2022年08月31日 20:00 掲載

クルマ F1パワーユニットを製造する「HRC Sakura」ホンダモータースポーツ活動の心臓部を取材:Super GT編

2022年8月2日にホンダは、栃木県さくら市にあるF1パワーユニット(F1PU)の製造やSuper GT用マシンの開発、Super Formulaのエンジン開発を行う施設「HRC Sakura」の一部をメディアに公開した。今回は「Super GTマシンの開発」をクローズアップ。

くるくら編集部 小林 祐史

3メーカーが激しいチャンピオン争いをするSuper GT

風洞実験設室に置かれたNSX-GT

風洞実験設室に置かれたNSX-GT 写真=小林祐史

 Super GTは、スポーツカーやスーパーカーなどのGTカーをベースにしたレーシングカーが参戦するレースだ。日本国内で開催されているレースで一番人気でもある。その最高峰クラスのGT500には、トヨタ、日産、ホンダの3メーカーが開発したレーシングカーによって激しいチャンピオン争いを繰り広げている。

 このGT500は、レーシングカー同士のパフォーマンスの均衡を保つため、マシンに関するレギュレーションに特徴がある。例えばボディの要となるCFRP製モノコックや、トランスミッション、ドライブシャフト、ECU等の電子部品、リアウイングなどは全マシンが共通のものを使用する。エンジンも排気量2000cc、直列4気筒、燃料直噴シングルターボで、年間で使用できるエンジン基数も2つまでと定められている。

 このようなレギュレーションに加えて、レースで上位に入賞したマシンにはバラスト(重り)の搭載や、エンジンに送り込む燃料を絞る燃料リストリクターによって性能調整(BoP)も行われている。これらによってレースでは接戦が生じやすくなり、順位争いが常に白熱する工夫が凝らされている。

HRCのSuper GT開発フロー図

HRCのSuper GT開発フロー図 写真=小林祐史

 このGT500に参戦するホンダNSX-GTの開発は、HRC Sakuraで行われている。しかし前述のようにSuper GTはレギュレーションで共通部品となっている部分が多く、ライバルに対してアドバンテージを築けるような開発は限られた範囲に限定されているのだ。

CDFと風洞実験で空力開発

HRC Sakuraの空力開発フローの概念図

HRC Sakuraの空力開発フローの概念図 写真=ホンダ

 HRC Sakuraで行われるNSX-GTの空力開発の流れとしては、PC上のComputational Fluid DynamicsCFD/数値流体力学/流体解析)を活用して形状を選定し、それを試作し風洞テストで確認するというものになっている。ちなみに風洞テストで測定しているのはドラック(空気抵抗)とダウンフォース(車を下に押し付ける力)で、テストが行われる風洞設備内の実験室や車に設置したセンサーで計測している。


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時速280Km台を再現する風洞実験設備を紹介

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