2020年04月05日 18:50 掲載

交通安全・防災 創設25年、進化し続けるJNCAP。2021年度から対自転車・衝突被害軽減ブレーキ評価試験を導入


神林 良輔

対自転車試験をどのような条件で実施するか

 2018年度にスタートした対自転車試験の調査・研究では、まず導入に向けた試験シナリオに関する検討、対自転車・衝突被害軽減ブレーキを搭載したクルマによる確認試験、同評価試験のJNCAPにおける配点に関する検討などが行われた。

 まず試験シナリオに関する検討は、日本の事故実態に基づいた評価すべきシナリオの整理が実施された。その結果、自転車とクルマの交通事故のうち、約62.5%が「(交差点での)出合い頭」であることが判明したのである(画像2)。

画像2。左がクルマ対自転車の事故形態別、右が出合い頭事故における自転車の進行方向別の円グラフ。国土交通省「令和元年度第1回自動車アセスメント評価検討会 資料4-2」より。

画像2。左がクルマ対自転車の事故形態別、右が出合い頭事故における自転車の進行方向別の円グラフ。国土交通省が公開する「令和元年度第1回自動車アセスメント評価検討会 資料4-2」より。

 そのほか、評価試験で使用する試験装置(画像1)の追突シナリオ試験における自転車ターゲットの横位置の再現性が低いことが課題として浮上。また対自転車・衝突被害軽減ブレーキを装備する車両(車名は未公表)でテストを実施したところ、出合い頭シナリオでは試験車速が低い場合は不作動となることが見られたが、高い場合は衝突被害軽減ブレーキが作動することが確認された。

 一方、追突シナリオでは低速域から高速域まで作動し、衝突回避が可能であることが確かめられた。なお、遮蔽物の陰からの飛び出しに対しては、今回のテスト車両では対応が難しかったという。

画像3。

画像1(記事トップと同じもの)。2018年度にテストされた対自転車・衝突被害軽減ブレーキ用の試験装置。「令和元年度第1回自動車アセスメント評価検討会 資料4-2」より。

 JNCAPの配点に関しては、2020年度試験から導入予定の衝突と予防を統合した安全性能評価で試算した場合、100点満点中、出合い頭の昼間が6.0点、同夜間が2.2点。追突の昼間が0.5点、同夜間が1.2点と見積もられた。ただし、導入時にどういった試験を行うかについてはまだ定まっていない。

 こうした調査・研究を経て、2019年度は試験・評価方法を中心に検討が行われた。試験シナリオは、事故件数が圧倒的に多い「出合い頭(昼間)」から導入される可能性が高いようだ。

 今後の予定は、2020年度に予備試験を実施したあと、2021年度から正式な評価項目として試験を行うようになる。詳細は、自動車アセスメント評価検討会等での検討を経て、自動車事故対策機構(NASVA)の公式サイト等で公開されるはずだ。

 なお、現時点で衝突被害軽減ブレーキが自転車に対応していることを明記しているのは、国内メーカーでは、トヨタ(10車種)、ホンダ(2車種)、スバル(EyeSight搭載車種)などとなっている。日産は、国内のWebサイトなどでは明記していないものの、Euro NCAP(欧州自動車アセスメント)が公開している動画「AEB for cyclists」において、2代目「リーフ」が自転車を検知して停車するシーンが収録されている(動画1の2分過ぎ)。

動画1。Euro NCAPが公開している「AEB for cyclists」(英語)。0分45秒過ぎなど複数所に対自転車・衝突被害軽減ブレーキの試験の様子を収録。再生時間4分39秒。

 走行中の自転車を検知する際の課題は、歩行者よりも格段に速い自転車の速度のようだ。特に、クルマの前を横切っていく場合は、センサーの画角が十分に広くなければ検知できないという。一方、進行方向が同じ場合は比較的検知がしやすく、自転車への追突事故は、目前を横切る自転車との事故よりは対応しやすいという。どちらにしても、歩行者やクルマを対象にするのとは異なり、技術的に解決するべき課題は多いという。


 内閣府は、世界一安全な道路交通を目指して2020年までに24時間交通事故故死者数(※1)を2500人以下とする目標を掲げて、「第10次交通安全基本計画」を進めてきた。目標達成には、クルマの乗員と歩行者の交通事故死者数の削減だけではなく、自転車搭乗者の死者数の削減も大きな課題となる。

※1 交通事故の発生から24時間以内に死亡した人の数。海外では、30日交通事故死者数が重視されている。

 なお、2020年の交通事故死者数は1・2月の合計で509人。そのうちの自転車搭乗者は合計70人だ。単純に6倍すれば420人となり、2019年度と同等である。対自転車・衝突被害軽減ブレーキを装備したクルマが普及するようになれば、確実にその何割かの命は救われることだろう。早い段階での普及が望まれる。

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