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最終更新日:2022.05.12 公開日:2022.05.12

レクサスのEV「RZ」とマツダのPHEV「CX-60」。2種の試作SUVに乗ってみた!

いま注目すべき2台のSUVがある。ひとつはレクサス初のピュアEV「RZ」。そしてもうひとつがマツダが「ラージ商品群」の第一弾として販売を予定している「CX-60」だ。いったい、どのようなクルマなのだろうか。発売間近のプロトタイプ(試作車)を小川フミオが試乗した。

文=小川フミオ

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EVで攻めるレクサス、FR&直6で攻めるマツダ

レクサス RZ|Lexus RZ

マツダ CX-60|Mazda CX-60

 クルマは多くの段階を踏んで製品化される。開発の最終段階に近くなると、プロトタイプ(試作車)が出来上がる。量産車に近い仕様だ。先日、そんな発売間近のクルマに試乗する機会を得た。

 しかも今回は、レクサス初のピュアEV「RZ」と、マツダが「ラージ商品群」と位置づけるまったく新しいSUVという、濃い内容だった。レクサスRZとマツダのラージ商品群。どちらも、発売に向けて興味をもつひとが多いモデルなのではないかと推測する。実際、プロトタイプに乗って、私は感心した。

 ピュアEVのレクサスRZ(メーカーでは「アールズィー」と読む)と、新開発のエンジン(モーターではない)を搭載した大きめサイズのマツダ「ラージ商品群」。後者についてもう少し具体的に説明すると、これからどんどん(おそらく)出てくるであろう、大きめサイズの後輪駆動ベースのSUVが、マツダのラージ商品群ということになる。今回、プロトタイプで試乗したのは、22年初秋発売予定の「マツダCX-60」だ。

 結論から言うと、ピュアEVに興味あるひとは、レクサスRZの登場を待ちなさい。乗り心地が快適なSUVを探しているひとは、マツダCX-60を待ちなさい。なんて言いたくなるほど、好印象な仕上がりだった。

「プロトタイプに乗ったひとの意見を集約しながら、最終的に完成させます」(レクサス)というが、プロトタイプより印象が悪くなるクルマはまず存在しない。レクサスもマツダも、量産車への期待が高まる。

 RZは、バッテリー駆動のいわゆるピュアEV専用のプラットフォーム(車台)を使った、レクサス発のピュアEV専用モデルだ。2022年4月20日にプロトタイプの詳細が公開されているが、私はそのクルマを愛知県のテストコースで試乗した。

レクサスらしいEVとは?

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は71.4kWhで、航続距離は約450km(J-WLTCモード)を開発目標値としている。

 RZは、全長4805mm、ホイールベース2850mmと、けっこう余裕あるサイズのボディを持ち、電気モーターを前後に載せた全輪駆動。モーターは、前輪用が150kW(204ps)、後輪用が80kW(109ps)だ。たとえば、22年5月12日発売のトヨタ「bZ4X」の全輪駆動仕様は前後ともに80kWなので、RZのほうがパワフルなのは数値から推して知れる。

 プロトタイプながら、RZは完成度が高い、とすぐに思った。ひとつはスタイリング。おそらく完成車に限りなく近いのだろう。フロント部分のマッス(かたまり)と、後輪を中心としたマッスが力強く組み合わさったような造形である。SUVというよりもっとスポーティな雰囲気の、いわゆるクロスオーバービークルだ。

「シャシー技術で、EVならではの楽しさが生み出せます」。RZのチーフエンジニアを務めている渡辺剛氏が、現場で私に教えてくれた。そこに留意してプロトタイプを運転してみて欲しい、という。

 走り出しは、暴力的な加速感はない。すっと、おだやかに発進して、そのあとは、するするっと気持ちよく速度がのっていく。カーブや車線変更では、ステアリングホイールを操ると、車両はすぐさま、ドライバーである私の意図を汲み取るかのように、反応よく動いてくれる。

プロトタイプのインテリア。特徴的なデザインのステアリングが目を引く。

 RZの走りがいいのは、「DIRECT4(ダイレクトフォー)」と名づけられた前後の駆動力制御システムが組み込まれているからだと渡辺氏は説明してくれた。「走りのコンセプトは”The Natural(ナチュラル)”で、それをドライバーの方に味わってもらうため、運転状況や路面の状態に応じて、前後輪のトルク(車輪を回転させる力)を変化させるシステム」だそうだ。

