三菱ふそうの大型観光バス「エアロクィーン」&「エアロエース」、ダイムラーの技術を導入してモデルチェンジ!
今年は、「ポスト・ポスト新長期規制」と呼ばれる大型トラックやバスの新しい排出ガス規制、平成28年排出ガス規制が本格的に始まる年だ。そのような中、三菱ふそうは5月15日、新規制に対応するとともに、過去にユーザーの信用を失い兼ねないトラブルを起こした同社が「日本市場において再びリーダーを担うための試金石」として、千葉県浦安のエクセル航空浦安ヘリポートにおいて、大型観光バス「エアロクィーン/エアロエース」並びに大型トラック「スーパーグレート」を披露した。
まずは、日本でも利用台数がトップクラスの、「エアロクィーン」並びに「エアロエース」から紹介する。約10年ぶりのモデルチェンジとなるが、外見は先代を踏襲して大きく変えていない。ただし、中味は大きく変わっている。
2019年2月にマイナーチェンジが行われ、その情報は最終ページに加筆した(2019年5月9日加筆)。
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日本初となる大型観光バス全車に装備された機能!
全車8段機械式自動変速トランスミッション「ShiftPilot」標準装備!
最大の特徴は、国内で初めて大型観光・高速路線バスの全ラインナップに自動変速トランスミッションを標準装備したこと。8段機械式で、「ShiftPilot(シフトパイロット)」という。
ShiftPilotは路面状況、勾配、乗車定員による総重量の変化などに応じて、プログラムに従って変速操作を自動的に行う。これによりドライバーはクラッチペダルおよびシフトノブの操作から解放され、ステアリングとアクセル、ブレーキの操作に集中でき、運転時の負担が軽減されるというわけだ。
省燃費に最適なギアをセレクトする「オート」、シフトアップ時にエンジン回転数が高めになる「ダイナミック」、手動の「マニュアル」の3モードが選択でき、ステアリングコラム左側にあるマルチファクションレバーの内側にあるダイヤルを回す仕組みなので、ステアリングから大きく手を離さずに操作を行える。またセミオートマの要領で、マニュアルモードにすれば同レバーを上下させることでドライバーによるシフトチェンジが可能だ。
ダイムラー製の制御技術を日本用にチューニング
変速プログラムや制御システムはダイムラーの技術が使われているという。ただし、日本の道路環境を考慮したチューニングが施されており、それにより1速ごとに息の長いゆとりのある加速を実現しているとした。あらゆる速度域において滑らかなシフトフィーリングとなるように注力したという。
そのほか、乾式クラッチのハーフクラッチ状態をきめ細かく制御することで、トルクコンバーターを用いた普通車のATミッションのようなクリープ走行も実現。
「エアロクィーン」/エースの試乗を100社ほどのバス運行会社のドライバーがすでにしているそうだが、その多くのドライバーからShiftPilotは好評を博しているとした。
【ShiftPilotスペック】
トランスミッション形式:G250-8
ギヤ段数:オーバードライブ(OD)付き前進8段(シンクロメッシュ式)/後退1段
変速比:6.570/0.632(OD)
540kgもの軽量化に成功した新型エンジン「6S10(T2)」
「エアロクィーン」/エースには、新開発の平成28年度排出ガス規制に適合した直列6気筒7.7L「6S10(T2)」型ディーゼルエンジンが搭載されている。小型ターボ(高過給)と大型ターボ(低過給)による2ステージターボチャージャーも備えており、低速域での応答性能と、高速域での力強さを両立させたという。小排気量ながら大型観光バスに必要な出力特性と低回転域からのトルク特性を実現したというわけだ。
従来型の直列6気筒12.8L「6R10」型より大きく進化した点は、540kgという大幅な軽量化だ。その上、燃焼室形状の最適化、高圧噴射コモンレールシステム(240MPa)の搭載などにより低燃費化も実現。平成27年度重量車燃費基準+15%を達成した。全車がエコカー減税の免税対象となっている。
排出ガスに関しても新システムが搭載され、よりクリーン化が図られた。燃焼特性を極限まで昇華させることでエンジンそのものから排出される粒子状物質(PM)を低減。さらに新開発の「新BlueTecシステム」(再生制御ディーゼル微粒子捕集フィルター+尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元))によってPMと窒素酸化物(NOx)を除去。これによりと排出ガスの低公害化を実現したという。
【6S10スペック】
排気量(ボア×ストローク):7697cc(110mm×135mm)
バルブ型式:直列6気筒 DOHC 24バルブ
