2020年06月12日 13:00 掲載

交通安全・防災 【JNCAP2018-2019】全23車種による衝突安全性能ランキング


神林 良輔

歩行者への傷害性の低さがわかる、歩行者保護性能ランキング

 歩行者保護は、頭部保護と脚部保護の2種類の試験からなる。頭部保護は、センサーを搭載した頭部インパクタ(人の頭部に見立てたもの)を時速40kmで複数の衝撃点に射出し、ボンネット各部の傷害値を計測、頭部の傷害の程度を評価する。脚部保護も同様だ。人の脚部(ヒザ下)に見立てた脚部インパクタを時速40kmで複数の衝撃点に射出し、フロントバンパー各部の傷害値を計測。バンパー各部における傷害の程度を評価するのである。

NASVAが公開している、JNCAPの歩行者保護試験を受けた車種のボンネットとバンパーの傷害性を示した2次元マッピングの一例。緑は傷害性が低く、赤くなるに連れて高くなる。車種はホンダ「N-WGN」。

NASVAが公開している衝突安全性能評価の、ボンネットおよびバンパー部分の傷害の程度を示した2次元マップ。緑の部分が傷害値が低く、赤くなるに連れて高くなる。車種はホンダ「N-WGN」。

 近年の歩行者保護における技術的な特徴のひとつに、動的歩行者保護機能を装備したセダンやクーペが増えてきていることが挙げられる。動的歩行者保護機能は、全高が低く、接触した際に歩行者がボンネット上に乗り上げてしまう危険性が高いセダンやクーペのために開発された機能だ。バンパーが歩行者との接触を検知した瞬間にボンネット後端(※13)を持ち上げることでエンジンルーム上部に空間的余裕を設け、歩行者の頭部が打ち付けられたとしても衝撃を緩和できる機能である。トヨタやホンダでは「ポップアップフード」、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンでは「アクティブ・ボンネット」と呼ばれている。今回のランキングでは、以下の車種が装備している。

※13 ボンネット後端を上げるタイプが多いが、ボンネット全体を持ち上げるタイプもある。

【トヨタ】
●クラウン

【ホンダ】
●アコード
●インサイト

【メルセデス・ベンツ】
●Cクラス

【フォルクスワーゲン】
●ポロ

 それに対し、「フォレスター」を初め、スバルが導入している動的歩行者保護機能が「歩行者保護エアバッグ」だ。歩行者がボンネット上に乗り上げた際に、頭部を打ち付けてしまうと特に危険なのが、フロントピラーやワイパーピボットなどの構造的に衝撃吸収性を持たせられない部分だ。歩行者保護エアバッグが展開されるとそれらを覆うので、直接頭部が打ち付けられる危険性がなくなるのである。歩行者保護エアバッグは、フロントバンパーのGセンサーが歩行者との接触を検知すると、乗員用エアバッグと同様に瞬間的に展開する仕組みだ。

 そのほか、あらゆるメーカー・車種を問わずに採用されているのが、「歩行者傷害軽減ボディ」の考え方。フロントバンパーやヘッドランプなど、歩行者が接触しやすいパーツは柔軟性のある素材で衝撃を吸収できるようにしたり、一定以上の衝撃でパーツが脱落しやすくしたりするなど、可能な限り脚部の傷害を低減するよう作られている。

2018年度のJNCAPにおいて、歩行者保護の脚部保護性能評価試験を受ける三菱「エクリプス クロス」。

歩行者保護の脚部保護試験の様子。車種は三菱「エクリプス クロス」。

第1位:36.51点 クラウン(トヨタ)
第2位:34.08点 フォレスター(スバル)
第3位:31.66点 Cクラス(メルセデス・ベンツ)
第4位:30.50点 デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)
第5位:30.37点 N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)

第6位:29.96点 エクリプス クロス(三菱)
第7位:29.84点 インサイト(ホンダ)
第8位:29.34点 ポロ(フォルクスワーゲン)
第9位:29.25点 クロスビー(スズキ)
第10位:29.18点 RAV4(トヨタ)

第11位:29.10点 NX(レクサス)
第12位:28.47点 ロッキー(ダイハツ)
第13位:28.24点 ミラ トコット(ダイハツ)
第14位:28.11点 アコード(ホンダ)
第15位:27.86点 UX(レクサス)

