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クルマ最終更新日:2022.01.27 公開日:2022.01.27

WRC最年長優勝者に!47歳ローブ80勝目。開幕戦ラリー・モンテカルロ

2022年の開幕戦ラリー・モンテカルロは、WRC史上マイルストーンとなる1戦だった。まずトップカテゴリーが、WRカーからハイブリッド車の「ラリー1」に変更されたこと。そして、元チャンピオンであるセバスチャン・ローブが最年長記録を更新して優勝を遂げた。その歴史的な1戦を、モータースポーツライターの入江大輔が伝える。

文・入江大輔(モータースポーツライター)

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元王者VS現王者。2人のセバスチャンが優勝争い

優勝をMスポーツのスタッフと喜ぶセバスチャン・ローブとコドライバーのイザベラ・ガルミッシュ

優勝をMスポーツのスタッフと喜ぶセバスチャン・ローブ(トロフィー右の人物)とコドライバーのイザベラ・ガルミッシュ(トロフィー左の人物) ⓒJaanus Ree / Red Bull Content Pool

 1月20日から23日にかけて、2021年シーズンの世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロが開催され、Mスポーツ フォードからフォード プーマ ラリー1で参戦したセバスチャン・ローブが勝利を飾った。2位にはトヨタのセバスチャン・オジエ、3位にはMスポーツ フォードのクレイグ・ブリーン。トヨタの勝田貴元はコースオフを喫しながらもラリーを走り切り、8位入賞を手にしている。

2位となったセバスチャン・オジェとトヨタGRヤリス ラリー1

2位となったセバスチャン・オジェとトヨタGRヤリス ラリー1 ⓒJaanus Ree / Red Bull Content Pool

ハイブリッド11台によるWRC

左からフォード プーマ、ヒュンダイi20 N、トヨタGRヤリスのハイブリッドラリーカー

左からフォード プーマ、トヨタGRヤリス、ヒュンダイi20 Nのハイブリッドラリーカーたち。WRカーと同様の最高出力380馬力以上の1.6リットルのターボエンジンに、最高出力100kw(約134馬力)、最大トルク180Nmを発生するモータージェネレーター(MUG)を組み合わせている。 ⓒJaanus Ree / Red Bull Content Pool

 今回のモンテカルロは、1997年のWRカー導入以来となる、マシンレギュレーション大変革初戦となった。WRC史上初となるハイブリッドラリーカー「ラリー1(Rally 1)」が、トヨタから4台、Mスポーツ フォードから4台、ヒュンダイから3台と、合計11台が勢ぞろいしている。

 ラリー1規定車両は1.6リッターターボに、各チーム共通となるドイツのコンパクト ダイナミクス社製ハイブリッドパワートレインが組み合わせられた新型パワーユニットを搭載。各チーム共に市販車ベースではなく自由度の高いパイプフレームをチョイスし、それぞれトヨタGRヤリス、ヒュンダイi20 N、フォード プーマのエクステリアをまとったニューマシンを投入することになった。

ラリー1のハイブリッドシステム充電器

Mスポーツの充電設備。ラリー1のハイブリッドシステムはブレーキ時の回生(充電)も行うが、プラグインハイブリッドなので外部電源による充電も可能となっている。車に搭載されるバッテリーは3.8kwh 写真=Mスポーツ

47歳331日のローブが優勝

セバスチャン・ローブがドライブするフォード プーマ

セバスチャン・ローブがドライブするフォード プーマ ⓒJaanus Ree / Red Bull Content Pool

 ラリー1の初実戦となったのは、ドライターマック、スノー、アイスとコンディションが刻一刻と変わり、WRC随一の難しさを誇るモンテカルロ。ラリーがスタートすると、最大500馬力発揮し、従来のWRカーとは全く異なるドライバビリティを持つラリー1のコントロールに多くのドライバーが苦しめられることになる。その中で、僅差の優勝争いを繰り広げたのが、新旧チャンピオンのセバスチャン・ローブとセバスチャン・オジエだった。

 序盤から僅差のバトルを繰り広げていたふたりだったが、徐々にペースを上げたオジエが、21.1秒というリードを持って最終日を迎える。ところが、SS16でオジエが左フロントタイヤにパンクを喫して、大幅にタイムロス。これでローブがオジエをかわすと、そのままトップフィニッシュを果たした。ローブは2018年のカタルーニャ以来となる、自身80勝目を記録。さらに、47歳331日での勝利は、ビヨルン・ワルデガルドが持っていた46歳155日というWRC最年長優勝記録を更新している。

