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クルマ最終更新日:2020.06.17 公開日:2020.06.17

首都高・1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部リニューアル、作業が第3ステップの行程に

現在、首都高では老朽化の進む区間を更新する「首都高リニューアルプロジェクト」が実施されている。その第1号として工事が進む1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部では、6月16日(火)深夜1時に下り線の切り替え作業が行われ、作業工程の第3ステップに入った。

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2020年6月16日(火)に更新作業が行われる、首都高・1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部の鮫洲付近(羽田空港方面を望む)。画像提供:首都高速道路株式会社

更新作業が行われる、首都高・1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部の鮫洲付近(羽田空港方面を望む)。画像提供:首都高速道路株式会社

 首都高で最初に開通した区間は京橋~芝浦の約4.5kmで、1962年12月のこと。1号羽田線もそれに次ぐ歴史を有しており、東品川桟橋・鮫洲埋立部などは1963年12月に開通。2020年6月現在、56年と半年の年月が経過している。こうした建設から年数の経っている高速道路は、損傷箇所が年々増加しているという。

 そこで、長期耐久性・維持管理性に優れた構造に造り替える大規模計画「首都高リニューアルプロジェクト」が2014年6月に始動。その第1弾として、1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部が選ばれた。東京臨海高速鉄道・天王洲アイル駅付近から鮫洲運転免許試験場付近までの京浜運河上の約1.9kmを対象とし、2016年2月からリニューアル工事がスタート。今回のリニューアル工事で新たに建設される構造物は、耐用年数100年以上を実現する最新技術が導入されている。

首都高・1号羽田線でリニューアル工事が行われている東品川桟橋・鮫洲埋立部。画像提供:首都高速道路株式会社

首都高・1号羽田線でリニューアル工事が行われている東品川桟橋・鮫洲埋立部。画像提供:首都高速道路株式会社

工事は全4ステップで2026年度完成予定

 工事は大きく4ステップに分けて進められている。1号羽田線は1日に7万台という交通量があり、それを長期通行止めにすることは影響が大きい。そこで、通行止めなしでリニューアル工事を行えるよう、4ステップに分けて計画が立てられた。

 2016年2月からスタートした第1ステップは、迂回用上り線の建設だ。そして2017年9月から始まった第2ステップでは、まず従来の上り線から迂回用上り線への切り替えが実施された。その後に、従来の上り線が撤去され、上り更新線の建設(リニューアル工事)がスタートとなった。

 そして上り線のリニューアル工事完了を受け、6月16日からいよいよ開始となったのが第3ステップだ。同日深夜1時に従来の下りの交通を完成した上り更新線への切り替えを行い、暫定的な下り線とした。そして、下り更新線の建設工事がスタート。

 最後の仕上げとなる第4ステップは、開始時期は具体的には現時点では発表されていない。ただし、今回のリニューアル工事の完成予定は既述したように2026年度だ。第4ステップでは、上りの交通を迂回用上り線から上り更新線へ、下りの交通を上り更新線から下り更新線へと切り替えが行われる。B湾岸線との連絡路も、迂回用上り線から上り更新線へと切り替えが実施されて完成だ。

首都高・1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部で進むリニューアル工事は4ステップで行われる。6月16日(火)深夜1時から第3ステップとなる。画像提供:首都高速道路株式会社

1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部のリニューアル工事は、4ステップで構成。画像提供:首都高速道路株式会社

6月16日スタートの第3ステップではまず下りの交通の切り替えを実施

 6月16日からの第3ステップで最初に行われたのが、同日深夜1時に実施された下りの交通の切り替えだ。現在は、完成した上り更新線を、暫定の下り線として利用している。本来、上りの交通用に設計されているため、カーブなどでは慎重な走行が求められるという。従来の下り線は撤去が始まり、その後に下り更新線の建設となる。

