2020年06月08日 14:20 掲載
交通安全・防災 【JNCAP2019】衝突安全・前期+後期全12車種によるランキング
第7位:NX(レクサス)
合計:85.9点 ★★★★★
●歩行者保護:29.10点
頭部保護:24.72点・Lv4
脚部保護:4.34点・Lv4
●乗員保護:54.80点
フルラップ前面衝突:19.53点(運転席:9.62点・Lv5/助手席:9.91点・Lv5)
オフセット前面衝突:18.32点(運転席:9.17点・Lv4/後席:9.15点・Lv4)
側面衝突:15.00点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.93点(運転席:0.96点・Lv5/助手席:0.96点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2
●感電保護性能:適合
試験に用いられた車両の型式:DAA-AYZ10
レクサス初のコンパクト・クロスオーバーSUVとして、国内では2014年7月に登場した「NX」。レクサス「UX」とは同じコンパクト・クロスオーバーSUVにカテゴライズされるが、「NX」は発売時期が早いため、当時開発中だったTNGAプラットフォームは採用されていない。衝突安全性能において、それが点差になって表れたといっていいだろう。
ただし、順位こそ第7位と中団に埋もれてしまったが、得点そのものは85.9点と高得点である。項目として第1位を獲得したのは、後面衝突頸部保護。後面衝突頸部保護とは、後方から衝突を受けた際の衝撃を、どれだけシートとヘッドレストが緩和・吸収し、首に負荷をかけないで済むかを示したもの。要は、どれだけむち打ち症状になりにくいシートか、というものを表した項目だ。同項目において、運転席も助手席も0.96点、合計1.93点を獲得した。2点満点中の1.9点台となった唯一の車種である。
第8位:ロッキー(ダイハツ)
合計:85.7点 ★★★★★
●歩行者保護:合計28.47点
頭部保護:23.44点・Lv4
脚部保護:5.00点・Lv5
●乗員保護:合計54.24点
フルラップ前面衝突:18.23点(運転席:8.61点・Lv4/助手席:9.62点・Lv5)
オフセット前面衝突:19.45点(運転席:9.41点・Lv5/後席:10.05点・Lv5)
側面衝突:15.00点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.55点(運転席:0.77点・Lv4/助手席:0.77点・Lv4)
●シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4
試験に用いられた車両の型式:5BA-A200S
同一性能のOEM供給車:トヨタ「ライズ」
2019年11月に発売されたダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。第11位にランクインした「タント/タント カスタム」で初採用された、ダイハツの新たなクルマづくりコンセプト「DNGA」(※5)を採用した第2弾である。ただし、DNGAプラットフォームは軽自動車用に開発されたことから、コンパクトカーサイズに適用すべく大きく手が入れられた。骨格の通し方や足回り部品の取り付けの考え方などを共通事項としながらも、サイズの拡大を図ったのである。
※5 DNGA:Daihatsu New Global Architectureの略。
ダイハツの衝突安全ボディ「TAF」(※6)を採用しており、フロントサイドメンバーの高効率エネルギー吸収構造を特徴とする。さらに、基本フレーム構造の最適化や合理化を実施し、部材の構造断点を減らすと同時に、高張力鋼板を活用することで軽量化とキャビンの高剛性化を実現したとしている。
※6 TAF:Total Advanced Functionの略。「統合的に衝突安全機能が進化したボディ」という意味が持たされている。
第1位の得点となった項目は、歩行者の脚部保護。最大の5.00点を獲得した。またシートベルトの着用警報装置は第1位となるレベル4の3.00点。レベル5とレベル4が5項目ずつで、10項目合計85.7点。「ロッキー」までがファイブスター賞を獲得した車種となる。
第8位:Cクラス(メルセデス・ベンツ)
合計:85.7点 ★★★★
画像は「C 200 アバンギャルド」。
●歩行者保護:合計31.66点
頭部保護:27.4点・Lv5
脚部保護:4.58点・Lv5
●乗員保護:合計52.08点
フルラップ前面衝突:17.06点(運転席:8.94点・Lv4/助手席:8.12点・Lv4)
オフセット前面衝突:18.87点(運転席:9.87点・Lv5/後席:9.00点・Lv4)
側面衝突:15.00点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.12点(運転席:0.56点・Lv2/助手席:0.56点・Lv2)
●シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2
試験に用いられた車両の型式:5AA-205077C
JNCAPで評価試験の対象となる車種は、販売台数の多い現行車種(新車)から選ばれる。そのため、必然的に国産車が多くなるが、2019年度の衝突安全性能評価は輸入車が3車種も選定された。その中で最も高得点だったのが、メルセデス・ベンツ「Cクラス」だ。同社は独自のクルマの分類方式を用いており、「Cクラス」とはランクとしてミドルからミドルアッパーに属する、Cで始まる車名のグループの総称である。現行のCクラスは4代目で、2014年7月に7年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した。
「Cクラス」の特に優れている点が、歩行者保護性能だ。頭部保護は第2位に1.6点差をつける27.04点。27点台は唯一の車種である。脚部保護もレベル5の4.58点で、合計31.66点を獲得し、歩行者保護の第1位となった。歩行者保護で31点台は「Cクラス」のみである。
一方で課題もあり、後面衝突頸部保護は運転席・助手席ともにレベル2となる0.56点、合計1.12点で最下位。そのため、ダイハツ「ロッキー」と同点の85.7点を獲得したにもかかわらず、ファイブスター賞(5つ星)を得ることはできなかった。
第8位:ポロ(フォルクスワーゲン)
合計:85.7点 ★★★★
