2019年05月29日 00:50 掲載

次世代技術 「クラリティ PHEV」は半EV!? ホンダの最新電動化技術にこってりと迫る【人とくるまのテクノロジー展2019】ホンダ編

5月22日から24日まで開催の、エンジニアのための自動車技術専門展「人とくるまのテクノロジー展」。ホンダは、「クラリティ PHEV」に搭載した、最新の2モーター・ハイブリッド・パワートレイン「SPORT HYBRID i-MMD Plug-in」を構成する主要機器を展示した。

JAFメディアワークス IT Media部 日高 保

 ホンダはここ数年で、プラグインHV(PHEV)車やEV、FCV(燃料電池車)などの環境車のラインナップを増やしている。国内でその最新車種となるのが「クラリティ PHEV」だ。「クラリティ」といえばFCVの「クラリティ FUEL CELL」のイメージが強かったが、2018年7月に「クラリティ PHEV」が登場。北米ではEVモデル「クラリティ EV」も発売されており、「クラリティ」はホンダの環境車部門を牽引するシリーズとなっている。

 ブースでは、そのパワートレインの「SPORT HYBRID i-MMD Plug-in」を構成する主要機器を展示。「高圧デバイス一体床下水冷インテリジェント・パワー・ユニット(IPU)」、「高出力ボルテージ・コントロール・ユニット(VCU)一体パワー・コントロール・ユニット(PCU)」、モーター/トランスミッションの3種類だ。

ZC5型「クラリティ PHEV」。全長4915×全幅1875×全高1480mm、ホイールベース2750mm、トレッド前1580/後1585mm。車重1850kg。排気量1496cc・直列4気筒DOHCエンジン「LEB-H4」、最高出力77kW/5500rpm、最大トルク134N・m/5000rpm。交流同期モーター「H4」、最高出力135kW/5000-6000rpm、最大トルク315N・m/0-200rpm。燃費JC08モード28km/L、WLTCモード24.2km/L。EV走行距離JC08モード114.6km、WLTCモード101.0km。サスペンション前・マクファーソン/後・マルチリンク(ウィッシュボーン)。ブレーキ前・ベンチレーテッドディスク/後・ディスク。車両価格588万600円(税込)。

前後席下に配置された「高圧デバイス一体床下水冷IPU」

ホンダ ハイブリッドシステム「IPU」

「クラリティ PHEV」の前席から後席までのフロア下に配置されている「高圧デバイス一体床下水冷IPU」。(1)ジャンクションボード(サブ)。(2)バッテリーモジュール。(3)ジャンクションボード(メイン)。(4)12V DC-DCコンバーター。(5)バッテリー制御基板。バッテリーの総電力量は17kWhだ。

 「高圧デバイス一体床下水冷IPU」はバッテリー、12V DC-DCコンバーター(※1)、バッテリー制御用ECUなどで構成されている。前席から後席までのフロア下に配置されているコンパクトさが特徴だ。

 小型化を実現するため、セル接続にバスバー(※2)を採用しバッテリーモジュールの全高を低減。またハーネスや12V DC-DCコンバーターをセンタートンネル内に集約することで、後席乗員の足下のスペースを確保することにも成功したという。これらにより、低全高のセダンとしてのフォルムを維持しながら、5人乗りのキャビン、リアシートのフォールダウン機構、荷室の広さなどが実現されたのである。

※1 DC-DCコンバーター:直流(DC)を機器内部の電子部品を動作させるのに必要な電源電圧に変換する装置のこと。
※2 バスバー:電源と接続するための導電性の棒状部品のこと

水冷システムもバッテリー小型化の大きなポイント

 そして、バッテリーおよび「高圧デバイス一体床下水冷IPU」全体の小型化に大きく寄与した特に重要な要素が、バッテリーの冷却方式として底面水冷方式を採用したことだ。

 空冷方式では、高出力化しようとすると、それに伴う発熱への対応でセル同士の隙間を空けなくてはならなくなり、容積の大型化を招いてしまう。それに対して水冷方式なら隙間を設ける必要もなく、バッテリーおよびIPU全体の小型化にもつながる。さらに、バッテリーの耐久性を高められるのだ。

(上)「高圧デバイス一体床下水冷IPU」の水冷システムの模式図。(下)冷却水の流れの模式図。電動ウォーターポンプから送り出された冷却水はバッテリー下部のウォータージャケットに供給され、さらに12V DC-DCコンバーターや充電器なども同様に冷却。一方、外部充電時などバッテリーの冷却が不要な場合は、三方弁を経由して冷却水をバイパスするようになっている。IPU冷却用のラジエターはフロント部分に設けられている。「クラリティ PHEV プレスインフォメーション」より。

