オリジナル・ミニをポール・スミス氏がお洒落な電気自動車(EV)に再生!
登場から半世紀以上経たオリジナル・ミニが、ファッション・デザイナーのポール・スミス氏の手によって現代に蘇った! 一体どんなクルマに仕上がったのか。モータージャーナリストの小川フミオが解説する。
オリジナル、だけど新しい
私がずっと”いつかは乗りたい”と思ってきたクルマが、なにを隠そう、オリジナル・ミニ。みなさんよくご存知のとおり、1959年に登場した英国のスモールカーだ。ポール・マカートニーも乗ったし、マーク・ボランも乗った。名前を聞けば誰でも分かるアイコン的なモデルだ。
魅力は、市街地での使い勝手のよさと、扱いやすいボディサイズだ。ストローク感に乏しいサスペションシステムのせいでよく跳ねるし、ドライブトレインもローギアで、高速ではギアが足りないと思うこともしばしば。それでも、なんだかいいんだよなあ。
いまのミニ(ブランド)自身、このヘリティッジを大切しているようだ。折りに触れて、過去からの繋がりを盛んに喧伝。2022年6月には、ポール・スミス氏を起用して、”新しい”ミニを作り上げてしまった。
日本にもファンの多いファッション・デザイナー、ポール・スミス氏が、今回、手がけたのは、オリジナルを電気自動車化した「ミニ・リチャージド」の内外装デザイン。
ポール・スミス・ブティックで扱っているシャツの同系色にした車体色をはじめ、ホイールやグリルなどの外装に加え、金属やウッドを多用し、質感を強調した内装が目を惹く。
スミス氏と組んだのは「リチャージド・ヘリティッジ(Recharged Heritage)」。古いミニを電気自動車化したり、パーツを販売するビジネスを展開しはじめた会社で、いまのミニブランドを傘下におさめるBMWとは無関係とされている。
いまっぽいミニ
スミス氏は、1998年に限定販売されたミニ・ポール・スミス・エディションを手がけた実績を持つ。今回の「ミニ・リチャージド」を彷彿とさせる車体色など特徴がいろいろあって、日本でも正規販売されて人気を呼んだ。
さらに、2021年にスミス氏は、現在ミニのヘッドオブデザインを務めるオリバー・ハイムラー氏とともに、「ミニ・ストリップ Mini Strip」なるコンセプトモデルを作り上げている。
ボディ構造が外部に透けて見えるような凝ったデザインで、実際に販売したら人気が出そうだが、あいにく「サステナブル・コンセプトカー」(ミニの表現)にとどまっている。「ミニ・リチャージド」も、サステナブル・コンセプトを引き継いでいるそうだ。
「このクルマは3つのキーワードで説明できます」。スミス氏の言葉がミニのプレスリリースに記されている。「クオリティ、サステナビリティ、それにファンクショナリティ(機能性)です」。
スミス氏は、自動車好きとしても広く知られているひと。それだけに、オリジナルを設計したアレック・イシゴニスの仕事に、大きなリスペクトを払っているという。
「オリジナル・ミニに手を入れるといっても、私に言わせれば、おばさんの家に足を踏み入れるようなもので、リスペクトがなくては、自分勝手に装飾品を置き換えたりしてはいけません。ちょっと、いまっぽい要素を持ち込むのに留めなくては」
ミニ・リチャージドには72kWの出力を持つ電気モーターが搭載されている。全長3055mmで、車重が600kg台というオリジナル・ミニには充分すぎるほどの性能だろう。あのカタチがどうしても忘れられないというひとは、ぜひ販売して、と言うにちがいない。