埼玉県東部地区で進む新たな道路ネットワークの整備計画【AD】
2015年度版の道路交通センサスによれば、埼玉県の一般道における混雑時の旅行速度は時速21.5kmで、全国ワースト4位であった。そのような状況を改善すべく活動を行っているのが、「埼玉県渋滞ボトルネック検討ワーキンググループ」と、「埼玉県東部地区道路検討会」だ。同県東部地区における交通の課題と、その対策を紹介する。
埼玉県内の渋滞解消を目的とする「埼玉県渋滞ボトルネック検討ワーキンググループ」の活動
「埼玉県渋滞ボトルネック検討ワーキンググループ」(以下、WG)は埼玉県内の渋滞を解消すべく、国土交通省関東地方整備局大宮国道事務所長を座長とする、2018年10月に立ち上げられた作業部会のことだ。メンバーは大宮および北首都の両国道事務所、埼玉県、関東地方整備局道路部、警視庁、埼玉県警、NEXCO東日本、首都高速など、県内の道路交通に関わる行政機関や高速道路運営会社から15人以上の役職者が名を連ねている。
それ以前は、国道17号やE17関越自動車道など、県央地域の渋滞解消を目的としていた。しかし2015年度版道路交通センサスが公表されると、埼玉県内の市区町村別発生・集中交通量は、1位のさいたま市を筆頭に上位がC4圏央道以南に集中していることが判明。そこで2018年10月から、C4首都圏中央連絡自動車道(C4圏央道)以南も検討エリアとするWGが発足したのである。
C4圏央道以南地域の抱える課題を3つの機能軸で解決
WGでの2回の議論の結果、C4圏央道以南地域では、3つの課題が明らかになった。それは、「広範囲で速度低下や渋滞損失が発生」(画像1)、「一般道にトリップ長30km以上の交通が多く混入」、「周辺開発への支援」(画像3)という3点である。
この3点の課題を解決するために検討されたのが、画像2の「3つの機能軸」である。この機能軸における規格の高い道路ネットワークの計画の具体化に向け、検討が進められることとなった。
このうち、機能軸1の外環道~国道16号間の東部地区(越谷市、吉川市、松伏町、春日部市など)は、大規模物流施設などの開発計画が複数進む地域だ(画像3)。その発展を支えるため、効果的な対策・整備手法の検討が先行して進められることとなった。そこでWGから独立する形で設立されたのが、国土交通省関東地方整備局北首都国道事務所長を座長とする「埼玉県東部地区道路検討会」である。同検討会は、WGの中でも東部地区に特に関わりのある大宮および北首都の両国道事務所、埼玉県、NEXCO東日本の役職者で構成される組織だ。
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埼玉県東部地区道路検討会の活動に迫る
外環道から国道16号の慢性的な渋滞を解消するための具体的な計画
「埼玉県東部地区道路検討会」は2019年12月23日に第1回検討会が開催され、そこで判明したのが東部地区はE6常磐道、C3外環道、C4圏央道のどのICへのアクセスでも15分以上かかってしまう地区が多いということだ(画像4左の空白地帯)。
また、東部地区の一般道にトリップ長(移動距離)30km以上の交通がどれだけ混入しているかの調査結果も報告された。調査は東西方向の幹線路である国道16号と国道463号において実施され、その5割から7割ほどが30kmの交通であることが判明した(画像4右)。
東部地区の交通を円滑化させる東埼玉道路の拡充計画
さらに、東部地区の高速ICへのアクセス性を向上させるため、地域特性を踏まえた交通課題の検討も行われた。そして、1988年4月に都市計画として決定済みの「東埼玉道路(国道4号)」の自動車専用部の整備が、効果的な対策として結論づけられたのである。
東埼玉道路は、一般部と自動車専用部で構成される。一般部は総延長14.4kmの2車線道路で、日光街道(国道4号)の渋滞緩和や交通事故の減少、地域の開発支援を目的として建設が進められている。八潮市八條(国道298号・C3外環道一般部との交差点)から吉川市川藤までの5.7kmは、部分的に開通済みだ(画像5)。そして現在は、川藤から春日部市水角までの残りの区間において、用地取得および工事が行われているところだ。
