2020年04月15日 15:05 掲載

次世代技術 トヨタはなぜNTTとタッグを組むのか? 見えてきたトヨタのスマートシティ構想


文・会田 肇

トヨタの豊田社長は「社会システムに組み込まれたクルマを最も上手に活用できるパートナーがNTT」と述べた

トヨタの豊田社長は「社会システムに組み込まれたクルマを最も上手に活用できるパートナーがNTT」と述べた

トヨタがNTTをパートナーに選んだ理由

 ただ、これを実現するには、安全安心を必須とするクルマの場合、しっかりとしたハード設計がなければ難しい。幸いにしてトヨタが提供するハードには3つの大きな強みがあると豊田社長は語る。「ひとつは耐久性の良さであるDurability。次に交換部品の手の入りやすさを意味するParts Availability。最後に、修理のしやすさであるRepairability」。つまり、「ソフトがその都度、最新のものになり、ハードをより長期間使用することになれば、この3つの強みがより発揮されることになる」とし、これを評価して「協業相手のMaaS事業者もトヨタ車を選んでくれた」と豊田社長は話した。

 そして、もう一つの社会の流れとして豊田社長が語ったのが「くるまの役割の変化」だ。その例として掲げたのが2011年の東京モーターショーに出展した「Fun-Vii(ファン・ビー)」であり、2018年1月にCESで発表した「e-Palette」だ。特に「e-PaletteはTRI(自動運転を手掛けるトヨタの子会社)やトヨタコネクテッドとソフトウェアのエンジニアたちがクルマを作ったらどうなるかという新たな試みだった。それを走らせるために生まれた発想が"Woven City"であって、それはモノの見方や考え方を180度変えていくことを意味する」(豊田社長)という。

トヨタが静岡県裾野市に準備を進める「Woven City」。企業が独自に進めるスマートシティ構想は世界でも初の例となる

トヨタが静岡県裾野市に準備を進める「Woven City」。企業が独自に進めるスマートシティ構想は世界でも初の例となる

豊田社長は「クルマの進化は社会の進化と密接な関係を持つことになり、クルマが社会システムの一部になっていく」と述べた

豊田社長は「クルマの進化は社会の進化と密接な関係を持つことになり、クルマが社会システムの一部になっていく」と述べた

 豊田社長はこの実現によって、「(クルマは)有事の際は非常電源になり、ハザードマップなど、センサーを通じて社会に役立つ情報を提供できる。さまざまな可能性が生まれ、それ故にクルマの進化は社会の進化と密接な関係を持つことになる」と解説。Woven City構想ではe-Paletteだけでなく、ロボットやドローンを活用するほか、各家庭はネットワークで結ばれたセンサーを使って住民の健康管理にもつなげていく予定だ。ただ、その実現には「Woven City」など社会インフラの一体開発も欠かせない。その実現に向け、「社会システムに組み込まれたクルマを最も上手に活用できるパートナーがNTT」(豊田社長)というわけだ。

NTTとトヨタの提携によってもたらされるのは「すべての人に幸せを届ける」(豊田社長)ことにつながるとの考えを明らかにした

NTTとトヨタの提携によってもたらされるのは「すべての人に幸せを届ける」(豊田社長)ことにつながるとの考えを明らかにした

避けることのできないGAFAとの競争

 グローバルな観点で言えば、スマートシティにはGAFAや中国勢の参入も相次いでおり、今後はこの分野での競争が激化することは避けられない。記者会見で澤田社長は「(今回の提携は)ライバルとしてGAFAが念頭にある」と言い切った。その実現にあたって成果を左右しそうなのがデータの活用方法だが、今回の提携ではグーグルのようにデータを保有する形は採らない。豊田社長は「使ってもらう人が幸せになるやり方がいい」と語り、収集したデータについては、トヨタとNTTは保有せずに利用者や社会側に帰属する考えだ。

 豊田社長はWoven City構想の発表時に、この構想が多くの企業が参加できるオープンプラットフォームであることを強調した。トヨタとNTTはこの構想について海外での展開も視野に入れるが、重要なのはそのプラットフォームに参加しやすい形になっているかどうか。トヨタが持つ「つながる車」とNTTの情報インフラを組み合わせ、世界が注目するスマートシティの分野で主導権が握れるかは、両社が目指す今後の基盤作り戦略にかかっていると言えるだろう。

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