2019年12月03日 10:50 掲載

旧車 吉田 匠の
『スポーツ&クラシックカー研究所』
Vol.01
ポルシェ911のご先祖様、「356」の話。


文・吉田 匠

1950年代後半のポルシェの代表的モデル、356A。右が標準スタイルのクーペで、左はボディを装備の簡潔なオープンにした軽量モデル、スピードスター。

1950年代後半のポルシェの代表的モデル、356A。右が標準スタイルのクーペで、左はボディを装備の簡潔なオープンにした軽量モデル、スピードスター。

ビートルから356、そして911へ

 実はポルシェ356には、ベースになったクルマがあった。父フェルディナントが設計したVWビートルである。ビートルは軽量コンパクトで効率のいい空冷水平対向4気筒エンジンをボディの後端に搭載して後輪を駆動する、4人乗りの小型車だったが、356も強固な鋼板製プラットフォームの後端に空冷水平対向4気筒エンジンを搭載して後輪を回すという基本構造を、そのまま採用していた。

 ただし、4人乗りのファミリーカーだったビートルと違って356はスポーツカーだから、ホイールベースはビートルより短縮され、低くて空力的なボディがデザインされて、エンジンもビートルよりもハイパワーを発生した。

1960年代前半の、356としてはほぼ最終モデルに近い1962年356B。実はこれは筆者のクルマで、2017年の秋、中部山岳地帯を走って京都から東京まで3泊4日で走破するラリーニッポンに出場したとき、フィニッシュ直前の横浜で撮ったカット。

1960年代前半の、356としてはほぼ最終モデルに近い1962年356B。実はこれは筆者のクルマで、2017年の秋、中部山岳地帯を走って京都から東京まで3泊4日で走破するラリーニッポンに出場したとき、フィニッシュ直前の横浜で撮ったカット。

ボディの後端に空冷エンジンを搭載したクルマであることがよくわかる356Bのリアスタイル。これも2017年ラリーニッポンで、雨の木曽、奈良井宿におけるシーン。

ボディの後端に空冷エンジンを搭載したクルマであることがよくわかる356Bのリアスタイル。これも2017年ラリーニッポンで、雨の木曽、奈良井宿におけるシーン。

 こうして生み出されたポルシェ356は、空気抵抗の少ない流線形を採り入れた2+2座のボディ、その後端に搭載された水平対向エンジン、といった後の911と同じ特徴を最初からすべて備えた高性能スポーツGTで、1951年のルマン24時間でクラス優勝したのを皮切りに、世界中のレースやラリーで大活躍した。

 356はその後マイナーチェンジを繰り返して進化しながら1964年まで17年間現役であり続けたが、実は僕はその後期モデル、1962年型356B 1600スーパーというモデルに今も乗っていて、旧いクルマのラリーやヒルクライムに出たり、週末に都内や郊外を走ったりして、愉しんでいる。

 空冷水平対向エンジンの排気量はたった1.6リッターで、パワーも75psしかないが、車重が900kgと軽いので意外なほど軽快な加速が手に入るのだ。

 で、この356の後継車として1963年に世に出たのがあのポルシェ911なのだが、次回はその911について書いてみたい。

吉田 匠(よしだ たくみ)PROFILE 吉田 匠(よしだ たくみ)
1947年、埼玉県生まれ。1971年、青山学院大学卒業直後、㈱二玄社に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集記者として入社。同誌ではスポーツカーのロードインプレッションなどを主に担当し、レースにも出場、優勝経験も数回あり。1985年、同社を退社し、フリーランスのモータージャーナリストに。『男は黙ってスポーツカー』、『僕の恋人がカニ目になってから』、『ポルシェ911全仕事』など、単行本多数。2018年以来、クラシックカー専門誌『CG classic』編集長を務める。