●歩行者保護:合計29.34点
頭部保護:24.56点・Lv4
脚部保護:4.74点・Lv5
●乗員保護:合計53.86点
フルラップ前面衝突:18.15点(運転席:7.88点・Lv4/助手席:10.26点・Lv5)
オフセット前面衝突:20.25点(運転席:10.19点・Lv5/後席:10.06点・Lv5)
側面衝突:14.28点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.16点(運転席:0.58点・Lv2/助手席:0.58点・Lv2)
●シートベルトの着用警報装置:2.50点・Lv3
●感電保護性能:適合
試験に用いられた車両の型式:ABA-AWCHZ
約8年ぶりのフルモデルチェンジが行われ、現行のフォルクスワーゲン(VW)「ポロ」(6代目)は、2018年3月に登場した。最大の特徴は、VWグループが採用したモジュラー戦略で開発された新型「MQB」プラットフォームを採用したこと。MQBプラットフォームはVWを代表する人気車種「ゴルフ」を筆頭に、数多くの車種にも採用されているが、コンパクトカーで採用したのは「ポロ」が初となる。
歩行者との接触を検知すると、瞬間的にボンネット後端を40~60mm持ち上げ、歩行者の頭部が打ち付けられた際に衝撃を緩和する「アクティブ・ボンネット」を装備。ただし、頭部保護はそれ以外の部分で点が伸びなかったため、レベル4の24.56点で、全体の第6位となっている。また、後面衝突頸部保護の点数が低く、運転席と助手席ともにレベル2の0.58点。このため、「ポロ」もダイハツ「ロッキー」と同点の85.7点を獲得したが、ファイブスター賞を得ることはできなかった。
第11位:タント/タント カスタム(ダイハツ)
合計:80.2点 ★★★★
画像は「タント」。
●歩行者保護:合計27.66点
頭部保護:22.96点・Lv4
脚部保護:4.68点・Lv5
●乗員保護:合計49.58点
フルラップ前面衝突:17.47点(運転席:7.14点・Lv3/助手席:10.33点・Lv5)
オフセット前面衝突:15.30点(運転席:8.28点・Lv4/後席:7.02点・Lv3)
側面衝突:15.00点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.81点(運転席:0.92点・Lv5/助手席:0.92点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4
軽自動車
試験に用いられた車両の型式:6BA-LA650S
同一性能のOEM供給車:スバル「シフォン/シフォンカスタム」
2019年7月にフルモデルチェンジが実施され、4代目が登場したダイハツのトールワゴン軽自動車「タント/タント カスタム」(※7)。DNGAコンセプトの第1号だ。DNGAによる新型プラットフォームは、サスペンションや骨格の部品配置をゼロベースから再構築して最適化し、軽量高剛性を実現した点が特徴となっている。曲げ剛性を従来比で約30%向上させると同時に、高張力鋼板の活用や構造の合理化・最適化により、プラットフォームを含めたボディの基本フレーム全体で約40%の軽量化を実現した。
※7 タント カスタム:スタイリングを重視したタントの上級モデル。
「タント」は乗り降りや荷物の積み卸しを考慮し、助手席側はセンターピラーレス構造を採用している。運転席側と比べた際に強度・剛性が大きく低下してしまうのを防ぐため、超高張力鋼板を使用したピラーをドアに内蔵している。JNCAPでは、こうしたセンターピラーレス構造を採用している一部の車種に対しては、あえて強度・剛性的に劣る助手席側に対して側面衝突試験を実施している。「タント/タント カスタム」も助手席側に側面衝突試験が実施されたが、最大の15.00点を獲得している。
第12位:ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)
合計:77.9点 ★★★
画像は「ミニ 5ドア」。
●歩行者保護:合計22.93点
頭部:19.36点・Lv3
脚部:3.55点・Lv3
●乗員保護:合計53.00点
フルラップ前面衝突:18.69点(運転席:8.78点・Lv4/助手席:9.91点・Lv5)
オフセット前面衝突:17.54点(運転席:8.74点・Lv4/後席:8.79点・Lv4)
側面衝突:15.00点・Lv5
後面衝突頸部保護:1.75点(運転席:0.88点・Lv5/助手席:0.88点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2
試験に用いられた車両の型式:DBA-XU15M
1958年に「オースチン・セブン」および「モーリス・ミニ・マイナー」として誕生した英BMC社の「ミニ」。その後、BMCは経営が傾き、「ミニ」の権利を手に入れたBMWにより2001年からは「ミニ」そのものがブランド名になり、現在でも存続している。現行車は、BMW傘下となってからは3代目で、2014年3月にフラッグシップモデル「3ドア(ハッチバック)」が登場。「5ドア」は同年10月に3代目が誕生した。
今回の全12車種のうち、唯一の70点台となる77.9点で第12位、そして唯一の3つ星だった(衝突試験は「5ドア」で実施された)。しかし、これは「ミニ」の発売が2014年であることを考慮すれば、致し方がないところもあるだろう。JNCAPでは、基本的にその年度か、1~2年前に発売もしくはマイナーチェンジを受けた販売台数の多い車種が選定されるが、「ミニ」のような例外もある。これまでに評価試験を受けていない販売台数の多い現行車種であれば、選定される可能性があるのだ。
しかも発売されて6年といえば、例外もあるが日本車ならモデル末期といってもいい。フルモデルチェンジしていてもおかしくない年数であり、6年あれば技術も大きく進展する。それでも10項目のうち4項目でレベル5、3項目でレベル3の点数を獲得したのだから、健闘したという見方もできるだろう。
衝突安全性能評価は100点満点方式に変更されて2年目だが、2020年度に早くも次の大きな改革が待つ。これまで独立して実施されてきた衝突と予防のふたつの安全性能評価が統合され、合計100点満点となる。ふたつの安全性能がそろって高評価を得ないと、統合された評価では高得点を得られないようになるのだ。
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