2020年06月12日 13:00 掲載
交通安全・防災 【JNCAP2018-2019】全23車種による衝突安全性能ランキング
オフセット前面衝突試験を受けるスバル「フォレスター」(5代目)。
JNCAPとは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が毎年実施している、新車の安全性能評価試験のことだ。毎年10月下旬から12月初旬にかけて前期として発表され、翌年5月末に後期が発表される。
評価試験を受けるのは、現行車種(新車)の中から特に販売台数の多い車種が選定される。実施年度か、その1~2年前に発売、もしくはマイナーチェンジによる性能向上が行われた車種が選ばれることが多い。また、メーカーが試験を依頼するケースもある。どちらのケースにしろ試験用の車両は、試験車両であることを伏せて、ユーザーと同様にディーラーで購入するのが原則。そして全車種同一条件の下に厳密で正確な試験を実施している。
2種類ある安全性能評価のうち、ここで取り上げるのは、事故時に乗員と歩行者の保護性能を扱う衝突安全性能評価だ。パッシブ・セーフティとも呼ばれ、JNCAPでは真正面からコンクリート・バリアに正面衝突するフルラップ前面衝突試験など、実際にクルマをぶつけてその安全性能の評価が行われている。なお、今回のランキングでは直近の2年間に評価を受けた23車種を対象とした。その理由は、衝突安全性能評価が2018年度に大きく得点の算出方法が変更されたことによる。2017年度までは208点満点方式だったが、2018年度から100点満点方式に変更されたからである。
より正確に述べると、変更されたのは試験で算出された点数にかける「重み係数」だ。試験内容と試験結果の点数に関しては変更されていない。歩行者保護の頭部保護試験を例にすると、2017年度までは、「試験の得点(0~4点)×重み係数(18.75)=頭部保護の得点(0~75点)」という形で算出されていた。これが2018年度からは重み係数が8.00となり、「試験の得点(0~4点)×重み係数(8.00)=頭部保護の得点(0~32点)」となったのである。この重み係数は、事故データを基に経済損失などから導き出されている。
国産車20車種+輸入車3車種・全23車種の顔ぶれ
なお、23車種は以下の通りだ。
【トヨタ】
●RAV4(中型クロスオーバーSUV・5代目・2019年4月発売)
●カムリ(中上級セダン・10代目・2017年7月発売 ※1)
●カローラ スポーツ(小型ハッチバック・12代目・2018年6月発売)
●クラウン(高級セダン・15代目・2018年6月発売)
※1 「カムリ」のOEM供給車であるダイハツ「アルティス」も同一性能。
【日産】
●デイズ/デイズ ハイウェイスター(軽トールワゴン・2代目・2019年3月発売 ※2 ※3)
※2 「デイズ」(2代目)とともに共同開発された兄弟車に、三菱「eKワゴン」がある。
※3 デイズ ハイウェイスター:「デイズ」のスポーティモデル。
【ホンダ】
●CR-V(中型クロスオーバーSUV・5代目・2018年8月発売)
●N-VAN(軽商用車・初代・2018年7月発売)
●N-WGN/N-WGNカスタム(軽ハッチバック・2代目・2019年8月発売 ※4)
●アコード(中上級セダン・10代目・2020年2月発売)
●インサイト(中級セダン・3代目・2018年12月発売)
●オデッセイ(大型ミニバン・5代目・2018年8月発売)
※4 N-WGN カスタム:「N-WGN」の上級モデル。
【スズキ】
●クロスビー(コンパクト・クロスオーバーワゴン・初代・2017年12月発売)
●ジムニー(軽クロスカントリー4WD・4代目・2018年7月発売)
【スバル】
●フォレスター(クロスオーバーSUV・5代目・2018年9月発売)
【ダイハツ】
●タント/タント カスタム(軽トールワゴン・4代目・2019年7月発売 ※5 ※6)
●ミラ トコット(軽ハッチバック・初代・2018年6月発売・軽自動車)
●ロッキー(小型クロスオーバーSUV・2代目・2019年11月発売 ※7)
※5 タント カスタム:「タント」の上級モデル。
※6 「タント/タント カスタム」のOEM供給車であるスバル「シフォン/シフォンカスタム」も同一性能。
※7 「ロッキー」のOEM供給車であるトヨタ「ライズ」も同一性能。
【三菱】
●エクリプス クロス(中型クロスオーバーSUV・初代・2018年3月発売)
●eKワゴン/eKクロス(軽トールワゴン・4代目・2019年3月発売 ※8 ※9)
※8 「eKワゴン」(4代目)の兄弟車として、日産「デイズ」(2代目)がある。
※9 eKクロス:「eKワゴン」のクロスオーバーモデル。
【レクサス】
●NX(小型クロスオーバーSUV・初代・2014年7月発売)
●UX(小型クロスオーバーSUV・初代・2018年11月発売)
【メルセデス・ベンツ】