第16位:27.66点 タント/タント カスタム(ダイハツ)
第17位:27.48点 カローラ スポーツ(トヨタ)
第18位:26.61点 オデッセイ(ホンダ)
第19位:26.32点 カムリ(トヨタ)
第20位:26.16点 N-VAN(ホンダ)

第21位:26.02点 CR-V(ホンダ)
第22位:23.70点 ジムニー(スズキ)
第23位:22.93点 ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)

 歩行者保護の第1位は、36.51点を獲得した「クラウン」だ。減点は、わずかに0.49点である。第2位は、総合で「クラウン」と同点第1位の「フォレスター」で、34.08点。減点は2.92点と、「クラウン」よりわずかに多かった。そして第3位に入ったのが、メルセデス・ベンツ「Cクラス」(4代目)だ。ここ数年、JNCAPでは輸入車を試験の対象としていなかったが、2019年度は3車種が選定。「Cクラス」はそのうちの1車種で、歩行者保護に秀でており、31.66点を獲得した。

 さらに、歩行者保護でも軽自動車がベスト5入りを果たした。4位に日産「デイズ/デイズ ハイウェイスター」(2代目)と三菱「eKワゴン/eKクロス」(4代目)の兄弟車、5位にホンダ「N-WGN/N-WGN」。2車種は特に脚部保護性能評価が高く、試験では最大の5点を獲得している。

乗員保護性能ランキング

 乗員保護性能は、フルラップ前面衝突(※14)、オフセット前面衝突(※15)、側面衝突(※16)の3種類の試験が行われる。同一車種を3台用意し、実際に衝突させる厳格な試験だ。センサーを備えたダミー人形を運転席などに着座させて衝突させ、計測された衝撃や、キャビンの変形・破損具合から衝突安全性能を算出している。

※14 フルラップ前面衝突:真正面から堅牢なコンクリートバリアに時速55kmでぶつかっていく衝突試験。ダミー人形は運転席と助手席にセット。
※15 オフセット前面衝突試験:対向車とすれ違おうとして運転席側の40%が衝突したという設定の衝突試験。バリアは潰れやすいアルミ製のデフォーマブル・バリアで、時速64kmで衝突する。ダミー人形は運転席と後席(助手席側)にセット。
※16 側面衝突試験:1300kgのムービング・バリア(台車)が側面に時速55kmで衝突する試験。通常は運転席側に衝突させるが、助手席側のセンターピラーレス構造を採用している車種には、強度的に劣る助手席側への衝突を行う。ダミー人形は運転席のみだが、助手席側に衝突させる場合は、助手席にセットされる。

 そして乗員保護の4つ目の試験が、後面衝突頸部保護試験だ。こちらは実際にクルマを衝突させるのではなく、スレッドに設置した試験対象車種のシートにダミー人形を着座させて試験を行う。後面衝突を模擬してシートに急加速を加え、ダミー人形の頸部に加わる衝撃値から、その保護性能を評価している。要は、その車種の運転席と助手席のシートが、後面衝突を受けたときにどれだけむち打ち症状になりにくいかを評価する試験だ。

JNCAPの後面衝突頸部保護試験の様子。試験は、2019年度のホンダ「インサイト」のもの。

JNCAPの後面衝突頸部保護試験の様子。ホンダ「インサイト」の試験。

 エンジンルームやトランクルームがクラッシャブルゾーンとなることでキャビンへの衝撃を抑制しやすい前面および後面衝突に対し、乗員を保護しにくいのが側面衝突だ。近年、側面衝突の対策も進展しており、そのひとつが基本フレームに環状構造を採用すること。これにより、側面からの衝撃に対してキャビンが変形するのを抑制する効果を高めている。またセンターピラーなどに高張力鋼板(ハイテン材)を使用することでよりキャビンを堅牢にするなど、材質面での進展や、そうしたハイテン材を組み込む技術面での進展もある。

 さらに、エアバッグの装備数・種類も増やされている。現在では、乗員の頭部がドアガラスと衝突するのを防止するサイドカーテンエアバッグなども充実してきている。サイドカーテンエアバッグは、現在では軽自動車など普及が進んでいる。

2018年度のJNCAPの乗員保護評価において、側面衝突試験を受けるトヨタ「カローラ スポーツ」。

側面衝突試験の様子。車種はトヨタ「カローラ」。

第1位:58.46点 フォレスター(スバル)
第2位:57.95点 アコード(ホンダ)
第3位:57.85点 カローラ スポーツ(トヨタ)
第4位:57.43点 CR-V(ホンダ)
第5位:57.30点 RAV4(トヨタ)

