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道路・交通最終更新日:2019.06.28 公開日:2019.06.28

【JNCAP2018】チャイルドシート安全性能評価ランキング

子どもをクルマに乗せる際の必需品である「チャイルドシート」。国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)は「自動車アセスメント(JNCAP)」の一環としてチャイルドシートの安全性能評価試験を実施している。本記事では、その2018年度後期試験結果からチャイルドシートの安全性能についてランキング形式で紹介しよう。

自動車アセスメント(JNCAP)の安全性能評価試験

 国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)は5月30日、「自動車アセスメント(JNCAP)」の2018年度後期試験結果の中で「チャイルドシートの安全性能」についての評価を発表した。チャイルドシートの安全性能評価は以下の2項目について試験が行われている。

1.前面衝突試験

 前面衝突試験は、クルマが前面衝突したときと同様の衝撃をチャイルドシートに与える試験。

JNCAP|チャイルドシート|前面衝突試験|イメージ

試験方法のイメージ。提供:独立行政法人 自動車事故対策機構

 試験方法は、台車に固定された試験用シートにチャイルドシートを取り付け、子どものダミーを乗せた状態で、その台車を停止状態から瞬間的に時速55kmになるように急激に打ち出すというもの。それによって、時速55kmで衝突したときと類似の衝撃を作り出すわけだ。そのときのチャイルドシートの取り付け部の破損状況、ダミーの頭部や胸部に生じる力、ダミーの頭部の前方への移動量などを計測。計測した値をもとに以下の項目について評価される。

≪乳児用チャイルドシートの評価項目≫
 破損状況、シート背もたれの傾き、頭部のはみだし、胸部

≪幼児用チャイルドシートの評価項目≫
 破損状況、頭部の移動量、頭部に受ける力、胸部に受ける力

 上記のように、乳児用と幼児用にそれぞれ4つの評価項目が設けられていて、それぞれ◎、○、×の3段階で評価される。4項目すべてが◎だと「優」、4項目中3項目が◎なら「良」、1項目でも×があったら「推奨せず」、そして◎が2つ以下だと「普(普通)」と総合評価される。

 ※乳児用:体重10kg未満、身長70cm以下 / 幼児用:体重9~18kg、身長65~100cm以下

2.使用性評価試験

 使用性評価試験は、チャイルドシートの使いやすさや取り付けに関する以下の5項目について各項目5点、合計25点満点(※)で評価する試験。

①取扱説明書など

・説明文や図版の分かりやすさと見やすさ
・子どもの体格別使用方法が記載されているか
・注意や警告、問い合わせ先などの記載があるか
・動画での取り付け方説明へ誘導するQRコードや案内などが記載されているか

②着座のさせやすさ

・ハーネスの高さや長さ調整の扱いやすさ
・バックルの扱いやすさとロック表示の見やすさ

③クルマへの装着性

・座席取り付け具とアーム、ベースと本体の固定の確実性とロック表示の見やすさ。
・サポートレッグやテザーストラップなどの座席回転防止機構の装着の確実性とロック表示の見やすさ

④本体の構造

・リクライニングなどの可動機構やISO-FIX、テザーベルト、サポートレッグの操作性。
・シートカバーの脱着によってハーネスの高さが不適切にならないような工夫がされているか、ハーネスを付けたままシートカバーを脱着できるかなど。
・取り扱い説明書や付属品の収納しやすさ

⑤本体表示

・取扱説明書を見ずとも本体表示だけで確実に装着などの操作を行えるよう配慮された表示があるか

 ※2014年度までは5項目の平均点で評価していたが、2015年度以降は5項目の合計点で評価している。 

乳児用チャイルドシートランキング TOP5

 それでは、乳児用チャイルドシートの安全性能トップ5を見ていこう。なお、製品の特徴については、各メーカーのホームページ等での紹介を参照したものである。

 今回のランキングでは、前面衝突試験の評価が高い順から1位とし、評価が同じ場合は使用性評価の得点が高い方を上位とした。乳児・幼児兼用タイプの場合、幼児用としての衝突安全性能は考慮していない。また、使用性評価の採点基準が2015年度から新しくなったので2015~2018年度に評価試験の行われたチャイルドシートに絞ってランキング化した。