画像6は、東埼玉道路の延伸を予定しているエリアの人口集中地区を表したマップだ(薄紫色が人口集中地区)。中川沿いは人口集中地区から外れており、新たな土地利用をしやすいエリアが多く残っている。地域の発展につながる開発の土壌として、ポテンシャルの高いエリアといえるだろう。
C3外環道から庄和ICまで合計8つのICを建設
東埼玉道路・自動車専用部は、C3外環道の草加IC~外環三郷西IC間(国道298号の八条白鳥交差点)にJCT並びにICが建設され、国道16号と交差する庄和IC(※1)までをつなぐ自動車専用道路である。東埼玉道路沿いに建設される予定で延長は17.6km、合計で8つのICが建設される計画だ。
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東埼玉道路・自動車専用部の整備効果などについて
自動車専用部の開通で東部地区の高速ICへのアクセス性が一気に向上
2020年1月31日に第2回埼玉県東部地区道路検討会が実施され、東埼玉道路・自動車専用部は一般国道のバイパス(無料の自動車専用道路)ではなく、有料道路として整備される方針が確認された。そしてその整備効果、県と関係市町が連携したアクセス道路の重点的な整備についての方針などが打ち出された。
画像8は画像4のマップ部分のみを拡大したもので、現在の東部地区(越谷市、吉川市、松伏町、春日部市)のICへのアクセス時間を表したものだ。アクセス15分以上の時間を要する空白地帯が多い。
そして、東埼玉道路・自動車専用部が開通したことを想定したのが画像9だ。東埼玉道路・一般部や国道463号、都市計画道路・浦和野田線などの一般道と連携することで、多くのエリアで高速へのアクセス性が一気に向上する。高速ICへ15分以内にアクセスできるエリアを表すカバー圏の割合は16%から85%(約7割増)へ、同じくカバー人口も16%から78%(約6割増)へ大幅増となる。
各ICへのアクセス道路の整備も進行中
東埼玉道路・自動車専用部が開通したとしても、各ICへのアクセス路がなければ、新たな渋滞を招きかねない。そこで画像10にある通り、同時進行でアクセス路の整備も進められている。アクセス路が整備されることで東部地区の交通容量も増え、全体として交通利便性が向上することにもなる。
整備が進められているアクセス路は、画像10および以下のリストにある通り(画像10とリストのカッコ数字が対応)。リスト中のIC2~6とは、東埼玉道路・自動車専用部のC3外環道とのJCTに併設されるICを1とし、庄和ICと接続する終点を8とする各ICの仮称である。なお、(画像)10にある(都)とは都市計画道路の略称のことだ(アクセス路はすべて都市計画道路)。
(1)IC6:東埼玉道路連絡線
(2)IC5:浦和野田線
(3)IC4:越谷総合公園川藤線
(4)IC3:越谷吉川線
(5)IC2:蒲生・柿木川戸線
ちなみにIC7は、越谷春日部バイパス(国道4号)との合流地点と、終点のIC8(庄和IC)との間に設けられるが、こちらは新たなアクセス路の整備計画はないようだ。
東埼玉道路・自動車専用部の整備は災害時の道路ネットワーク強化も実現
東部地区の幹線道路である日光街道と越谷春日部バイパスは、利根川や中川などの浸水想定区域を通過しており、幹線道路ネットワークとして脆弱であることが指摘されている(画像11左のマップ)。実際、2015年9月の関東・東北豪雨や、2019年の台風19号による大雨などで日光街道や越谷春日部バイパスは冠水してしまった。長時間の通行止めとなり、緊急搬送や物流などで支障を来す状況であった(画像11右上の写真2点)。
それに対し、東埼玉道路・自動車専用部は橋梁および盛り土での高架となっているため、冠水する危険性は小さい(画像11右下)。災害対策の面からも、東埼玉道路・自動車専用部は東部地区に必要なのである。
埼玉県の東部地区は、大型物流施設が次々と建設されており、交通需要が今後も増加していく。既存の道路ネットワークでは、交通容量が不足することが予測されている状況だ。しかし、東埼玉道路の一般部と自動車専用部が完成すれば、交通容量が大きく増加し、対応できるものと期待されている。同地域の発展に間違いなく寄与するのが、東埼玉道路なのだ。現時点で東埼玉道路の一般部の全線開通時期、自動車専用部の完成時期などは発表されていないが、早期の実現を期待したい。