定格出力:280kW/2200rpm
最大トルク:1400N・m/1200-1600rpm
衝突被害軽減ブレーキ「ABA3」は第2段階規制に適合
安全面では、従来の「AMB(Active Mitigation Brake)2.0」から進化させた衝突被害軽減ブレーキ「ABA(Active Brake Assist)3」を装備。2019年11月から施行される性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキ規制に適合している。
ミリ波レーダーにより先行車や停止車両を認識し、衝突の危険性をシステムが認識すると、まず警報ブザーとディスプレイ表示でドライバーに回避を促すところから始まる。その後、警告としての限定的なブレーキがかかり、さらに警報ブザーを発報すると共に強いブレーキという、近年乗用車でも普及が進んでいる3段階で作動する衝突被害軽減ブレーキと流れは同じだ。
なお、同時に発表された大型トラックのスーパーグレートには、ABA4が搭載されている。こちらは歩行者の検知も可能だ。大型観光バスは大型トラックほど歩行者との事故が多くないことから、「エアロクィーン」/「エアロエース」では搭載していないそうである。
このほか、ドライバーの運転操作を監視し、居眠りや脇見運転などを警報する「MDAS-III(エムダススリー)」の発展型である「アクティブ・アテンション・アシスト」、横滑り防止機能「ESP(Electric Stability Program)」、ACC(Adaptive Cruise Control)の機能強化型の「プロキシミティー・コントロール・アシスト」、運転席バイブレーター警報付きレーン逸脱警報「LDWS(Lane Departure Warning System)」なども搭載。
ちなみに、三菱ふそうは独ダイムラーグループの傘下であることから、車両の制御システムおよびパワートレインをダイムラー・バス部門と共用化している。具体的な技術としては、排出ガスの新BlueTecシステムとESPなどが、ダイムラーグループの技術だ。また、将来の自動運転化も視野に入れているという。
「エアロクィーン」の最上級モデルは5000万円弱!
価格(東京地区)は、以下の通り。
●エアエロクィーン Premium Line(2TG-MS06GP(Q)):4960万7600円(税込)
●「エアロエース」 Premium Line(TG-MS06GP(H)):4364万6000円
グレードは、「エアロクィーン」が2種類、「エアロエース」が3種類。
●エアロクィーン:スタンダード「Pro Line」、最上級「Premium Line」
●「エアロエース」:ベーシック「Eco Line」、スタンダード「Pro Line」、最上級「Premium Line」
また、「エアロクィーン」、「エアロエース」は以下のタイプがラインナップされる。タイプによって座席数などが変わる形で、例えば通常だと11~12列で60人なのが、夜行路線用は10列で30人乗りとスペースを重視した形となる。
●「エアロクィーン」:観光、一般、夜行路線
●「エアロエース」:観光、一般、昼行路線、夜行路線、空港路線
発売は2018年1月から。「エアロエース」の「Eco Line」からまず発売される予定だ。。
最後は、「エアロクィーン」と「エアロエース」の内外観を掲載しよう。
2019年2月にマイナーチェンジを実施してより安全性がアップ!
「エアロクィーン」と「エアロエース」は、2019年2月にマイナーチェンジを実施。安全運転支援系の3種類の新機能を標準装備し、またエクステリアデザインも変更された。
新機能の目玉となるのが、国内の大型観光バスでは初の採用となる、「アクティブ・サイドガード・アシスト」。ドライバーの死角となりやすい左側面を監視する安全運転支援システムだ。また、歩行者検知機能も追加された衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト4」(ABA4)と、ドライバーの異常時に安全にバスを停車する「ドライバー異常時対応システム」も搭載された。
それらに加え、稼働中のバスのリアルタイム情報(車両位置、ルート、安全運転状況など)を、沿革の運行管理者に提供する「バスコネクト」を装備。ドライバー異常時対応システムやABA4が作動した際は、運行管理者に緊急連絡が入る。
外見に関しては、ロービーム/ハイビーム、ポジションランプ、フォグランプをLED化。さらに「ふそうブラックベルト」デザインを採用し、アップデートされている。(2019年5月9日加筆)
2017年5月18日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
2019年5月9日に加筆