●Cクラス(4代目・2014年7月発売 ※10)
※10 メルセデス・ベンツでは、独自の分類として「クラス」を用いており、「Cクラス」は中上級を指す。その中には、セダン、クーペ、ステーションワゴンなどが含まれている。
【フォルクスワーゲン】
●ポロ(コンパクトカー・6代目・2018年3月発売)
【ミニ】
●ミニ 3ドア/5ドア(コンパクトカー・3代目・2014年3月発売)
全23車種による衝突安全性能・総合ランキング
まずは、衝突安全性能の総合ランキングから掲載する。総合ランキングは、歩行者保護、乗員保護、シートベルトの着用警報の得点を合計したもの。四捨五入した得点での合計のため、合計得点にはずれが生じることもある。
また総合ランキングでは獲得した点数により、以下の評価が与えられ、最高評価の5つ星には「ファイブスター賞」が贈られる。ただし82点以上を獲得しても、試験項目で5段階評価のレベル3以下があると、4つ星止まりとなる。今回は2つ星以下を獲得した車種はないため、割愛した。
82.0点以上:★★★★★(ファイブスター賞)
72.5点以上82.0点未満:★★★★
63.0点以上72.5点未満:★★★
ちなみに全23車種の平均点は86.25点。第1位の96.5点から第23位の77.9点までは、18.6点の差がある。同点の場合、同じ年度の場合は車種名順で表記(アルファベット、五十音)。年度が違う場合は2018年度の車種を先に記載した。
乗員保護性能評価のフルラップ前面衝突試験の様子。車種はトヨタ「クラウン」。
第1位:96.5点 クラウン(トヨタ)★★★★★
第1位:96.5点 フォレスター(スバル)★★★★★
第3位:89.7点 エクリプス クロス(三菱)★★★★★
第4位:88.9点 RAV4(トヨタ)★★★★★
第5位:88.7点 N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)★★★★★
第6位:88.5点 アコード(ホンダ)★★★★★
第7位:87.8点 カローラ スポーツ(トヨタ)★★★★★
第8位:87.5点 インサイト(ホンダ)★★★★★
第9位:87.3点 UX(レクサス)★★★★★
第10位:86.5点 デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)★★★★★(※11)
※11 日産「デイズ」と三菱「eKワゴン」は日産と三菱が共同出資したジョイントベンチャーNMKVで開発された兄弟車のため、この4車種は同一性能として扱われている。
第11位:85.9点 CR-V(ホンダ)★★★★★
第11位:85.9点 NX(レクサス)★★★★★
第13位:85.7点 ロッキー(ダイハツ)★★★★★(※12)
第14位:85.7点 Cクラス(メルセデス・ベンツ)★★★★(※12)
第14位:85.7点 ポロ(フォルクスワーゲン)★★★★(※12)
※12 ダイハツ「ロッキー」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」、フォルクスワーゲン「ポロ」は同点の85.7点だが、★のが数が異なるため、ファイブスター賞(5つ星)の「ロッキー」は13位、4つ星の「Cクラス」と「ポロ」は14位とした。
第16位:85.5点 カムリ(トヨタ)★★★★★
第17位:85.2点 クロスビー(スズキ)★★★★★
第18位:83.9点 オデッセイ(ホンダ)★★★★★
第19位:81.5点 ミラ トコット(ダイハツ)★★★★
第20位:81.4点 ジムニー(スズキ)★★★★
第21位:80.2点 タント/タント カスタム(ダイハツ)★★★★
第22位:78.5点 N-VAN(ホンダ)★★★★
第23位:77.9点 ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)★★★
総合ランキングの第1位は96.5点という高得点を獲得したトヨタ「クラウン」(15代目)とスバル「フォレスター」(5代目)だった。この2車種は総合ランキングでは同点だが、項目別に見ると得点差があり、安全性能面の特徴が異なっていることがわかる。
そして注目すべきは、軽自動車ながらベスト5入りしたホンダ「N-WGN/N-WGN カスタム」(2代目)だろう。軽自動車はサイズ的な制約などから、つい数年前までは衝突安全性能が普通車と比較すると大きく劣っていた。しかし、ホンダの「N-BOX」(2代目)が2017年に登場し、2011~17年の全96車種中で第14位を獲得する健闘を見せて以降、少しずつではあるが上位に進出するようになってきた。その2代目「N-BOX」のプラットフォームをベースに開発されたのが、2代目「N-WGN/N-WGN カスタム」である。
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