第6位:57.21点 カムリ(トヨタ)
第7位:57.11点 クラウン(トヨタ)
第8位:56.96点 エクリプス クロス(三菱)
第9位:56.95点 UX(レクサス)
第10位:55.34点 N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)

第11位:55.30点 オデッセイ(ホンダ)
第12位:55.17点 インサイト(ホンダ)
第13位:54.80点 NX(レクサス)
第14位:54.24点 ロッキー(ダイハツ)
第15位:54.02点 クロスビー(スズキ)

第16位:53.86点 ポロ(フォルクスワーゲン)
第17位:53.71点 ジムニー(スズキ)
第18位:53.07点 デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)
第19位:53.00点 ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)
第20位:52.08点 Cクラス(メルセデス・ベンツ)

第21位:50.38点 N-VAN(ホンダ)
第22位:50.34点 ミラ トコット(ダイハツ)
第23位:49.58点 タント/タント カスタム(ダイハツ)

 乗員保護の第1位は、58.46点を獲得したスバル「フォレスター」だ。歩行者保護同様に、満点まで1.54点という高い乗員保護性能を披露した。第2位は、57.95点のホンダの中上級セダン「アコード」(10代目)。こちらもまた満点まで2.05点という高得点となった。第3位は、その「アコード」に0.1点及ばず57.85点だった、トヨタ「カローラ スポーツ」(12代目)となっている。

シートベルトの着用警報装置ランキング

 シートベルトの着用警報装置とは、ドライバー以外の搭乗者に着用を促すことで、シートベルトの着用率の向上を図ることを目的に行われている試験だ。試験では、警報の種類、タイミングおよび表示位置などの評価が行われている。

1位:4.00点 ジムニー(スズキ)
1位:4.00点 フォレスター(スバル)

3位:3.00点 N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)
3位:3.00点 タント/タント カスタム(ダイハツ)
3位:3.00点 デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)
3位:3.00点 ミラ トコット(ダイハツ)
3位:3.00点 ロッキー(ダイハツ)

8位:2.92点 クラウン(トヨタ)
9位:2.83点 エクリプス クロス(三菱)

10位:2.50点 CR-V(ホンダ)
10位:2.50点 RAV4(トヨタ)
10位:2.50点 UX(レクサス)
10位:2.50点 アコード(ホンダ)
10位:2.50点 インサイト(ホンダ)
10位:2.50点 カローラ スポーツ(トヨタ)
10位:2.50点 ポロ(フォルクスワーゲン)

17位:2.00点 Cクラス(メルセデス・ベンツ)
17位:2.00点 NX(レクサス)
17位:2.00点 N-VAN(ホンダ)
17位:2.00点 オデッセイ(ホンダ)
17位:2.00点 カムリ(トヨタ)
17位:2.00点 クロスビー(スズキ)
17位:2.00点 ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)

 シートベルトの着用警報は算出方法の関係で0.5点刻みになりやすく、また最大4点ということもあり、同点の車種が多い。シートベルトの着用警報は最大得点が難しいが、2018年度に2車種が獲得した。スズキ「ジムニー」(4代目)とスバル「フォレスター」だ。「フォレスター」はこれにより、歩行者保護が第2位、乗員保護とシートベルトの着用警報装置が第1位というパーフェクトに近い順位を記録した。

 そして3点を獲得したのが5車種。ダイハツは「タント/タント カスタム」(4代目)、「ミラ トコット」(初代)、「ロッキー」(2代目)の3車種。そしてホンダ「N-WGN/N-WGN カスタム」、日産「デイズ/デイズ ハイウェイスター」および三菱「eKワゴン/eKクロス」となっている。軽自動車は、歩行者保護性能とこのシートベルトの着用警報装置で高得点を獲得する傾向にある。実際、第1~3位の7車種のうち、「フォレスター」と「ロッキー」を除いた5車種が軽自動車である。


 2018年度と2019年度の23車種を対象に、衝突安全性能に関する4種類のランキングを掲載した。項目別に見ると、各車の安全性能の特徴が際立ってくる。そのクルマがどのような衝突安全の思想の下に開発されたのかが見えてきて、興味深い。

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