[菰田潔]唐突ですが、ドイツの走り方教えます。アウトバーン編(全3回:2/3)
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今回は、クルマ好きなら誰もが走ってみたいと思う道路「アウトバーン」の走り方を中心に解説する第2回目。第1回目はコチラ。
ドイツの制限スピード
まず、ドイツの速度制限について、大原則をお話ししておこう。村や町も含めて市街地地域では50km/h、村や町が終わって郊外になると100km/hになる。そしてアウトバーンの推奨が130km/hということだ。ちなみに、他国と地続きで接しているので、国境を超えたところに各国の基本的な速度制限が表示されている。
村や町が終わったことは、村や町の名前に斜線がかかると村域外・町域外に出たことを示す印だ。始まりは斜線のない村や町の名前で、ほとんどが黄色い標識である(上写真は村や町の始まり)。
アウトバーンの速度無制限について
日本ではアウトバーンは速度無制限と思っている方が多いが、実は日本的な考え方の無制限とは少し異なる。
アウトバーンには130km/hという推奨スピードがある。これを超えて走る場合は、事故を起こさないという安全が確保されている必要がある。例えば追い越し車線(右側通行だから一番左側のセンターライン寄りの車線)を走っているときに右側の走行車線からクルマが出てきてぶつかった場合、130km/h以下なら、右側から出てきたクルマに非があるが、もし130km/h以上で走っていた場合には追い越し車線側のクルマにも適正なスピードでなかったと違反が取られる可能性もある。ここが単なる速度無制限ではない部分なのである。
また、アウトバーンにも速度制限がかけられる区間がある。登り坂や下り坂で大型トラック、トレーラーがスピードを出せなくなる場所で追い越す側の乗用車のスピードを落とすためだ。写真の区間は100km/hに制限されている。
住宅がそばにあるアウトバーンでは、夜間だけ速度制限されるケースがある。スピードの標識の下側に制限される時間が記されている。橋の上などは横風が強く吹くとクルマが不安定になるので、制限速度の標識が出ている場所もある。
これらは常時課せられる速度制限であるが、工事区間などそのときだけの制限速度もある。そこに近づくと130km/h、100km/h、80 km/hと順に落としていくから、しっかりと標識を見て、スピードメーターで確認しながらブレーキを踏まなくてはならない。
雨の日だけの速度制限もある。速度表示の下に「bei Nässe(バイネッセ)」と書いてあれば、路面が濡れているときだけの速度制限である。こんな場所は水捌けの悪い舗装なので制限速度を超えて走ろうとするとフラつくから気をつけること。路面のミューが低い場合もあるし、タイヤが浮いてハイドロプレーンが起きやすい状態の場合もあるからだ。
制限が解除される場合は「丸に斜線」の標識が出る。特定の制限が解除される場合にはその標識が薄く表示された上に解除標識が出るから見逃さないようにしよう。
車間距離や追い越しについて
車間距離は2秒以上
車間距離は一般道でもアウトバーンでも先行車との間隔を2秒以上取ることが義務付けられている。100km/hのときには1秒間に約28m進むので、2秒では最低56mの車間距離が必要だ。56mを目測するのは難しいので、先行車が通過した場所からゼロ、イチ、ニと2秒カウントしたときに自分がそこを通過すればよい。これは、50km/hでも、100km/hでも、200km/hでも測り方は同じだ。
アウトバーンでは途中にある陸橋の上からスピードを測り、カメラで撮って、道路の路肩に書かれた目盛りで距離を測定してあとから検挙されることもあるから気をつけよう。結果的にはこれが自分の安全を確保することにも繋がる。
追い越し・追い抜きは左側から
アウトバーンでは追い越しは左側からだけに限定される。日本では許される追い抜き(同一車線のまま抜くこと)も、渋滞時を除き禁止されるから注意が必要だ。
もし、右側から追い越しや追い抜きをしようとしたときに左から車線変更してきたクルマとぶつかった場合には、0:100で右側追い越しや追い抜きをした側が悪くなる可能性もある。
走行車線と追い越し車線
片側2車線の道なら、ドイツは右側通行だから右側が走行車線、センターラインに近い左側が追い越し車線なのはすぐに分かるだろう。片側3車線の道では日本と異なり、一番右側の車線だけが走行車線で、中央と左側の2車線が追い越し車線になる。
追い越しが終わったらただちに走行車線に戻らなくてはならない。走行車線に戻れる状況なのにいつまでも追い越し車線を走っていると取り締まりを受ける。追い越ししないで1km走ると、もしパトカーがいたら検挙されるだろう。
車線の標示や出口について
車線
・白色実線と白色破線
通常の車線を区切るのは白色の破線である。ここは車線変更が可能である。白色の実線の区間もある。ここは車線変更が禁止される区間だ。
実線と破線が2本並んで表示される区間もある。これは破線側から実線側に車線変更することは可能だが、実線側から破線側には車線変更できない。片側1車線の一般道のセンターラインでも共通で、追い越し禁止か可能かがセンターラインの実線か破線かでわかる。ここまでは日本と同じだ。
ランプウエイから本線に合流するところでも実線と破線が使い分けられている。最初は実線でランプウエイから来てすぐには合流できない。しばらく加速車線でスピードアップすると破線に変わるから、そこで本線に合流する。
・黄色線
臨時の線は黄色線で表示される。工事などで本来の白色の線通りに走れない場所では、新たな規制線として臨時に黄色が使われる。これも実線と破線の意味は白色と同じである。黄色線があっても、白色線も残っているから、この場所では白色線は無視して、黄色線だけを見れば良い。
出口=Ausfahrt
アウトバーンの出口には「Ausfahrt=アウスファート」という標識が出る。ここでは基本的に50km/hまで制限速度が落とされることを想定して減速車線でしっかりスピードメーターを見ながらブレーキをかけなくてはならない。
出口の何kmか手前からその町の名前の標識が出てくるが、300m手前から遠くからでもわかりやすい標識が出る。斜め線が3本なら300m手前、2本なら200m、1本なら100mだから分かりやすい。
本線上のスピードが速いから、思ったより早くインターチェンジが近づいてくるので、早めに走行車線に移っておいた方がいい。
(その3(10/23配信予定)へ続く)
2017年10月16日(モータージャーナリスト 菰田潔)
菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。 自動車レース、タイヤテストドライバーを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / 一般社団法人 全国道路標識・表示業協会 理事 / NPO法人 ジャパン スマート ドライバー機構 副理事長 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター / 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。