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クルマ最終更新日:2021.07.30 公開日:2021.07.30

「リスザル」|第32回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当加藤さんに、「リスザル」を解説してもらいました。

文・上條 謙二

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樹上生活に適応した指と爪

リスザル01

リスザルは、元々は南米のジャングルで暮らす生き物のため、寒さには弱い。

 「リスザル(別名コモンリスザル)」は、南アメリカ北部の川沿いのジャングル地帯に分布する霊長目オマキザル科の動物です。熱帯の森林などに、群れをつくって樹上で生活しています。群れは、通常はオスとメスからなる数十頭程度の家族単位で構成されますが、食べ物が豊富な環境になると群れ同士が集まって、多いときには100頭以上の大きな集団になることもあります。リスザルの体長は約30㎝、体重は700~1000gほど、雑食性で果実や木の実を主に食べますが、昆虫やカエルなども好んで食べます。体が小さくて人に馴れやすいこともあって、ペットとして飼育される場合もあります。

 リスザルの身体的な特徴は、体の色や大きさが大型のリスに似ていることで、これが名前の由来です。体色は四肢や背中の部分が黄色か黄褐色、腹部は白色もしくは淡黄色、顔面部は目の周りは眼鏡をかけたように白く縁どられ、鼻から口にかけては円形に黒くなっています。体毛は全体的に短くなっています。

 またリスザルには、樹上生活に適応した体のつくりがいくつか見られます。

 そのひとつが、四肢に5本ずつある指の形です。前足(人間で言えば手)と後ろ足の指の形が人間と同じような形をしており、細い枝にいるときでも後ろ足でしっかり掴んで体を支え、立ったままでも食事することができるようになっています。

 二つ目は、指先の爪が背側に堅く平たい爪板がある「平爪(ひらづめ)」になっていることです。物を力強く掴んでも、平爪があることで指先の肉が接触の圧で指先方向にずれるのを防ぐので、木の枝を登ったり小さなものをつまんだりするような作業は楽にできます。

 三つ目は、体長より長さのある尻尾(長さは30~40㎝ほど)です。尻尾で物を掴んだりはできませんが、不安定になりがちな木の上を移動する際にこの長い尻尾を立ててバランスを取ります。木の枝や幹をしっかり掴める指やバランスがとれる尻尾を持っているお陰で、リスザルは木から木へ移動する際は、人が追い付くことができないくらい速く動けます。

警戒時に発する長くのばす鳴き声

リスザル02

「リスザル」が危険を察知したときには、「キャー」とか「キィー」と長くのばす声を発する。

 野生下のリスザルは、エサを探すのがあまり上手くないと言われています。そこでリスザルが効率よくエサを手に入れるために取り入れた戦略が、エサを探すのが上手な種類のサルの群れの後をひっそりと追いかけて、エサにありつく方法です。「リスザルは結構ちゃっかりと賢い側面を持つ動物」(※加藤さん以下同)なのだそうです。

 群れを形成するリスザルは、コミュニケーションの手段として鳴き声を使います。日常では高めの短い音で鳴き、敵が来たときは警戒の鳴き声を発して仲間に注意を促します。「ふだんは『キャッキャッ』という高い声で鳴きますが、危険を察知すると、『キャー』とか『キィー』と、車の急ブレーキのような、長くのばす鳴き声を発します。これが「気をつけろ」の意味になる」そうです。この警戒の鳴き声がすると群れのリスザルが一緒になって同じ声で鳴き始めます。群れ全体に注意を促して、危険を共有します。

 尿によるマーキングもコミュニケーションの一つの手段です。「頻繁に木に自分の尿をこすりつけたり、尿を自分の体にこすりつける行動が見られます」。こういった行動は自分の存在を群れ内で誇示するために行っていると考えられています。「園内の個体は、この他のコミュニケーション方法として毛繕いやじゃれ合いも頻繁に行う」そうです。

気に食わないエサは投げ捨てる!?

リスザル03

群れで生活する「リスザル」は、ひとりぼっちになることがストレスになる。

 そんなリスザルは、どんな性質の動物なのでしょうか?

 好奇心旺盛で活動的な性格ですが、群れで生活するためにひとりぼっちになることを嫌います。だから「孤独になると、エサを食べなくなることがあるんです。そうならないように、ケガや病気などで治療が必要な場合には、不安にならないよう、群れの仲間が見える場所で隔離をする」そうです。

 最後に「リスザルあるある」についても伺いました。

 それは「エサを与えるき、好きなものは勢いよく食べるが、嫌いなものを渡されたときには、眉間にシワを寄せて投げ捨てること」です。食事のとき、最初に手を付けるものがその個体の好物で、イモ好きがいたり、リンゴ好きがいたりなど、個体によって食べ物の好き嫌いがさまざまではっきりしていることが特徴の動物です。だから「肉が好きな個体にみかんを与えたりすると、嫌な顔をしてみかんを投げつけてくることもある」そうです。

 ストレスを感じやすかったり、食べ物の好き嫌いがはっきりしているなど、リスザルはなんだか人間に似ているところのある動物ですね。

リスザルの飼育員さん

「リスザルの飼育を初めて担当する飼育員は、ほぼ必ずと言っていいほど上から落とされる糞の洗礼を受けることになります」と飼育担当の加藤さん。

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