ハイパワー化に対応しつつも小型化も実現した「高出力VCU一体PCU」

ホンダ パワー・コントロール・ユニット

ホンダ「高出力VCU一体PCU」。(1)コントロールユニット(1番上の基板)。(2)ゲートドライブ基板(2番目の基板)。(3)パワーモジュール(3番目の基板)。(4)磁気結合インダクター。

 ホンダでは、VCUとインバーター(※3)を一体化した装置を「PCU」と呼び、「クラリティ PHEV」のエンジンルーム内に搭載している。VCUは、バッテリーの電圧をモーターが要求する電圧にまで昇圧する装置だ。これによってより効率的な領域でモーターを動作させられ、さらにモーターの小型化と高出力化にもつながっている。

 課題はバッテリーの高出力化が進んでいることで、それに対応するにはVCU自体の出力も高める必要があった。しかし、VCUの高出力化はPCU全体の大型化につながってしまい、エンジンルームへの搭載が困難となってしまう。そこでホンダは高出力化を行う一方で、「磁気結合インダクター」(※4)の工夫により小型化を実現、「高出力VCU一体PCU」を開発することに成功したのである。

※3 インバーター:直流から交流にしたり、交流を周波数の異なる交流にしたりするための装置
※4 インダクター:電気を磁気の形で蓄えることが可能な電子部品

PCUの内部構造と、キーテクノロジーの磁気結合インダクターに関する解説。「クラリティ PHEV プレスインフォメーション」より。

パラレル方式もシリーズ方式も併用するホンダの最新ハイブリッドシステム

(左)「クラリティ PHEV」の2モーター構成のモーター/トランスミッションのカットモデル。カットされた部分にモーターのリング構造が見える。手前が発電用モーターで奥が走行用モーター。(右)モーター。リング状の緻密な構造は、「セグメント巻線ステーター構造」と呼ばれ、今回採用された新方式の構造。複合皮膜銅線による高密度巻線方式であり、従来型モーターよりも25%の小型化と23%の軽量化を実現した。また出力は9%、トルクは3%向上している。

 「クラリティ PHEV」のハイブリッドシステムは、走行用と発電用の2モーター方式を採用している。バッテリーが十分で、モーターの方が効率がいい状況では、EVのようにモーターのみで走行。しかもJC08モードで114.6km、WLTCモードで101.0kmと、EV走行の距離が延ばされており、ハイブリッド車としてクラス屈指のレベルとなっている。そしてバッテリーが少ないときはもちろんだが、エンジンの方が効率がいい高速クルージング時にはエンジン直結で走行する。

 エンジンとモーターを併用するときに2モーターが活用される。しかも、状況に応じて2種類のハイブリッド駆動方式が使い分けられる。ひとつはシリーズ型で、エンジンを最も効率のいい回転数で動作させて発電用モーターを回し、その電力で走行用モーターを駆動するというもの。もうひとつはパラレル型で、エンジンでタイヤを直接駆動しつつ、走行用モーターでアシストするのである。

 「クラリティ PHEV」は両方を使い分けられるので、シリーズパラレル型もしくはスプリット型に含まれる。

(左上)モーター/トランスミッション断面図。(右上)2モーター冷却システムの模式図。「クラリティ PHEV」では、EV走行距離の延伸に伴い、走行抵抗が増えないように工夫しつつ、出力軸側のオイルポンプの容量を拡大するなど、冷却系が強化されている。(左下)走行用と発電用のモーターのイメージ図。右は、従来のモーターの製法である「インサーター方式」と、今回の「セグメント巻線ステーター構造方式」を比較したもの。「クラリティ PHEV プレスインフォメーション」より。


ホンダ「Hondaにおける環境車への投入技術」

ホンダの環境車とコア技術の歴史。ZEVとは「ゼロ・エミッション・ビークル」のことで、一般的にEVのこと。PHEVはプラグインハイブリッド車、HEVはハイブリッド車。ICEとは内燃機関、つまりエンジンのこと。展示パネル「Hondaにおける環境車への投入技術」より。

 ハイブリッド車というと、アクセルを踏むとすぐにエンジンが作動する仕様になっていることが多い。しかし「クラリティ PHEV」は、外部充電さえ毎日しっかり行っていれば、街乗りだけならエンジンを使わなくても済みそうなほどである。EVに近い性能を有しているのが「クラリティ PHEV」であり、それを実現しているのが「SPORT HYBRID i-MMD Plug-in」なのだ。

 ホンダは2030年には、世界で販売するクルマの3分の2を電動化することを目標としている。先のようにも思えるが、2030年まではあと10年強。2020年代はホンダにとっても大きな変革が予感される、そんな展示であった。