2018年10月17日 00:01 掲載

ニュース・プラス 通常の3倍の耐疲労特性! “しなやかなカーボン”はクルマにも応用可能! どんな特徴があるの?

内閣府の科学技術・イノベーション政策の司令塔である総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラムのひとつとして、研究開発プログラム「超薄膜化・強靱化『しなやかなタフポリマー』の実現」が2014年にスタートした。ポリマー研究の第一人者である東京大学大学院新領域創世科学研究科物質系専攻の伊藤耕三教授をプログラム・マネージャーとした、オールジャパンともいうべき一大研究開発プロジェクトである。2019年3月で終了となるが、これまでに11のプロジェクトの下に合計33の研究課題が立ち上げられ、多くの成果を上げてきた。その研究課題のひとつが、2014年10月から2019年3月までの期間でもって行われている、東レを中心とした「車体構造用高靱性樹脂の開発」だ。CFRPのベースの熱硬化性樹脂もポリマーであることから、CFRPをしなやかにし、その弱点である耐疲労特性の向上を目指したのである。

 俗に"カーボン"などといわれる、炭素繊維強化プラスチック(CFRP ※1)は、樹脂に炭素繊維を加えて強化した複合素材だ。強さは鉄の10倍ほどもあるのに対し、重さはわずか5分の1ほどしかないという、高強度かつ軽量なことが大きな特徴である。航空宇宙分野で開発され、当初は非常に高価だったことから、自動車分野での利用は1980年代に入ってから、まずはF1などの最高峰クラスのモータースポーツから始まった。

※1 CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics

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CFRPは、かつてはF1のような、莫大な予算を利用できる最高峰モータースポーツでしか利用できなかったが、徐々にコストダウンも進み、今では多くのカテゴリーのレース専用車のボディがカーボン製となっているし、採用する市販スーパーカーも増えている。画像は、スーパーGTに参戦するホンダ「NSX-GT」。市販の「NSX」を改造しているのではなく、一から作られており、無塗装だとこのようにカーボン製なのがわかる。2017年の東京オートサロン・ホンダブースにて撮影。

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ボディがCFRP製の市販車として知られるBMWのEV「i3」。CFRPは軽量化にはもってこいだが、その分価格に跳ね返ってしまうという課題はある。同車はレンジエクステンダーを装備しないモデルが499万円(税込)。ジャパンEVラリー白馬2017にて撮影。

 クルマは軽量であればあるほど燃費がよくなることから、現在では、多くの部品がプラスチックに代表されるポリマー(高分子有機化合物)素材に置き換えられるようになってきた。しかし、それでも樹脂化率は一般的に10%台で、クルマを構成するパーツの多くは重量のある金属やガラスなどである。それらのパーツもすべてCFRPなどの樹脂に置き換えられれば、クルマを大幅に軽量化することができるはずだ

鉄の10倍ほどの強度があってもCFRPには弱点が

 しかしこれまでのCFRPでは、すべての金属製パーツに取って代わることのできない弱点が存在していた。一般的にCFRPのベースとなる樹脂には、加熱して硬化させることで剛性や強度に加え、耐熱性、耐薬品性といった機械的特性に優れるようになる「熱硬化性樹脂」と、熱を加えると柔らかくなる「熱可塑性樹脂」がベースに使われる。

 そのうち、熱硬化性樹脂の分子構造は網目状をしているのだが、網目の結合部分で固定されているため、分子の動きが制限されてしまっていた。そのため、繰り返し変形すると壊れやすいという弱点を抱えていたのである。つまり、サスペンションのスプリングのようなパーツには使えなかったというわけだ。

オールジャパン体制の研究で弱点を克服したCFRPが誕生

 こうした中、内閣府の科学技術・イノベーション政策の司令塔である総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT ※2)のひとつとして、研究開発プログラム「超薄膜化・強靱化『しなやかなタフポリマー』の実現」が2014年にスタートした。

ImPACT:Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program

 ポリマー研究の第一人者である東京大学大学院新領域創世科学研究科物質系専攻の伊藤耕三教授をプログラム・マネージャーとした、オールジャパンともいうべき一大研究開発プロジェクトである。2019年3月で終了となるが、これまでに11のプロジェクトの下に合計33の研究課題が立ち上げられ、多くの成果を上げてきた。

 その研究課題のひとつが、2014年10月から2019年3月までの期間でもって行われている、東レを中心とした「車体構造用高靱性樹脂の開発」だ。CFRPのベースの熱硬化性樹脂もポリマーであることから、CFRPをしなやかにし、その弱点である耐疲労特性の向上を目指したのである。

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CFRPにしなやかさを持たせることに成功!