1位 「フラディアグロウISOFIX」 アップリカ・チルドレンズプロダクツ 

JNCAP|チャイルドシート|安全性能評価|ランキング

使用期間目安:新生児~4歳頃(体重18kg)まで。価格:64,000円(税抜)。

 乳児用チャイルドシートの1位は「フラディアグロウISOFIX」。こちらは乳児用(ベッド型)、乳児用、幼児用の3通りの使い方ができる製品。ISO-FIX(※)で固定するタイプである。

 側面からの衝撃をガードするための両サイドのプロテクターや頭部を包み込むヘルメットのような構造のクッションを採用しているのが特徴。

 乳児用の後ろ向きの前面衝突試験で「優」、使用性評価試験は「23点」を獲得した。使用性評価試験は、着座のさせやすさと本体表示で1点ずつ減点されているがそれ以外は満点である。

 ※ISO-FIXとは、クルマのシートの座面と背もたれの間にあるチャイルドシート固定用の金具。シートベルトで固定するタイプのチャイルドシートよりも、簡単で確実な装着ができる。2012年7月以降に販売されたすべての新車に装備されている。


2位 「Oreill(オレイユ)」 ピジョン

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使用期間目安:新生児~7歳頃(体重25kg)まで。価格:18,333円(税抜)。

 乳児用チャイルドシートの2位「Oreill(オレイユ)」は、新生児~7歳児まで使用できる製品。ISO-FIXではなくシートベルトで固定するタイプである。

 4層構造の頭部クッション「クワトロサイドインパクト」で、側部からの衝撃をガード。子どもの成長に合わせて4段階のリクライニングを調整可能。

 乳児用の前面衝突試験で「優」、使用性評価試験では「19点」を獲得。1位と比べると車への装着性と本体の構造の点数が低くなっている。


3位 「バリアント」 カトージ

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使用期間目安:ベビーモードは、4歳頃(18kg)まで 。チャイルドモードは、1歳頃(9kg以上)~4歳頃(18kg以下)まで。 ジュニアモードは、3歳頃(15kg以上)~7歳頃(25kg以下)まで。価格:19,800円(税抜)。

 乳児用チャイルドシートの3位「バリアント」は、乳児用と幼児用、学童用の3通りの使い方ができる製品。学童用についての安全性能試験は実施されていない。ISO-FIXではなく、シートベルトで固定するタイプ。

 ヘッドレストとハーネスが連動しており、ハーネスの高さを調整する必要がないのが特徴。子どもの成長に合わせて5段階の調整が可能である。 

 乳児用の前面衝突試験は「優」、使用性評価試験では「18点」を獲得。使用性評価試験のチャート右上に「使い方動画あり」のマークがない。


3位 「ネディアップ」 リーマン

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使用期間目安:新生児~4歳頃(18kg)まで。価格:14,799円(税込)。

  乳児用チャイルドシートの3位「ネディアップ」は、新生児から4歳頃ま使用できる製品。ISO-FIXではなく、シートベルトで固定するタイプ。

 シートカバーが簡単に取り外せ、洗濯や掃除がしやすいこと。側部に通気口を装備し、汗かきな子どもの背中の蒸れに配慮されていることなど、子どもの快適性も重視されていることが特徴。

 乳児用の前面衝突試験は「優」、使用性評価試験では「18点」を獲得。


5位 「ウィゴーロング」 コンビ

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使用期間目安:新生児~7歳頃(25kg)まで。価格:38,000円(税抜)。

 乳児用チャイルドシートの5位「ウィゴーロング」は、新生児~7歳頃まで使用できる製品。ISO-FIXではなく、シートベルトで固定するタイプ。

 頭部への衝撃を緩和するため、ヘッドレストに従来のウレタンの約3倍の衝撃吸収力を持つ独自素材「エッグショック」を使用しているのが特徴。

 乳児用の前面衝突試験は「優」、使用性評価試験では「16点」を獲得。上位4つの製品では、取り扱い説明書等の点数が5または4点であったが、同製品では3点と低いことがわかる。

幼児用チャイルドシートランキング TOP5

 つづいて、幼児用チャイルドシートの安全性能トップ5を見ていこう。こちらのランキングも同じく前面衝突試験の評価が高い順から1位とし、評価が同じ場合は使用性評価の得点が高い方を上位とした。乳児・幼児兼用タイプの場合、乳児用試験の結果は考慮していない。また、使用性評価の採点基準が2015年度から新しくなったので2015~2018年度に評価試験の行われたチャイルドシートに絞ってランキング化した。

