、半分の5ミリ程度まで摩耗するとこのサインが現れてくる。ここまで摩耗すると、冬用タイヤとしては使用できない。

 ちなみに、夏用タイヤの場合は溝残り1.6ミリになった時に現れるスリップサインによってタイヤの寿命を確認することが可能だ。いずれの場合も、サインの位置を示す矢印がタイヤの両側面それぞれ周上4か所以上に表示されているので、定期的に確認して適切なタイミングでタイヤ交換を行うようにしよう。

雪に強いチェーン。それでも走行できないことも

金属製チェーンを装着したトラックのイメージ

金属製チェーンを装着したトラックのイメージ © phantom1311 – stock.adobe.com

 チェーンについての項目では、チェーンの効果と性能限界、携行・装着について記されている。チェーンにはゴム製チェーンと金属製チェーンが存在するが、トラックやバスなどの大型車ではより高い耐久性やグリップ力が求められるため金属製チェーンの装着が一般的だ。

 そしてチェーンの性能といえば、深い積雪路や凍結路で冬用タイヤよりも滑り止めの効果を発揮してくれるというものだが、サイズや締め方が不適切だとタイヤとの間で滑りが生じてしまうため十分に性能が発揮できなくなってしまう。パンフレットでも、その点においての注意が記されており、適切に装着すれば発進・登坂性能が向上するとある。

 しかし、チェーンを装着したからといって万能ではないことを忘れてはならない。同パンフレットには性能限界の目安として、車両のバンパーに接触するような新雪の深い積雪路では走行困難である、とある。出発前には、最新の気象や道路情報の確認をして経路や運行の可否について計画するようにしたい。また同省では、大雪警報時などには必ずチェーンを携行して出発し、立ち往生する前に早めのチェーン装着を心がけることへの注意も呼びかけている。

 国交省は、冬の道路における運転について、以下6つの注意点も公表している。

【冬季における運転上の注意点】

(1)低速ギアでゆっくり発進し、タイヤを空転させない。

(2)急坂道では登り終わるまで低速ギアを使用し、ギアチェンジしない。

(3)急発進、急加速、急旋回および急停止は避け、柔らかくブレーキをかける。

(4)カーブに入る前には、控えめな速度で十分な車間距離を保って減速する。

(5)冬用タイヤの性能には限界があるため、運転時は細心の注意を払う。

(6)冬用タイヤを乾燥路や湿潤路で使用する場合は走行速度に注意する。

 上記の注意点には冬季の運転だけでなく、常に心掛けるべきことも含まれている。もちろん、大型車以外の普通自動車においても、安全な運転のために欠かせない注意点であることを覚えておきたい。

 国交省では、今回の立ち往生防止対策の中で、立ち往生等によって交通渋滞等を引き起こした運送業者等には監査を行い、講じた措置が不十分と判断されれば処分の対象となることも忠告している。大型車の立ち往生は交通状況に多大なる影響を与えることは事実だが、車種にかかわらずドライバーは積雪路や凍結路に備えた装備を心がけるようにしたい。

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