クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2018.09.21 公開日:2018.09.21

「エネルギー循環型ごみ収集システム」を川崎市が日本初の実用化

全国各地のさまざまな自治体が公用車などにEVやFCV(燃料電池車)などを導入し、環境対策を進めている。そうした中、環境先進都市を掲げる川崎市が日本で初めて導入したのが、「電池(バッテリー)交換型EVごみ収集車」を初めとする「エネルギー循環型ごみ収集システム」だ。

180919-01-01.jpg

「電池交換型EVごみ収集車」。ベース車両は日産「アトラスF24」。ごみ収集を行う機構であるパッカー部分は極東開発工業が開発した。画像提供:川崎市

 川崎市は2016年3月から2017年2月まで、JFEエンジニアリングと共同で、「廃棄物発電」で得た電気でEVごみ収集車を走らせる「エネルギー循環型ごみ収集システム」の実証実験を実施。その結果、同システムが有効であるとの結論を得て、8月にJFEエンジニアリングと同システムを導入する契約を締結。まず「電池交換型EVごみ収集車」2台の運用を2019年2月から開始する(※1)。このEVごみ収集車は川崎市南部地域を担当する予定だ。

※1 2019年2月7日に第11回川崎酷さ環境技術展にて導入発表会が実施された(2019年4月12日に追記)

エネルギー循環型ごみ収集システムとは?

180919-01-02.png

エネルギー循環型ごみ収集システムのイメージ。発電のために燃やされる可燃ごみは、通常のごみ収集車が収集したものも使われる。これまではただ焼却されるだけだった廃棄物を燃料として発電し、その電気でEVごみ収集車を走らせるという、エネルギーの効率や環境的な面から優れたシステムだ。画像提供:川崎市

 廃棄物発電とは、ごみ焼却施設(川崎区浮島町の浮島処理センター)で可燃ごみを焼却することで得られる熱で水を沸騰させ、それによって発生する蒸気でタービンを回して発電するシステムのことだ。エネルギー循環型ごみ収集システムでは、そうして得られた電気を敷地内の電池ステーションに送り、「電池交換型EVごみ収集車」用のバッテリーを充電する。

 「電池交換型EVごみ収集車」のバッテリー交換はわずか3分ほど。しかもボタンをひとつ押すだけの自動式だ。これによりバッテリー切れの問題を解消でき、再びごみ収集に素早く向かうことができる。1日当たり1~2回の交換を想定しているという。

180919-01-03.jpg

電池ステーション。全高は4mほどあり、全長は5mほど。アームに吊り下げられているのがバッテリーだ。バッテリーの全長は1m以上、全高も1m近くあり、重量は約300kgと大きく重い。電圧は350V、総電力量は40kWhのリチウムイオン電池。画像提供:川崎市

→ 次ページ:
川崎市が導入した理由と「電池交換型EVごみ収集車」のスペック

川崎市はどのような理由から導入を考えた?

 川崎市がエネルギー循環型ごみ収集システムの導入を決定した理由は、まずCO2やNOxを排出しない地球環境に優しいEVごみ収集車を日本全国に広めていくためだ。また、低炭素社会化に貢献していくためでもある。

 現在、川崎市では142台のごみ収集車が稼働している。3台目以降の導入については、今回の2台の導入効果などを検証しながら、今後検討していくとしとしている。

 また、川崎市はエネルギー循環型ごみ収集システムを災害時に非常用電源としても活用する計画だ。

180919-01-04.jpg

電池交換型EVごみ収集車と電池ステーション。この通り、電池ステーションの全高は「電池交換型EVごみ収集車」の2倍ほどある。画像提供:川崎市

実証実験はどんな内容だった? そしてスペックは?

 実証実験においては、平地や坂道の走行性能、気象条件(特に夏と冬の気温)の影響、ごみ積載量が電力消費に与える影響など、各種データが収集された。総走行距離は、延べ日数70日で約2000kmに及んだという。

 この実証実験のフィードバックを経て、バッテリー交換型が運用上望ましいことから、今回の形で実用化された。「電池交換型EVごみ収集車」のベース車両は日産の小型トラック「アトラスF24」(実証実験時の車両のベース車両も「アトラスF24」)。ごみ収集車のベース車両としては一般的ではないが、今回はJFEエンジニアリングが同車を選定した。EV化などの車体改造はオートワークス京都が担当。また、バッテリーはオートモーティブエナジーサプライ製だ。スペックは以下の通り。

【電池交換型EVごみ収集車・スペック】
全長×全幅×全高:5030×1900×2050mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(前/後):1415/1450mm
最小回転半径:4.4m
最大積載量:1400kg
車両総重量:5250kg
タイヤサイズ
 前:185/70R16 105/103LLT
 後:195/65R16 106/104LLT
車体改造:オートワークス京都

【モーター・スペック】
種類:三相交流同期モーター
最高出力:80kW
最大トルク:280N・m/2730rpm
最大回転数:10000rpm
冷却方式:水冷式
回生制動:あり
駆動方式:2WD

【バッテリー・スペック】
メーカー:オートモーティブエナジーサプライ
種類:
リチウムイオン電池
総電圧:350V
総電力量:40kWh
全長×全幅×全高:1084×282×927mm
重量:300kg

【パッカー・スペック】
メーカー:
極東開発工業
型式:GB37-820DF-S
荷箱容量:3.7立方m
駆動動力:伝導油圧ユニット
積み込み方式:回転式
排出方式:ダンプ式

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(4月30日まで)
応募はこちら!(4月30日まで)