2022年05月19日 11:50 掲載

ライフスタイル マニュアル車がお好きなら、このクルマにお乗りなさい! MTのススメ。

クルマの電動化に合わせて、マニュアル車は消えていく運命にあるのだろうか? モータージャーナリストの小川フミオは、いまこそMTの醍醐味を味わうべしと訴える。MTの魅力を再考する。

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文・写真=小川フミオ

MTはうまい赤身だ!

MTのススメ。マニュアル車に乗るなら今っきゃない!

 マニュアル変速機って、やっぱりおもしろい。クルマはエンジンだ。なんて、ちょっと前まではよく言ったものだ。クルマの個性はエンジンに左右されるという意味である。最新の電気自動車では、ハンドリングの重要性が注目されつつあるが、古い私はそこにもうひとつ、変速機も大事ってことを付けくわえておきたい。いまのうちに。

 いまさら、手でギアを変えるマニュアル車なんて、っていうひとは多いかもしれない。ソニー損保が毎年、1月に発表する「新成人のカーライフ意識調査」はいつも興味深いのだが、2022年1月5日発表の2022年度版でも、MT(マニュアル変速機)とAT(オートマチック)の差が明らかになっている。

 ソニー損保が、2001年4月2日から2002年4月1日生まれの1000人を対象に行なったアンケートによると、その1000人のなかでマニュアル変速機も運転できる普通自動車運転免許所持者は17.7パーセント、オートマチック限定免許は39.5パーセントと倍以上の開きがある。

 古い世代のひとは、オートマチックのほうがマニュアルより高級って意識があるかもしれない。サシがたっぷり入った牛肉のほうが赤身より上等っていうのと、なんだか似ていると私は思っている。私は歳のせいか霜降り肉を受け付けなくなっている。うまいと思うのは赤身。価値観の転換が起こっているのだ。同じことをマーケット全体にも当てはめてみたい。

MTの醍醐味ってなに?

 いま、新車で買えるMT車はそんなに数が多くない。マツダは11車種中に8車種にMTを設定とがんばっているものの、トヨタは走りを追求しているGR系(の一部車種)のみ。日産はフェアレディZ、スバルはBRZとスポーティカーに設定しているだけ。輸入車では、ポルシェの一部車種に搭載されているぐらいだ。あ、スズキはけっこう作ってますな。

 MTの新車が売れる比率はなんでも1パーセント台なんだとか。この数字はときどき自動車メーカーの開発者が苦笑まじりに教えてくれる。それでもMTを作り続けるのだから、私にいわせると、自動車好きでないと自動車メーカーはやっていられないってことだ。ありがたいけど。

 いっぽう、MTが好きなひとにとって、いまの状況はいい側面もある。搭載車はどれもMTの良さが存分に味わえるのだ。昔のように、レンタカー借りたら(当然)MTで、ギア比が離れているうえに非力で、楽しくなくて泣けてきた、なんて状況はかなり改善されている。

 じゃ、いいMTって、どういうのだろう。もっとも重要な点は、エンジンとの相性がいいこと。エンジンの力をドライバーが自分で引っ張りだせるような感覚こそ、MTを操るときの醍醐味だ。

 くわえて、私が好きなのは、ひとつはクリック感。ギアレバーを操作して、ゲート(っていったりします)に入れるときの感触が、カチカチッと気持ちいいと、それだけで気分がアガる。先に挙げたMT車はだいたいよく出来ている(軽自動車は例外)。

 それからもうひとつ。私が、MTに乗って幸福感を感じるのは、シフトダウンの時だ。たとえばギアを3速から2速に落とすとき、スパッとギアが入って、かつエンジンの回転がうまく合わせられて、そこからクルマが力強い加速をするのを感じると、クルマってたんなる移動手段じゃないよなーとつくづく感じる。

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