2021年06月22日 21:30 掲載

クルマ ハイエースが全日本ラリーで55台中49位!
2つの「新兵器」で国沢光宏も気分上々

モータージャーナリストの国沢光宏がドライバーを務めるCAST RACINGのハイエースが、全日本ラリー2度目となる第5戦のRALLY 丹後2021に参戦。しかし車検不合格で出走ならずだった。そこから気を取り直して臨んだのが第6戦MONTRE2021。その参戦レポートを国沢本人が執筆。2つの「新兵器」で戦闘力UPしたハイエースは、ついにJN-6の最後尾をとらえるまでに進化した!

文・国沢光宏(モータージャーナリスト)

今回の「新兵器」はミッションとサスペンション

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6戦モントレーでのCAST RACINGのハイエース 写真:丸徳商会

 全日本ラリーに参戦しているハイエース、戦績は少しずつしか向上していないものの、悪い意味なのか良い方向か不明ながら、予想以上の話題となっているようだ。残念ながら新型コロナ禍のためサービスパークやスペシャルステージ(以下SS)は無観客で開催されている全日本ラリー。しかしながら、リエゾンと呼ばれるタイムを競わない移動区間では、沿道から応援してくれる人がいる。

 またメディアでもハイエースの参戦レポートは、全日本ラリーとして考えると多く読まれているようだ。

 ということで今回は2戦目となる群馬県で開催された第6MONTRE2021(以下モントレー)を、ドライバー自らが書く(笑)参戦記でお届けしたいと思う。今回のモントレーで導入した「新兵器」は2アイテム。変速機(ミッション)とサスペンションだ。

 初戦で使った変速機、1速と2速が低く3速は高いという商用車用仕様のままだった。つまり完全ノーマルということ。SSの林道で1速はすぐ売り切れ(レブリミットがかかりエンジン回転数があげられない状態)。乗用車でいえば1速ギアに近い2速にアップするや、時速40kmくらいでレッドゾーン。3速にシフトするとイッキに回転数下がって加速しない状況になってしまった。だから今回から1速~3速までのギア比を変更し、クロスレシオと呼ばれるエンジン回転数のおいしいところをキープしながら加速できる仕様に改造している。

 一方サスペンションも標準ダンパーに手を加えただけだったが、今回からリアをリザーブタンク付きの別物に交換。フロントには競技などで使われるオイル量の多い単筒式を採用した。

 これらが目論見通りに機能すれば、1kmあたり1秒くらい速くなるはず。全日本ラリーで最もエンジンパワーが少ない「JN-6」クラスの背中に届く。それを実戦で試してみましょうというのが今回の狙いだ。ちなみに前戦の唐津でハイエースはJN-3クラスに参戦したが、今回のモントレーからオープンクラスに参戦することとなった。

ハイエースの深いドライビングプレジャーに驚嘆

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左からCAST RACINGの国沢光宏、喜多見孝弘の両ドライバー。ハイエースのパフォーマンスに笑みがこぼれる 写真:丸徳商会

 準備万端整え、SS1のスタート地点に行くと、あらま! 先行車がコースアウトしたということから競技中止になってしまっている! 今回のラリー、20kmSS3本。1本無くなったら40kmということ。素晴らしいテストの機会だと思っていたのに残念! しょうがなくサービスパーク(ラリーカーを整備する場所)に戻り、初日は終了。ラリーというスポーツならではの「あるある」だ。

 翌日はSS2。気持ちを改めスタートラインに付く! コースは前半がタイトなコーナーの連続するキツい登り坂。路面もところどころ舗装の表面が剥がれており、荒れ気味。中盤からは山の尾根筋に出るためアップダウンの連続だ。そして終盤、下り坂の連続カーブ。嬉しいことにコースの70%は、ハイエースが苦手とする状況ばかり! 新兵器の実力を試すには絶好のシチュエーションだ。

 事前予想では、登り坂でパワー不足。下り坂は前後の重量配分が基本的に前よりなので、ブレーキ時は一段と前輪荷重になる状態でコーナーを攻めなくちゃならない、と考えていた。

 いざ覚悟を決めてスタートすると、やっぱり登り坂区間が厳しい! ギアレシオはバッチリ決まっているのだけれど、絶対的なパワーが無いためコーナーをクリアした後、加速しないのだった。

 逆に考えると、こういった状況は改良の余地がある。というのも現状、コンピュターを含めて全くのノーマルエンジン(走行11km!)。商用車用エンジンのため耐久性重視になっており、6000回転以上回らないようになっている。しかし、これはリミッター制御の変更だけでパワーを出せると思う。次戦までにパワーアップを狙いたいところだ。

 そしてサスペンション。この改良は素晴らしかった。何より乗っていて楽しい! 背の高いハイエースだということを忘れてしまうくらいコントローラブル。コーナリング速度も上がっているためリアタイヤが"離陸"してしまうけれど、登り坂ならアクセルを踏んで行けばテールが流れ、内側輪が浮き、外側輪だけになる。ここでパワーを掛けると滑って曲がるのだ。

 車両全体を見ると大暴れしている状態だが、じつは押さえ込んで攻められる! ドライバーは繊細に前後荷重をコントロールしつつ、ハンドルを押さえ込み、アクセルは常に全開! こういった豪快なドライビングテクニックは、最近の車でなかなか使わない。ドライバーは車を操っている感じをフルに味わえ、楽しい! ハイエースに、これほど深いドライビングレジャーがあるとは想像していなかった。

次の課題は「ブレーキ」、まだまだ速くなるハイエース

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サービスパークでブレーキの整備をするCAST RACINGのハイエース 写真:丸徳商会

 ラリーの長い下り坂では、フルブレーキの連続となる。ハイエースのノーマルブレーキ(パッドだけ競技用に交換済み)は、荷物をたくさん積むために容量大きいものを装備しているけれど、さすがにモントレーの最後では「限界目前」という厳しい感じだった。

 そのため次戦までには大容量のブレーキを投入したいと思っている。ハイエース、まだまだ改良できるし、速くなると思う。競技はクルマを鍛えてくれる。

<車載カメラで見る。ハイエースの林道全開走行>

ランチア デルタより速いハイエース!?

 気になるリザルトながら、計測できたのはSS2のみ(SS3はコースオフ車両のため3分待つなど参考にならず)。嬉しいことに55台中、49位! モントレーに参戦していた往年の名車であるランチア デルタや、旧世代のポルシェ911より速い!  全日本のJN-6にも1台だけれど勝てた。ハイエース着実に速くなっています! 次はさらに上の順位を目指したい。

※:全日本ラリーには、デルタや911などの旧車が参戦できるOP3というクラスがある。それらがモントレーで記録したタイムとハイエースのものを比較している。

<CAST RACINGスタッフが「ラリーカー」ハイエースを試乗インプレッション>

<ハイエースの全日本ラリー最新情報はこちら>
CAST RACINGオフィシャルサイト(https://castracing.com/)

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