1位 「フォームフィット」 アップリカ・チルドレンズプロダクツ

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使用期間目安:1歳(9kg)~11歳頃(36kg)まで。価格:35,000円(税抜)。写真の右上にあるゴールドのマークは、ISO-FIX固定のチャイルドシートのうち、前面衝突試験の結果が全て優である機種に表示されるマーク。例えば、乳児・幼児兼用でどちらの使用法でも前面衝突試験の結果が優であればこのマークが付く。上機種は、幼児専用であるので全て優とみなされた。

 幼児用チャイルドシートの1位に輝いたのは「フォームフィット」。幼児専用でISOFIXで固定するタイプである。

 子どもの成長に合わせてシートサイズを変更できる「ぐんぐん調整レバー」を搭載。1つのレバーで高さと横幅を同時に調整可能。さらにシートをリクライニングさせると座面が同時に動くムービングシートを採用しているのが特徴。

 前面衝突試験は「優」、使用性評価試験では「24点」を獲得。使用性評価試験は、着座のさせやすさで減点があるが、それ以外の項目では満点となっている。


2位 「Child Guard1.0(チャイルドガード1.0)」 ジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン

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使用期間目安:新生児~4歳頃(18kg)まで。価格:86,400円(税込)。

 幼児用チャイルドシートの2位「Child Guard1.0(チャイルドガード1.0)」は、新生児~4歳頃まで使用できる製品。ISOFIXで固定するタイプ。

 乳児用と幼児用を切り替えるための座面回転機構は、子どもの乗せ降ろしにも便利である。

 幼児用の前面衝突試験は「優」、使用性評価試験では「17点」を獲得。前面衝突試験での結果は高評価であるが、使用性評価試験の結果では減点項目が多い。


3位 「クルット3i」 カーメイト

JNCAP|チャイルドシート|安全性能評価|ランキング

使用期間目安:新生児~4歳頃(18kg)まで。価格:49,470円(税込)。

 幼児用チャイルドシートの3位「クルット3i」は、新生児~4歳頃まで使用できる製品。ISO-FIXで固定するタイプ。

 子どもの乗せ降ろしに意外と邪魔になるハーネスとバックルだが、バックルは前に倒せ、ハーネスも両サイドのホルダーで保持できる構造となっている。また、片手でくるりと360°回転させることができるノブを搭載しているのが特徴。

 ISOFIXで固定するタイプである。幼児用の前面衝突試験は「良」、使用性評価試験では「22点」を獲得。


4位 「クルリラ」 アップリカ・チルドレンズプロダクツ

JNCAP|チャイルドシート|安全性能評価|ランキング

使用期間目安:新生児~4歳頃(18kg)まで。価格:54,000円。

 幼児用チャイルドシートの4位「クルリラ」は、新生児~4歳頃まで使用できる製品。同製品は、ISOFIXとシートベルトの固定がどちらも使えるタイプだが、試験結果はISOFIXで固定した場合の評価である。

 体圧分散と通気性に優れた「三次元スプリング構造体」のシート。子どもの足を乗せられるフットステップなどを採用し、子どもの快適性に配慮されているのが特徴。

 幼児用の前面衝突試験は「良」、使用性評価試験では「19点」を獲得。


5位 「ネディアップ」 リーマン

JNCAP|チャイルドシート|安全性能評価|ランキング

使用期間目安:新生児~4歳頃(18kg以下)まで。価格:14,799円(税込)。

 幼児用チャイルドシートの5位「ネディアップ」は、新生児~4歳頃まで使用できる製品。乳児用の3位にもランクインしている。

 幼児用の前面衝突試験は「良」、使用性評価試験では「18点」を獲得。幼児用トップ5の中で唯一シートベルトで固定するタイプ。


 使用性評価試験の「取扱説明書等」の項目において満点となるには、「使い方動画」が必須であることが分かった。なぜなら、どんなに安全性能の高いチャイルドシートでも、使用方法を間違えてしまえば本来の性能を十分に発揮できないからだ。実際、 警察庁とJAFが2018年に実施したチャイルドシートの取り付け状況調査によると、取り付け方法や子どもの乗せ方に何らかの間違いがある「ミスユース」をしている割合が約60%もあったという。

 そして、使用性評価試験の評価が高いということは、使い方が分かりやすく、ミスユースをする可能性が低いということ。自分の車に適合した安全性能の高い機種を選ぶことはもちろん、使用方法が分かりやすい機種を使うことでミスユースをなくしたい。

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