 モンテカルロの直前までサウジアラビアの砂漠でダカール・ラリーを戦い、2位表彰台を獲得。そこからモンテカルロへと直行し、雪と氷のラリーを戦ったローブは、「最高にうれしいよ! こんな結果になるなんて想像もしていなかった。優勝争いをできただけでなく、最後に勝つことができたからね。あらためて、素晴らしいマシンを用意してくれたチームには、心から感謝している」と、フィニッシュ後に喜びを語った。

フル参戦2年目の勝田貴元は痛恨のコースオフ

2022年の開幕戦は8位だった勝田貴元

2022年の開幕戦は8位だった勝田貴元 ⓒJoerg Mitter / Red Bull Content Pool

 4台目のGRヤリス ラリー1をドライブした勝田は、少しずつニューマシンに慣れながらペースを上げ、土曜日のデイ3の段階で5番手に浮上。しかし、降雪・凍結区間のあったSS13で痛恨のコースオフ。さらに側溝にはまりスタックしてしまう。周囲の観客の助けを借りてなんとか復帰を果たしたものの、これで13番手までポジションを落としてしまった。それでも最終日は2度の3番手タイムを刻むなど、ペースを取り戻し、最終的に8位を得た。

 「ブレーキング時のちょっとしたミスで、ラリー全体が台なしになってしまい、とてもガッカリしています。ただ、それを除けば、良い内容のラリーでした。新しいクルマについて多くを学び、どのようにドライブするのがベストか、ハイブリッドのパワーをどのように使ったら良いのかを理解できるようになりました」と、勝田は収穫を語っている。

ラリー1に苦労するチャンピオン候補たち

ヒュンダイ勢で唯一トップ10に入ったティエリー・ヌービル

ヒュンダイ勢で唯一トップ10に入ったティエリー・ヌービル ⓒJaanus Ree / Red Bull Content Pool

 ラリー1という完全なニューマシンで戦われた今回のラリー、上位2名はスポット参戦のドライバーとなり、選手権を争うドライバーの最上位は、3位に入ったMスポーツ フォードのブリーンとなった。一方、チャンピオン候補と目されていたトヨタのエルフィン・エンバスは21位、ヒュンダイのティエリー・ヌービルは6位、オット・タナックはリタイアで、それぞれがトラブルやアクシデントに見舞われた。

<WRC第1戦ラリー・モンテカルロ リザルト>

優勝 セバスチャン・ローブ/イザベラ・ガルミッシュ (フォード) 3時間00分32秒8
2位 セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス (トヨタ)  +10 秒5
3位 クレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル (フォード) +1分39秒8
4 位 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ) +2分16秒2
5 位 ガス・グリーンスミス/ジョナス・アンダーソン (フォード) +6分33秒4
6 位 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ) +7分42秒6
7 位 アンドレアス・ミケルセン/トシュテン・エリクソン (シュコダ) +11分33秒8
8 位 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ) +12分24秒7
9 位 エリック・カイス/ペトル・テシンスキー (フォード) +12分29秒2
10 位 ニコライ・グリアンジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ) +13分41秒3

・車名の後に※があるのはラリー2

<2022年WRCカレンダー>

第2戦ラリー・スウェーデン 2月24日(木)~27日(日)
第3戦クロアチア・ラリー 4月21日(木)~24日(日)
第4戦ラリー・ポルトガル 5月19日(木)~22日(日)
第5戦ラリー・イタリア サルディニア 6月2日(木)~5日(日)
第6戦サファリ・ラリー・ケニア 6月23日(木)~26日(日)
第7戦ラリー・エストニア 7月14日(木)~17日(日)
第8戦ラリー・フィンランド 8月4日(木)~7日(日)
第9戦 未定 8月18日(木)~21日(日)
第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ 9月8日(木)~11日(日)
第11戦ラリー・ニュージーランド 9月29日(木)~10月2日(日)
第12戦ラリー・スペイン 10月20日(木)~23日(日)
第13戦ラリー・ジャパン 11月10日(木)~13日(日)

・カレンダーは124日時点のもの


各チームのハイブリッドラリーカーの詳細な写真は
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