銀座線・新1000系の最後の2編成は旧1000系により近い内外装に
新1000系の最後の2編成は特別仕様となり、日本最初の地下鉄車両である旧1000系のイメージにより近づけた内外装となる。
上野や銀座、日本橋、表参道などを経由し、浅草と渋谷を30分強でつなぐ日本で最も歴史のある地下鉄、東京メトロ・銀座線。
同路線は、1983年から導入が始まった01系の車両から、90年前の開通時の車両である旧1000系をイメージした新型車両の新1000系へのリプレースを12年1月から順次実施中だ。
今回のリプレースは、16年から18年までの3か年中期経営計画「東京メトロプラン2018」に沿って行われているもの。17年12月30日に開業90周年(当初は浅草~上野間をつないだ)を迎える銀座線は、「伝統×文化の融合」という路線コンセプトを軸に現在リニューアル計画が進められており、車両のリプレースはその一環だ。
90年前の開通当時の車両、旧1000系。無数のリベット、波打った表面、厚い塗装、直線で構成されたデザインなどに時代を感じられる。東京メトロ・東西線の葛西駅からすぐの高架下にある「地下鉄博物館」で展示中。
銀座線の最新車両、新1000系。さすがに、安全性や利便性の面から、そっくりそのままとはいかないが、色使いや細部のデザインが似せてあり、雰囲気はある。
1000系通常仕様と比較した特別仕様の変更点
銀座線のリニューアル計画は12年から始まっており、22年までに全駅の改装やホームドアの設置、渋谷駅の移設工事、新橋駅の大規模改良などが予定されている。従来の01系車両から新1000系へのリプレースは、17年1月中旬に最後の2編成(39・40編成)が運行を開始して完了となる。
この最後の2編成の新1000系は、通常時の運行でももちろん使用されるが、17年中に実施が予定されている地下鉄開通90周年イベントなどでの使用も考慮されており、外装・内装ともさらに旧1000系のイメージに近づけた特別仕様となっている。
通常仕様のものも最初からこの特別仕様にすればより旧1000系らしくていいのではないかと思うが、同社広報に確認したところ、イベントなどで使用する以上、特別感を出すため、あえて2編成のみをこのデザインにしたとしたという。
新1000系通常仕様からの変更点は以下の通りだ。
【外装】
1.前灯:LEDを2灯から1灯に
2.車両前面の窓周り・突き当て座など:塗装を変更
3.側面出入口:塗装を変更
4.窓中柱・窓枠:塗装を変更
5.窓下のデザイン:ウィンド・シルを模擬したものに変更
6.車体側面デザイン:ヘッダーを模擬したものに変更
7.車体側面乗務員室ドア:握り棒・開閉ハンドルの塗装を変更
8.尾灯:形状の変更
※ウィンド・シル、ヘッダー…旧1000系はリベット止めで車体が製造されており、当時のそうした技術で窓枠やドア周辺の強度を確保するために使用されていた補強部品。
新1000系の特別仕様の外装に関した、通常仕様からの変更ポイント。
新1000系特別仕様の内装に関する通常仕様からの変更点
新1000系通常仕様の内装は、21世紀の最新車両というデザインだが、特別仕様の内装は外装以上に旧1000系の雰囲気に近づけられている。
【内装】
1.室内灯:調色機能の追加
2.吊り革(吊り手):旧1000系で採用されていたリコ式風の形状に変更
3.手すり・握り棒:真鍮色に変更
4.予備灯:新設(イベント用)
5.号車・製造者銘板:デザイン変更
6.荷棚・窓枠・腰掛け部・床:配色の変更
新1000系特別仕様の内装は旧1000系の内装にかなり近づけてある
なかなか通好みなのが、予備灯が新設されるところだ。40歳前後から上の世代の方なら、懐かしく感じるのではないだろうか。
銀座線は、架線からパンタグラフを通して得る方式ではなく、第三軌道と呼ばれる3番目のレールから電力を受ける方式が採用されている。この第三軌道は、特にポイント部分において車両に電力を送れない、デッドセクションが生じやすい点がデメリットのひとつとなっている。
現在の新1000系や、01系ではそのようなことはないのだが、それよりも以前の車両は製造が戦前となるため、そのデッドセクションの影響をとても受けていた。旧式の車両は車両ごとに電力を受けているため、デッドセクションの通過時に、先頭車両から順番に数秒間ずつ車両ごとに停電してしまうのだ。その時に点灯していた小型の照明が予備灯というわけである。
デッドセクションは、上り線と下り線をポイントで移る時などに特に生じる。例えば、銀座線の始点である浅草駅に渋谷駅方面から来て1番線ホームに到着する時や、同駅の2番線ホームから渋谷へ向かって出発する時などだ(どちらも上り線から下り線に移るため)。
新1000系特別仕様では、それを再現できるようにということで、イベント用として予備灯が設けられたというわけだ。同社広報の話では、正式決定ではないが、90周年記念のイベントでは予備灯の点灯を再現するイベントも計画されているそうである。また具体的には未定だが、そのほかのイベントでも再現イベントを行いたいとしている。
左が予備灯。40歳前後から上の世代には、懐かしいはず。右は号車・製造者銘板のイメージ。アラビア数字(1139)はもちろん左からだが、その下の黒い部分の文字は右から左へ書かれているという、戦前風にしてある細かさ。ちなみに、JAF救援コールは「#8139」である。
旧1000系と新1000系の通常&特別仕様の車内比較
新1000系特別仕様の内装は、配色が旧1000系に似せてあるため、通常仕様と比較して雰囲気がかなり異なり、レトロ感がある。配色によってイメージが大きく変わるのがわかる、好例ではないだろうか。
旧1000系の車内。木製でぬくもりがとてもある感じだ。この吊り革(吊り手)が、リコ式と呼ばれるもの。なお、かつて革製だったため吊り革と一般的に呼ばれていて浸透しているが、現在は革製ではないため、正式には吊り手とされる。
特別仕様の車内のイメージ。窓のサイズやドアの形状、天井の空調機器など、構造的には通常仕様と比較して違いはないが、配色が旧1000系に似せてあるため、レトロ感がある。
新1000系通常仕様の車内イメージ。普通に21世紀の最新車両である。清潔感はバツグンだが、特別仕様を見た後だと、少々味気なさを感じてしまうかもしれない。
なお、新1000系の特別仕様は、通常の運行でも使用されるとはいっても、必ず毎日この時間帯を決まって走る、とはならないそうである。40編成の内の2編成ということなら、最悪同じ駅で39編成目にはやってくるかというと、そういうことでもないらしい。
その日ごとに異なり、点検・整備に入ってしばらく走らない日などもあるため、近年は各地で特別ラッピングの車両が少数編成だけ走ってるが、それらと同じで「乗れたり・見られたりしたらラッキー」な車両になるというわけだ。
17年1月中旬以降に銀座線を利用される際は、前面上部の前灯が2灯か1灯か、または車内の配色を見て、ぜひ特別仕様かどうかを識別していただきたい。
2016年11月24日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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