6月16日(火)深夜1時に、首都高1号・羽田線下りの東品川桟橋・鮫洲埋立部区間で交通の切替が行われる。完成した上り更新線が暫定的に下り線として利用される。画像提供:首都高速道路株式会社

2020年5月末に撮影された、1号羽田線の東品川付近。更新線の高さは、大井水管橋をオーバーパスする地点で約20m。画像提供:首都高速道路株式会社

リニューアルした東品川桟橋・鮫洲埋立部は100年以上の耐久性を実現

 リニューアルには最新技術が導入されており、耐用年数を100年以上とするなど、1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部は大きく生まれ変わる。東品川(桟橋)区間、鮫洲(埋立部)区間それぞれ、以下の特徴がある。

【東品川区間:約1.3km】
(1)海水面からの離隔が確保された高架構造(2)並行するモノレールからの離隔の確保
(3)景観に配慮された常設の維持管理用足場の設置(恒久足場)
(4)橋脚の防食対策の強化

 (1)について補足すると、従来は東京湾の平均的な海面から高いところで10mほど、低いところだと3mほどの高度しかなかった。塩害の影響をとても受けやすかったのである。それが更新後の最高地点は、大井水管橋をオーバーパスする辺りで約20mとなる。最も低い位置でも5~6mとなり、それだけ海水の波しぶきも届きにくくなる。

 また(3)の常設の維持管理用足場については、飛来塩分など、劣化要因を遮断するカバー的な役割も果たしている。また足場内は1.8m以上が確保されており、点検時の移動が容易だ。

 そして(4)の橋脚の防食対策については、直接海水に浸かる水中部、波しぶきを浴びる水面に近い飛沫部は、ステンレスライニング工法が採用された。同工法は、耐久性を高めたい部材にサビに強いステンレス鋼を巻き付けて防食する工法のことだ。しかも、一般のステンレスよりも1.5倍の耐久性を有する高耐久オーステナイト系ステンレス鋼(1.2mm厚)が採用されている。これにより、水や酸素などの腐食因子が鋼製橋脚と接触しなくなり、耐食性が大きく向上した。首都高で3番目の採用だが、26橋脚と一連の橋梁で採用されるのは初で、かつ角形橋脚への採用は珍しいという。

 そして飛沫部の上側に位置する大気部も、防食対策が施されている。飛来塩分の影響を常時受けるため、重防食塗装に加え、アルミニウム・マグネシウム合金の溶射が施された。重防食塗装だけに比べると、金属溶射も行っていることから、4倍程度の耐久性になるという。

【鮫洲区間:約0.6km】
(5)中空のプレキャストボックス構造の採用による耐久性・維持管理性の向上
(6)エポキシ樹脂皮膜鉄筋の採用によるさらなる耐久性の向上
(7)プレキャストボックス下の地盤改良

 (5)の中空プレキャストボックス構造とは、道路の下にコンクリート製の箱型構造を連結させたもので、箱の内側は維持管理空間として用いられる。プレキャストボックスは工場で製造しており、現場で連結するだけのため、短い行程で高品質の施工が可能になるという。なお更新線では、路面の下に3つのプレキャストボックスが横方向に連結されている。内部は2m以上の高さがあり、東品川区間の恒久足場以上に移動が容易となっている。

 (6)のエポキシ樹脂皮膜鉄筋とはエポキシ樹脂で覆われた鉄筋のことで、よりサビ(塩害)への耐久性が持たせられている。(7)の地盤改良では、液状化対策や「地耐力」の確保が行われた。地耐力とは、地盤が建造物の重量にどの程度耐えられるのか、もしくは地盤沈下に対してどの程度抵抗力があるのかを示した値である。


 首都高リニューアルプロジェクト第1弾の1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部の工事は2026年まで続くが、同時に第2弾以降も進展中だ。C1都心環状線の日本橋区間(地下化)、神奈川1号横羽線の高速大師橋(更新)、3号渋谷線の池尻・三軒茶屋(更新・付加車線増設)などが事業化され、工事などが進められている。

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