【動画で見る衝突安全性能試験その4】JNCAP歩行者保護性能評価試験
2種類ある「歩行者保護性能試験」の内、「頭部保護性能試験」を受けるダイハツ「ウェイク」。衝撃装置よりフロントウィンドウに向けて発射されているのは、ヒトの頭部を模したダミーの「頭部インパクタ」。
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年発表している「自動車アセスメント(JNCAP)」。最新となる平成28年度の、予防安全と衝突安全の評価結果はこれまでお伝えしてきたとおり(関連記事は最終ページ末でまとめて紹介)。
『JNCAP衝突試験動画シリーズ』最後となる第4弾は、「歩行者保護性能評価試験」だ。
頭部保護性能試験とは?
歩行者保護性能評価試験は、衝突した歩行者に対して、そのクルマがどれだけ被害を軽減できるかの性能を評価するためのものだ。
試験には「頭部保護性能試験」と「脚部保護性能試験」の2種類がある。
頭部保護性能試験は、歩行者がクルマに乗り上げてボンネットやフロントウィンドウなどに頭部を打ち付けてしまったことを想定したもの。それらボンネットやフロントウィンドウなどに対し、細かくポイントを分けて硬さが調べられる。
具体的には、ヒトの頭部を模したダミーの「頭部インパクタ」を衝撃装置より時速40km(自動車の衝突速度に置き換えると時速50kmに相当)で発射して、各衝撃点(インパクタを打ち付ける衝突ポイントのことで、おおよそ10か所、多いクルマではその2倍以上にもなる)における頭部の傷害値を計測して、5段階で評価するという内容だ。
歩行者との衝突事故の際に条件が重なると、跳ね上げられて車体上に落下、ボンネットやフロントウィンドウに頭部を打ち付ける可能性がある。クルマが固いと、それが致命傷となりかねない。
脚部保護性能試験とは?
そしてもうひとつの脚部保護性能試験は、歩行者の脚部がバンパーなどに衝突したことを想定したものだ。
具体的には、成人男性の脚部を模したダミーの「脚部インパクタFLEX-PLI」を、衝撃装置を用いて時速40kmでバンパーに向けて発射させ、衝撃点におけるヒザやスネの傷害値を計測して、5段階で評価するというものだ。
歩行者との衝突事故の際、まず真っ先に歩行者と接するのはフロントバンパー。同じ速度で事故を起こしたとしても、バンパーがどれだけ衝撃を吸収・緩和できるかで、歩行者の脚部の負傷度合いが変わってくる。
平成28年度の試験を受けた9車種
平成28年度の試験を受けたのは以下の9車種。カッコ内はメーカー名。その後ろの数字は、頭部および脚部の歩行者保護性能評価。5段階評価で、最高が5だ。またカテゴリーごとにページを分け、下記一覧からリンクを張ってある。
軽自動車
・ウェイク(ダイハツ)/頭部3:脚部5
・キャストシリーズ(ダイハツ)/4:4
コンパクトカー
・イグニス(スズキ)/4:5
・パッソ(トヨタ)/ブーン(ダイハツ)/4:3
セダン
・インプレッサ(スバル)/5:5
・プリウス(トヨタ)/4:5
ミニバン
・ヴェルファイア(トヨタ)/4:5
・セレナ(日産)/4:5
・フリード(ホンダ)/4:5
軽自動車編:「ウェイク」&「キャスト」
まずは軽自動車から紹介する。平成28年度の試験を受けた軽自動車は、ダイハツの「ウェイク」と「キャスト」シリーズの2車種だ。なお、ウェイクは「ピクシス メガ」として、キャストシリーズは「ピクシスジョイ」シリーズとして、トヨタにOEM供給されている。
ダイハツ「ウェイク」
フードやフードヒンジ、フェンダー、ワイパーピポット、カウルなどに衝撃緩和装置・吸収スペースを設けている。
ダイハツ「キャスト」シリーズ
ウェイク同様に、フードやフードヒンジ、フェンダー、ワイパーピポット、カウルなどに衝撃緩和装置・吸収スペースを設け、歩行者保護性能を高めている。
コンパクトカー編:「イグニス」&「パッソ/ブーン」
続いては、コンパクトカーを紹介。スズキ「イグニス」と、トヨタとダイハツが共同開発した「パッソ/ブーン」を紹介だ。
スズキ「イグニス」
カウルトップ、ワイパー、フードヒンジ、フードパネル、フロントバンパーに衝撃吸収構造を持たせている。
トヨタ「パッソ」/ダイハツ「ブーン」
トヨタとダイハツの共同開発だが、実際の開発はダイハツによる。フードやフードヒンジ、フェンダー、ワイパーピポット、カウルなどに衝撃緩和装置・吸収スペースを設けている。
セダン編:「インプレッサ」&「プリウス」
セダンはスバル「インプレッサ」と、トヨタ「プリウス」だ。なお、スバルのSUV車「XV」はセグメントは異なるがインプレッサの兄弟車扱いとなっており、同様に「プリウスPHV」もプリウスと兄弟車として扱われている。
スバル「インプレッサ」
国産車初となる頭部保護機能「歩行者保護エアバッグ」により、9車種中で唯一の頭部保護性能評価でレベル5を獲得した。
トヨタ「プリウス」
近年のトヨタおよび他社の最新モデルの例に漏れず、バンパーやボンネットなどに衝撃を緩和する構造を採用している。
ミニバンは「ヴェルファイア」と「セレナ」と「フリード」
最後はトヨタ「ヴェルファイア」、日産「セレナ」、ホンダ「フリード」の、ミニバン3車種を紹介。なお、ヴェルファイアには兄弟車としてトヨタ「アルファード」が、フリードにはホンダ「フリード+」があり、セレナはスズキに対して「ランディ」としてOEM供給されている。
トヨタ「ヴェルファイア」
ボンネットやフェンダーなどは頭部への衝撃を緩和する構造、バンパーは脚部への衝撃を緩和する構造を採用。
日産「セレナ」
近年の日産および他社の最新モデルと同様で、ボンネットなどに衝突時の衝撃エネルギーを吸収させる構造を持たせている。
ホンダ「フリード」
衝撃時の衝撃を制御する衝突安全設計ボディ「G-CON(G-Force Control Technology)」は、他車や歩行者との接触時に相手に与えるダメージを軽減するようにも作られている。
2017年7月26日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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