2019年01月18日 16:28 掲載

ライフスタイル 86歳の冒険家・三浦雄一郎、
南米最高峰・アコンカグアの頂を目指す!(第1回)

冒険家・三浦雄一郎の新たなチャレンジは、南米大陸最高峰、標高6961mのアコンカグアだ。御年86歳。体力そして心の可能性と「生きる力」を体現するため、いま山に向かって一歩を踏み出す。

くるくら編集部 秋月 新一郎

2019年1月、アコンカグア登頂とスキー滑降に挑む

「やるだけやって、ダメなら途中で諦めるかもしれないけれど、頑張ったときの限界が頂上であるならば、これ以上にない素晴らしいこと。そしてできればスキー滑降がしたい」

 冒険家・三浦雄一郎、御年86歳。昨年末に開いた記者会見の冒頭で、彼はそう述べた。三浦氏はいま現在、南米大陸最高峰、標高6961mのアコンカグアの頂上を目指し歩んでいる。登頂率はわずかに30%。10人チャレンジしても3人しか登頂できないという難攻不落の山である。

 実は三浦氏は、今から34年前の1985年、53歳の時に一度この山に登頂、スキー滑降した経験がある。

「その時もやっとの思いでした。でもいまはもう80代。普通の健康体ならばまだいいのだけれど、不整脈なうえに心臓も変な具合に肥大しています。まあ持病みたいなものですが、人間にとっての肝心要のエンジン部分がかなりトラブっているという状況です」

 当時80歳で世界最高峰のエベレスト(標高8848m)登頂を達成したとき、三浦氏は直前に心臓不整脈手術を受けていた。

遠征隊・隊長を務める三浦雄一郎氏(左)と、息子であり副隊長の豪太氏(右)。

エベレスト登頂より厳しいチャレンジになる

「今回のチャレンジで最も難しいのは、やはり山頂からのスキー滑降です。7000mの山頂は、地上と比べて5分の2程度の酸素量しかありません」

 そう語るのは息子、豪太(49歳)だ。前回のエベレストに続き、アコンカグア遠征隊の副隊長としてプロジェクトをサポートする。

「スキーは登山活動と違い、常に自然状況に対応しながら滑っていくので、息を整える暇がありません。一歩踏み出し、一息入れて、また一歩を踏み出す、という登山の動きと異なり、無酸素状態がたくさん続きます。86歳という肉体を考えた場合、エベレストの頂上を目指してただ帰ってくるというよりも、非常に厳しいチャレンジになる可能性があります」

 しかし記者会見上でのふたりの表情は、そのシリアスな内容とは裏腹に、常に希望に満ちたような笑みを浮かべていた。これから前人未到の偉業に挑戦しようとするアスリート、というよりも、まるで近所によくいる仲のいいオジさんたち、といった感じすら漂わせる。きっとリラックスしている証しなのだろう。

「自分で言うのもなんですけれど、究極の老人介護登山ということになっているのかな?」

 自虐的ともとれるユーモアあふれる三浦氏のその一言に、会場はどっと笑いが起きた。

2013年のエベレスト隊のメンバーを中心とした登山のスペシャリストたちが遠征隊メンバーとした参加。アコンカグアのベースキャンプ地にて1月11日に撮影。

挑戦の原点

 超高齢化社会、人生100年時代と言われる今、人はどのように向き合い、そして心に力を持って生き抜いていくのか? 三浦氏は己の身体をもって、いままさにその答え出そうとしている。

 三浦雄一郎隊長率いる遠征隊一行が登頂にアタックするのは1月22日。24日にスキー滑降を予定している(1月16日時点)。

「空を飛ぶ鳥のように、海を泳ぐイルカのように自由に雪山をスキーで滑る」。この言葉は、三浦雄一郎氏と豪太氏の挑戦の原点だ。登頂とスキー滑降の成功、そして無事の帰国を心から祈りたい。

アコンカグア遠征 今後のルート&スケジュール(1月16日時点)
17日 BC → アメギノ峠(サポート隊徒歩)
18日 BC(ヘリ)→ 標高5580m地点で合流(雄一郎)→ 5870mキャンプ
19日 5870mキャンプ → ピエドラス・ブランカス(標高6100m)
20日 ピエドラス・ブランカス → インディペンデシア(標高6380m)
21日 インディペンデシア → ラ・クエバ(標高6660m)
22日 ラ・クエバ → 山頂(標高6961m)→ ラ・クエバ(標高6660m)
23日 ラ・クエバ → キャンプコレラ(標高5950m)
24日 キャンプコレラ →(スキー滑降の予定)→ ニド・デ・コンドレス(標高5500m)
25日 ニド・デ・コンドレス(ヘリ)→ ムラBC(ヘリ)→ オルコネス 
→(車)→メンドーサ(標高700m)
26日 メンドーサ
*BC=ベースキャンプ

アコンカグアとは
アンデス山脈にある南米最高峰の山で、標高は6961メートル。アルゼンチンのチリ国境付近に位置する。「ビエント・ブランコ(白い嵐)」と呼ばれるアンデス地方特有の悪天候がしばしば発生し、入山者の登頂率は3割ほどとされている。世界初登頂は1987年1月14日、スイス人のマティアス・ツールブリッゲンによって達成された。日本人初登頂は1953年1月26日、早稲田大学の遠征隊が成し遂げている。また北極点単独初到達(1978)を成功させた日本を代表する冒険家として知られる植村直己も、1968年に登頂している。

JAF Mate読者にはお馴染みのサングラス「TALEX」も、三浦雄一郎氏率いる遠征メンバーをサポート。過酷な環境下で目を守るギアとして活躍する。

三浦雄一郎/みうら・ゆういちろう
1932年青森市生まれ。北海道大学獣医学部卒業。1964年スキーのスピード競技であるイタリア・キロメーターランセに日本人として初めて参加、当時の世界記録樹立。1966年、富士山直滑降。1970年エベレスト・8000m世界最高地点スキー滑降を成し遂げ、その記録映画はアカデミー賞を受賞。1985年世界七大陸最高峰のスキー滑降を人類初、完全達成。2003年5月、次男の豪太とともにエベレスト(8848m)登頂。当時の世界最高年齢登頂(70歳)と初の日本人親子同時登頂の記録を樹立。2008年75歳2度目、2013年80歳で3度目のエベレスト登頂、最高年齢記録更新と人類のさらなる可能性を広げている。アドベンチャー・スキーヤーとしてだけではなく、全国に1万人以上の生徒がいる広域通信制高校、クラーク記念国際高等学校の校長でもある。

過去の7大陸最高峰、スキー滑降挑戦の軌跡
1966年 富士山直滑降
1966年 オーストラリア大陸最高峰 コジアスコ(2228m)
1967年 北米大陸最高峰 マッキンリー(6194m)
1970年 アジア大陸最高峰 エベレスト(8848m)
1981年 アフリカ大陸最高峰 キリマンジャロ(5895m)
1983年 南極大陸最高峰 ビンソン・マシッフ(4892m)
1985年 ヨーロッパ大陸最高峰 エルブルース(5642m)
1985年 南米大陸最高峰 アコンカグア(6961m)

(写真提供:ミウラ・ドルフィンズ、取材協力:TALEX)