 その働きが顕著にわかるのがカーブ。体感的にはたいへんスムーズで、軽快な動きに感心する。じつは上記「DIRECT4」が働き、カーブにさしかかっていくときは、75対25から50対50の間で前後のトルク配分を調節している。カーブの出口に向けて加速するときは、50対50から20対80となる。アクセルペダルを踏みこむと後輪にトルクがかかって、強い力で車体を押しだしてくれるのだ。

 しっかりした走りのために、ボディに補強を入れるなど、いわゆる剛性をうんと上げている。これもRZの特徴だ。ブレーキの効きも、制動力が高いだけではない。操作性が繊細なのだ。ここで止まりたいと思った位置に、ぴたりとズレなく止まってくれる。電気自動車では、これが意外に難しかったりするのだ。

 電気自動車なんて誰が作っても同じになる、と巷ではよく言われているが、実際はそうではなく、”わかっているひと”が手がけると、ガソリンやディーゼルにはない特性を走りに活かした味付けのクルマになる、という。レクサスの主張に説得力を感じさせる出来栄えで、まだプロトタイプの段階でも十分印象的だった。

レクサスは2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインアップを実現し、2035年にはグローバルでBEV100%の販売を目指している。

FRのマツダ車は走りも上々!

ロードスターと同じエンジン縦置き方式×後輪駆動ベースのレイアウトを採用するCX-60。人馬一体の楽しいドライブ体験をドライバーに提供する、とマツダは説明する。

 もう1台は、22年4月7日に発表された「CX-60」のプロトタイプ。車体寸法は、全長4740mm、全幅1890mm、全高1685mmで、ホイールベースは2870mm。ちなみにCX-5は、全長4575mmで、ホイールベースは2700mmなので、CX-60のほうがひと回り大きい。私が九州のテストコースで乗ったプロトタイプは、黒いフィルムが全体に貼られた仕様だったため、サイズ感がつかみにくかったが、室内にはたしかに空間的余裕があった。

 このクルマが話題になっているのは、新開発のエンジンゆえ。目玉は3.3リッターの直列6気筒ディーゼルエンジンだ。これにマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を組み合わせた仕様もある。そのほか、2.5リッター4気筒ガソリンエンジンと、同エンジンに充電式のプラグインハイブリッドシステム(PHEV)を搭載した仕様もあり、エンジン構成だけでなんと4タイプもあるのだ。

 試乗したプロトタイプは、日本市場でのフラッグシップになる6気筒ディーゼルMHEV。それと、2.5リッターの4気筒ガソリンPHEVだ。どちらも、軽くアクセルペダルを踏んでいるだけで、力がたっぷりと感じられ、気持ちよく走れる。ただし、回せば回すほど気分がいい、という感じとは違う。

「スポーティさを追求して(ドイツメーカーの直列6気筒エンジンのように)エンジンの性格を作り込んでいくと、燃費に影響が出てしまいます。それを念頭にシリンダーヘッドを設計したり、新設計のオートマチック変速機を組み合わせたりしています。排気量を(よくある3リッターでなく)3.3リッターにしたのも、あまりアクセルペダルを踏み込まなくても力強い加速が得られるから。つまり、燃費のためです」

 マツダにおいてパワートレイン開発の総指揮を担当する廣瀬一郎専務執行役員はそう語ってくれた。

2.5リッターの4気筒ガソリンPHEVモデルは、電力だけで60kmまで走行が可能だ。

 数周、自分のペースで走ってみたところ、エンジンに加えて私が感心したのが乗り心地だ。まったくいやな上下動がない。いってみれば、ビシッとしている。上質というか高級というか、乗り心地がとてもいい。

 これもじつはマツダのエンジニアの自慢。足まわりの設計にも「キネティックポスチャーコントロール」と呼ばれる、新サスペンションシステムが採用されているのだ。車体が上下に揺れるピッチングを起こさないよう、後輪に微小に制動をかけ、車体の浮き上がりを抑えてくれるという。

 テストコースでは、プロトタイプゆえ、車体はまだ黒いフィルムで覆われていた。それが剥がされるのがいつになるか、私にはわからない。いずれにしても、長距離ドライブとか、箱根のような観光地とかに乗っていってみたい。この段階でも、そう期待させる内容だった。

日本での販売開始は今年初秋を予定している。

写真提供=レクサス・インターナショナル
写真提供=マツダ

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