2021年12月07日 10:20 掲載

ライフスタイル 『イタリア発 大矢アキオの
今日もクルマでアンディアーモ!』第21回
「夏時間&冬時間」。年2回の“儀式”はつらいよ

イタリア・シエナ在住の人気コラムニスト、大矢アキオがヨーロッパのクルマ事情についてアレコレ語る連載コラム。第21回は、メリットよりデメリットのほうが多い!? ヨーロッパのサマータイム事情について。

文と写真=大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)

1987年「マセラーティ・ビトゥルボ」の運転席。かつて同車はモデルサイクルの途中から、1987年「マセラーティ・ビトゥルボ」の運転席。かつて同車はモデルサイクルの途中から、"金時計"を追加。話題を呼んだ。

混乱が生じないのは「誰も信じていないから」

 イタリアでは2021年10月31日、夏時間(サマータイム)から冬時間に切り替わった。周辺諸国とともに、時計の針を1時間遅らせた。これによって、日本との時差は7時間から8時間となった。

 イタリアは12月ともなると日の出は遅く、筆者の住む中部シエナでも7時30分頃になる。冬時間に調整後、時計で同じ時刻に起きると、若干明るいのはありがたい。それでも東京のやたら明るい朝からすると暗いのが悲しい。

 いっぽう3月の最終日曜日、逆に針を1時間進ませて冬時間から夏時間へと切り替えると、日没の時刻が遅くなる。そのため、もっとも日が長い時期は、夜の9時過ぎまで明るい。多くの人々は夕食後、街なかにふたたび散歩へと繰り出す。

 実は2019年、欧州連合(EU)の欧州議会は、2021年をもって夏時間制度を廃止することを賛成多数で可決している。経緯は複雑なので割愛するが、日照時間を有効活用でき、かつ商業も活性化するというサマータイム賛成派よりも、さしたる効果が見いだせないとする反対派の数が大きく上回ったことによるものだ。

 2022年以降各国は、標準時を従来の冬時間とするか、それとも夏時間とするか選択することになる。当然、イタリア政府も決めなければならない。しかし新型コロナウィルス対策に時間を割いてきたためであろう、冬・夏どちらを標準時とするか本稿執筆時点までに公式のアナウンスはない。

 これまで年2回の"儀式"であった時計の調整だが、我が家は部屋数が少ないので、実際に針を動して調整する時計はたった2つであった。寝室のデジタル目覚まし時計は、日本の家電ブランド製にもかかわらず、夏・冬時間の切り替えボタンがある欧州仕様ゆえ、それを押すだけだ。

我が家のラジオ付きデジタル時計。DST(夏時間)スイッチを押すと、ディスプレイ内に緑のドットが灯る。我が家のラジオ付きデジタル時計。DST(夏時間)スイッチを押すと、ディスプレイ内に緑のドットが灯る。

 切り替えは、イタリアでそれほど混乱を招いていなかった。筆者が知る限り、しくじったのは「出勤してみると上司も同僚がいなかったことで、冬時間に気づいたことがあるわよ、アハハ」と笑う知り合いのおばちゃんくらいだ。PCや電波時計など、自動で時刻を調整してくれる機器の普及も、近年は混乱防止に貢献している。

 親切なホテルでは、玄関や客室にアクセスするエレベーターホールに、前日「今夜時間が切り替わります」などと貼ってくれる。街なかや路線バス内の時計は、切り替え直後に未調整のことが多い。それでも混乱を生じないのは、ほとんどの人がそうした時計に正確さを期待していないことがある。

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