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クルマ最終更新日:2021.06.28 公開日:2021.06.28

勝田が日本人27年ぶりのWRC表彰台!サファリ・ラリーで2位に

アフリカの赤い大地をラリーカーが疾走するサファリ・ラリーは、モータースポーツの代名詞でもあったイベントの一つ。そのサファラリーがWRC(世界ラリー選手権)に19年ぶりに復活した。そのサファリで、勝田貴元が自身WRC初表彰台となる2位を記録。27年ぶりに日本人がWRCの表彰台に立つ快挙を、モータースポーツライターの入江大輔が伝える。

文・入江大輔(モータースポーツライター)

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19年ぶりのサファリ・ラリーは現役ドライバー全員が初体験

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サファリ・ラリー初日のSSを走る勝田貴元 写真:トヨタ

 2021年62427日に開催されたWRC(世界ラリー選手権)第6戦サファリ・ラリー・ケニアにおいて、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの育成ドライバー、勝田貴元がトヨタ ヤリスWRC2位表彰台を獲得した。日本人ラリードライバーが、WRCにおいて表彰台を獲得するのは、1994年サファリ・ラリーでの篠塚建次郎以来の快挙となる。

 今シーズン、2002年以来のWRCカレンダー復活を果たしたサファリ・ラリー。19年ぶりのWRC復活はFIA会長に就任したジャン・トッドや、WRCセーフティ委員長を務めるミッシェル・ムートンの後押しがあったといわれている。日産、三菱、トヨタが覇権を争った197080年代、サファリは「車の耐久性」をアピールする絶好の場だった。しかし、1990年代に入ると、アフリカでの勝利が販売促進のPRとして重要性を失い、さらに市場としてもけして大きくないアフリカでのWRC開催は、多くのチームから「費用ばかりかかる面倒なイベント」として認識されてしまう。

 さらに、WRCのフォーマット化に合わせてルートを短縮した結果、肝心な冒険としての魅力まで失い、2002年を最後にWRC開催を断念することになった。しかし、前述のようにかつてのサファリの魅力を知るトッドやムートンのプッシュもあり、2020年にWRCカレンダーへの復帰を果たした。しかし2020年は新型コロナウイルスのパンデミックにより中止を余儀なくされたものの、今年はついに開催の運びとなった。

赤い大地にトップドライバーが次々と飲み込まれる

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サファリ・ラリー3日目のSSをタイムアタックする勝田 ©Jaanus Ree / Red Bull Content Pool

 今回のルートはケニアの首都ナイロビを起点とし、SS走行距離が320.19km、リエゾンも含めても1133.94km。タンザニアやウガンダまでも含み、昼夜をかけて5000km以上を走破したかつてのサファリと比較すると、非常にコンパクトなレイアウトが採用された。それでもコースには大きな石が数多く点在し、ひとたび大雨が降れば泥の海が広がる、タフなコンディションは健在。しかも、ヨーロッパ圏外でのテストが禁止されているため、現役ドライバー全員がサファリ初挑戦となる。

 実際、ラリーがスタートすると、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラ、ダニ・ソルド、オリバー・ソルベルグらが次々とアフリカの大地に飲み込まれていった。さらに、序盤から安定したペースでラリーをリードしていたヒュンダイのティエリー・ヌービルまでもが、最終日のSS14で右リヤサスペンションにダメージを負い、続くSS15でリタイア。これで、2番手に付けていた勝田がトップに立つ。

最終日のSS残り3つでトップに立つも

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サファリ・ラリー最終日のリエゾン区間を移動する勝田 写真:トヨタ

 今シーズンの勝田は、ここまで開催してきた全てのイベントで完走を果たし、ポルトガルとサルディニアでは表彰台まであと一歩となる連続4位入賞。そしてサファリ・ラリーの最終日、自身初となるラリーリーダーに立ち、ついに初優勝も射程圏内に捉えたかと思われた。しかし、チームメイトのセバスチャン・オジエも猛追しており0.8秒差の2番手までに浮上。その勢いのままにSS17で勝田を逆転。オジエはそのままフィニッシュし、サファリ初優勝。シーズン4勝目を手にした。

 オジエには一歩及ばなかったものの、勝田は自身初のポディウム(表彰台)を伝統のサファリ・ラリーで獲得。フィニッシュ後に勝田は「本当に長くタフな週末でしたから、最高の気分です。多くのライバルがさまざまなトラブルに見舞われるなか、僕たちはこのラリーを生き残ることができました。だからこそ、ここに帰ってくることができました」と、悔しさよりもラリーを走り切った喜びを語っている。

 今回、勝田が見せた強さは、1992年のアイボリーコースト・ラリーで篠塚建次郎が記録して以来の勝利も、決して夢ではないことを証明したといえるだろう。篠塚が活躍した時代と異なり、現代のWRCではワークスチームの全戦参戦義務が課せられており、勝利はけして簡単ではない。しかし、我々が思っている以上に勝田は凄まじいスピードで進化している。

 サファリという最難関で見せたスピードと安定感をさらに極めていけば、どのようなラリーでも並居るライバル相手にも勝負ができるはずだ。この先には、彼が住居を構えトレーニングを続けてきた第二の故郷であるフィンランドで行われるラリー・フィンランド、そしてトップドライバーで唯一ステージ走行経験を持つ最終戦ラリー・ジャパンも控えている。

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サファリ・ラリーでWRC初表彰台の2位を獲得した勝田(前列左) 写真:トヨタ

<WRC第6戦サファリ・ラリー・ケニア リザルト>

優勝 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ) 3時間18113
2
位 勝田 貴元/ダニエル・バリット (トヨタ) +21秒8
3
位 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒュンダイ) +195
4
位 ガス・グリーンスミス/クリス・パターソン (フォード) +1546
5
位 アドリアン・フォルモ−/ルノウ・ジャムール (フォード) +1547
6
位 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ) +10534
7
位 オンカー・ライ/ドリュー・ストロック (フォルクスワーゲン) +29264
8
位 カーラン・パテール/トーシーフ・カーン (フォード) +33304
9
位 カール・トゥンド/ティモシー・ジェソップ (フォルクスワーゲン) +36407
10 位 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ) +49227

<2021年WRCカレンダー>

7戦ラリー・エストニア 715日(木)~18日(日)
8戦ラリー・ベルギー 813日(木)~15日(日)
9戦ラリー・ギリシャ 99日(木)~12日(日)
10戦ラリー・フィンランド 930日(木)~103日(日)
11戦ラリー・スペイン 1014日(木)~17日(日)
12戦ラリー・ジャパン 1111日(木)~14日(日)

※カレンダーは627日時点のもの


勝田貴元のサファリ・ラリーの写真は、
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