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クルマ最終更新日:2017.12.15 公開日:2017.12.15

夏タイヤは冬に減る。菰田潔。冬タイヤの話

P1010273使用.jpg 知っているようで実は知らないタイヤの話。その基本から最新事情まで今回から3回に分けてお届け!

●夏タイヤは冬にたくさん減るって知ってた?

 クルマを買うと標準で付いてくるタイヤが夏タイヤ。そして、雪道用としておもに雪国で冬になると履くのがスタッドレスタイヤで、これを一般的に冬タイヤと呼んでいる。スタッドレスタイヤなら雪道でもアイスバーンでも無理しなければ走ることができる。

 東京のように、たまにしか雪が降らない非降雪地帯に住んでいるドライバーは、雪が降ったら冬タイヤに替えようと考えるのが一般的だろう。しかし近年ヨーロッパでは考え方が変わってきた。雪が降るか降らないかではなく、気温が7℃以下になったら冬タイヤを履くというものだ。

 ドライ路面では、夏タイヤより冬タイヤの方がグリップが弱いということは知られていると思う。ところが、気温が下がってくると、ドライ路面でも夏タイヤよりも冬タイヤのほうがしっかりグリップするようになるのである。このことは、ほとんど知られていない。この、夏タイヤと冬タイヤの優位性が逆転する気温が7℃。夏タイヤは冷えて温度が下がるとゴムが硬くなりグリップが弱くなってしまうためだ。冬タイヤは冷えてもしなやかさを保つゴムを使っているので、冷たいドライ路面でもグリップが落ちてこないのである。

 100km/hから急ブレーキをかけたときの制動力を比較すると、気温が7℃以下になると冬タイヤに比べて夏タイヤの制動距離が延びてしまうというデータもある。

 また雪もないのに冬タイヤを履いたらタイヤが減るからもったいないと思っている人も多くいる。実は夏タイヤは寒い冬にこそ摩耗がより進む、という事実があるのだ。雪がないからといって冬季に夏タイヤで走っているとタイヤが減りやすいから逆に損をしていることになる。

 以上のことから、夏タイヤから冬タイヤに履き替える目安は、雪が降ったらではなく、気温が7℃を下回るようになったらと考えると分かりやすいだろう。

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オールシーズンタイヤって何?

オールシーズンタイヤって何?

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左からスタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤ、夏タイヤ。刻まれている模様(トレッドパターン)が大きく異なる。スタッドレスタイヤは、細かい切れ込み(サイプ)が数多くあり、これが氷上(アイスバーン)の水を吸い上げ、水膜をなくすことで滑りやすい氷でもグリップ力を発揮する。逆に夏タイヤ は細かい切れ込みが少ない強いゴムのブロックによって乾いた路面でしっかりグリップする。またハイドロプレーン現象が起こらないように太い溝で排水性をよくしている。

 最近オールシーズンタイヤの人気が高まっている。夏タイヤでも冬タイヤでもない、その名の通りオールシーズンで使えるタイヤだ。アスファルト舗装の上では、晴れていても雨が降っていても、夏タイヤに近いそこそこのグリップ力を発揮してくれる。雪道ではスタッドレスタイヤに近い走破性を持つ。アイスバーンではスタッドレスタイヤほどグリップはしないが、夏タイヤよりはグリップ力を発揮する、そんなタイヤだ。

 オールシーズンタイヤのメリットは冬になったら冬タイヤに、春になったら夏タイヤに交換する手間がかからないことだ。さらに冬に夏タイヤを保管する、あるいは夏に冬タイヤを保管する必要がないから、タイヤの置き場所に頭を悩ませる必要もない。

 オールシーズンタイヤを履く場合、ABSやESC(横滑り防止装置)などの安全装備があるクルマにはお勧めできる。グリップの限界を超えそうになったときにコンピュータ制御によって助けてもらえるからだ。

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 スノーフレークマーク(写真上)があれば、高速道路の冬タイヤ規制のときでも走ることができる。

 逆に走れそうで走れないのがSUVに装着されているM+Sタイヤだ。マッドアンドスノーの略なのだが、実は雪道には弱いタイヤだ。スタッドレスとかスノーフレークのマークが側面に書いていないタイヤ以外は、冬タイヤ規制の高速道路は降ろされてしまうから注意。実際の規制時に降ろされるかどうかは、自治体の判断に委ねられているので、降雪や凍結が予想される地域に出かける場合は、道路会社等に予め確認したほうが無難だ。

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他に冬にお勧めのタイヤってある?

高性能車におすすめのタイヤはこれだ!

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 もうひとつ冬タイヤと呼ぶことができるタイヤがある。それはヨーロッパで履かれているウインタータイヤだ。ドイツのアウトバーンを200km/hオーバーで走ることもできる冬タイヤである。タイヤに書いてあるスピードシンボル(速度記号)がV(240km/h)やW(270km/h)というもの。日本では必要ないスピード域だが、100km/h以下で走るときでもしっかり感があるので、高性能車にマッチするタイヤだ。現在、偏平タイヤのサイズが一部輸入されている。

 日本でも非降雪地帯を走るスポーツカーやハイパフォーマンスプレミアムカーの場合は、雪やアイスバーンではない普通のアスファルトを走ることのほうが多いだろう。そんなケースではスタッドレスタイヤだとグリップ力不足を感じてしまう。タイヤのしっかり感が不足してクルマの特性が生かせないからだ。そんなクルマにはウインタータイヤがお勧めだ。

(その2へ続く)

2017年12月15日(モータージャーナリスト 菰田潔)

菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。 自動車レース、タイヤテストドライバーを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / 一般社団法人 全国道路標識・表示業協会 理事 / NPO法人 ジャパン スマート ドライバー機構 副理事長 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター / 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。

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