クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2018.06.28 公開日:2018.06.28

ガソリンベーパー問題の最前線を特集。(1/4)

なんちゃってエジソン」で、体当たりの実験や地道な調査をこなしてきたあのライター横内が帰ってきた! 

今度は、かっこいいジャーナリストを目指して、社会問題や世の中の気になる新たな動きに、取材で切り込んでいきます。


横内信弘の「だってジャーナリストなんだもん!」第1回目のテーマはガソリンベーパー問題です。ガソリンスタンドへ行ったことのある方なら、だれもが感じたことのあるガソリン臭。実はあの臭いの元を断つために、国や地方自治体、さらに最先端技術を有する民間企業などが一丸となって、対策を進めているのです。

 ガソリンベーパーの何がそんなに問題なのか? そして、具体的な対策とは? ガソリンベーパー問題の最新情報を4部にわたって紹介。取材によりすべてをつまびらかにします! まずその1部では、ガソリンベーパー問題の基礎知識をおさらいします。

知らず知らずのうちに吸引してしまっているガソリンベーパー。あの臭いが好きな人もいるけどね。

 ガソリンスタンドへ行ったことがある人なら、誰もが体験したことがある独特の臭い。一部の自動車愛好家からすれば「あの臭いが好き」「当たり前の臭い」なのかもしれませんが、苦手な人も多いのではないでしょうか。臭いの元は、実は蒸気となって空気中を漂うガソリンそのものなのです。

 この空気中をただようガソリンの蒸気(Vapor)のことを「ガソリンベーパー」と言います。私たちが臭いを感じるということは、ガソリンベーパーを知らず知らずのうちに吸引してしまっていることを意味します。

 ガソリンが気化して大気に拡散してしまうのは仕方のないことなのでしょうか。吸引した場合人体に影響はないのでしょうか?

 このガソリンベーパー問題について、ライター横内が行政の対策や民間企業が研究・開発した最新技術について取材しました。

→ 次ページ:
どれくらいのガソリンが出て行くのか

年間で「満タン給油約260万回分のガソリン」が大気に拡散されている。

 その前に、まず、気になるのは、どのようにして、どのくらいの量のガソリンベーパーが、ガソリンスタンドから大気に拡散しているのかという点です。

 環境省の報告書によると全国のガソリンスタンドから年間約10万トンものガソリンが気化し、大気に拡散されているというのです。ガソリンが、ガソリンスタンドに運ばれてきて、まず、タンクローリーから地下のガソリン貯蔵タンクに移されます。このガソリンの荷卸し時に発生するガソリンベーパーの占める割合が全体の約35%、約3万5000トン分です。そして残りの約6万5000トン分約65%が、クルマのガソリンタンクの給油時に気化拡散しています。

ガソリンスタンドにおけるガソリンベーパー排出量(環境省「平成28年度揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリ検討会」報告書より、平成27年度のVOC排出量推計結果)

 10万トンという量が、ちょっとピンと来ないので、単位を給油の際におなじみの「リットル」に換算してみましょう。石油連盟のホームページによると、自動車用ガソリンの比重は「0.72~0.76」とのことなので、仮に0.75で計算してみます。比重が1の水なら10万トンは10万キロリットル。水より軽いガソリンの場合は、およそ1.3倍の13万キロリットルとなります。これを給油1回の満タンの量、仮に50リットルとして割ってみると、なんと満タン給油約260万回分! 年間この量のガソリンが大気に拡散しているのです。なんだかもったいない気もします。

ガソリンベーパーは、PM2.5や光化学オキシダントとなって環境を破壊する。

 もったいないだけではありません。これだけのガソリンが大気中に排出されていることは、環境面、そして人体の健康面から考えても問題があります。そういえば、「なんちゃってエジソン」でも暑い日のロケで、お昼すぎから光化学スモッグ警報が発令され、ロケを中止したことがありました。モニター実験に協力してくれた小学生の健康被害を懸念したからです。

 空気中を漂うガソリンベーパーは大気汚染物質のひとつであるVOC(揮発性有機化合物)であり、太陽光と反応すると、PM2.5(微小粒子状物質)となったり、光化学オキシダントの原因物質となります。

 社会問題化している「PM2.5」とは、粒子が非常に小さい汚染物質のことで、肺の奥深くにまで入り込みやすく、呼吸器系や循環器系などの疾患リスクを上昇させると考えられています。特にお年寄りや子どもなどは影響を受けやすいそうです。

 「光化学オキシダント」は大気中の濃度が高まると、白くモヤがかかったような状態になります。これがいわゆる「光化学スモッグ」です。

PM2.5や光化学スモッグ発生のメカニズム。イメージ図(資料提供:神奈川県)

 さらにガソリンベーパーは、ガソリンスタンドから排出される年間10万トンに加えて、走行中の車や駐車中の車からも排出されているんです。

 ガソリンベーパーの問題は、世の中に知られていない割には、あまりに大きすぎる問題ではないでしょうか??

 ということで、全国の自治体の中でもガソリンベーパー問題に積極的に取り組んでいる、神奈川県を取材することにしました。

何が問題なのかお分かりいただけたところでその2へ続きます。

2018年6月28日(ライター 横内信弘)

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)