2020年04月05日 18:50 掲載
交通安全・防災 創設25年、進化し続けるJNCAP。2021年度から対自転車・衝突被害軽減ブレーキ評価試験を導入
画像1。2018年度にテストされた対自転車・衝突被害軽減ブレーキの試験装置。国土交通省が公開する「令和元年度第1回自動車アセスメント評価検討会 資料4-2」より。
JNCAP(Japan New Car Assessment Program)は新車を対象とした、クルマの安全性能評価試験のことだ。JNCAPの試験は、安全性能を含めたクルマの基準を定めている保安基準よりも、さらに厳しい条件で実施されている、つまり、路上を走るクルマは保安基準で定められた安全性能は満たしているのだが、JNCAPではさらに高いレベルでの安全性能の差を評価しているのである。
現在、JNCAPの結果は年に2回発表される(予防安全性能評価は原則随時)。前期は10~12月頃に、そして後期は翌年5月末頃だ。試験車種は、その年度の販売台数の多い車種から選定されるほか、メーカーから依頼される車種の試験も実施する。試験用の車両は、試験対策が施されないよう、基本的にユーザーが購入するのと同様に抜き打ちでディーラーで購入される。
試験は大別して2種類あり、衝突被害軽減ブレーキなどのように未然に事故を防ぐための予防安全技術を対象としているのが、2014年度からスタートした「予防安全性能評価試験」だ。一方、実際にクルマをバリアなどに衝突させてクラッシュテストを行い、乗員の安全性や歩行者への加害性を評価するのが、1995年度からスタートした「衝突安全性能評価試験」である。
予防安全性能評価試験は対象となる技術の性能が年々向上していることもあり、ほぼ毎年のように新しい試験内容が追加されたり、これまでの試験内容がより難易度の高いものに改められたりしている。
中でも衝突被害軽減ブレーキは、次々に試験内容が追加されており、初年度の2014年度は対車両からスタート。現在は対車両に加え、対歩行者の昼間(2016年度導入)、夜間・街灯あり(2018年度導入)、夜間・街灯なし(2019年度導入)が追加され、衝突被害軽減ブレーキだけで4種類の試験が行われている。2019年度の予防安全性能評価試験の配点では、衝突被害軽減ブレーキが約80%、141点満点中の112点を占めている。それだけ衝突被害軽減ブレーキが交通事故削減に有効という証であり、さらに2021年度からは対自転車試験も導入される予定である。
次のターゲットは自転車事故の削減
2019年の交通事故死者は、1948年の統計開始以来の最低人数を更新し、3215人だった。そのうちで自転車乗用中の事故死者は433人(12.8%)。さらに、そのうちのクルマとの事故による死者数が312人だ。JNCAPでは、衝突被害軽減ブレーキが対自転車に対応することで、交通事故死者数削減に高い効果を見込めると考察。自転車を検知可能な衝突被害軽減ブレーキ技術の開発と普及促進を急務とし、導入が進められることとなった。そのための調査・研究は2018年度からスタートし、正式導入は2021年と発表されている。
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導入までの道のり
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