【CES特集】ホンダ、「感情エンジン HANA」やバランス制御バイクを初公開
車両用AI「感情エンジン HANA」を搭載したEVコミューター「Honda NeuV」。
ホンダは1月6日、開催中の世界最大の家電見本市インターネット・コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)2017において、「Cooperative Mobility Ecosystem(考える・つながる・楽しいモビリティのある世界)」をテーマとして、生活の質を高める新価値提供を目標に、AI、ビッグデータ、ロボティクス技術を活用したオープンイノベーションを加速させることを発表した。
同時に、ドライバーとのコミュニケーションを行えるAI搭載EVコミューターのコンセプトカーである「Honda NeuV(ニューヴィー)」や、ASIMOに代表される同社のヒューマノイドロボット研究で培われたバランス制御技術を応用した、世界初公開となる2輪の実験車「Honda Riding Assist」なども公開した。
ソフトバンクと共同開発したAIを世界初公開
Honda NeuVは、自動運転機能を備えたEVコミューターのコンセプトカー。同社がソフトバンクと共同研究で新たに開発した、世界初公開のAI「感情エンジン HANA(Honda Automated Network Assistant)」を搭載している。
感情エンジン HANAは、ソフトバンクのグループ会社であるのcocoro SBが開発し、商用販売されているコミュニケーションロボット「Pepper」に搭載されている、ロボット自らが感情を擬似的に生成する機能を持ったAI「感情エンジン」を、両社の共同研究でクルマ用に改良したもの。
ドライバーの表情や声の調子からストレス状況を判断して安全運転支援を行うほか、ライフスタイルや嗜好を学習して、状況に応じてドライバーに合わせた選択肢の提案を行うなど、ドライバーとモビリティの自然なコミュニケーションを実現するという。
ちなみに、クルマを使用しない時は、クルマが自動運転で移動しながら他人に使ってもらうライドシェアを行うなど、自動運転技術とAIによって、大きく広がる未来のモビリティの可能性も模索する。
Honda NeuVのリアビュー。自動運転の次の機能は、クルマにAIを搭載し、ドライバーに寄り添わせることである。
バランスを自動的に取ってくれるバイク!
ハイテクバランス制御機構搭載のHonda Riding Assist。このバイクなら立ちごけなども無縁に?
Honda Riding Assist(ホンダ・ライディング・アシスト)は、ライダーが乗っていてもいなくても2輪だけで自立することが可能なバイク。ライダーが少しバランスを崩してしまっても、バイク自体がバランスを保つことで、低速走行時や停止時のふらつき、取り回しの際の転倒リスクを軽減するというものだ。
バランス制御が入っているとなると、通常走行時のコーナリングでも違和感があるのかというと、その点は既存のバイクと同等の操縦性を実現しているという。
バイクならではの走りの楽しさをキープしつつも、2輪車の絶対的な宿命として転倒しやすいという大きな問題の解決を図った1台というわけだ。
ハイテク1輪車「UNI-CUB β」も出展!
座乗(座って乗る)型のパーソナルモビリティ「UNI-CUB β」。歩行者を見下ろさないため、周囲に威圧感を与えない。
日本科学未来館での有料ツアーが行われ、羽田空港での実証実験が始まるなど、少しずつ利用の場が広まっている、座って乗る1輪車型(厳密には小型補助輪が後部にあるので2輪車)パーソナルモビリティの「UNI-CUB β」(ユニカブベータ)。こちらもCESに出展される。
UNI-CUB βもバランス制御技術が組み込まれていなければ、本来なら転倒してしまうが、倒そうとしても簡単には倒れないほどバランス制御のレベルは高くなっている。
また、ロボット用OSとして注目されている「ROS」(The Robot Operating System)にも対応し、ROS対応API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を搭載。それにより遠隔操作が可能となり、無人で荷物を運んだり、あらかじめ指示したルートを移動して利用者を案内したりすることもできるようになった。「乗れるIoT」として、パーソナルモビリティの持つ可能性を新たに拡大していくとしている。
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Dream Worksとの共同開発によるVR系の新技術も出展!
「Dream Drive」はクルマ用VR技術
そのほかにも複数の技術が出展されている。まずは、VR系の技術であるDream Driveから。エンターテイメント向けの技術であり、VRゴーグルを装着すると、クルマの動きに合わせてVR画面の中の飲食店などの情報が表示されたり、ゲームが進行したりするという。HDSと、米国の映画会社Dream Worksが共同開発中だ。
Dream Driveは、VRゴーグルを装着して利用。装着したままでの運転は危険性がある可能性もあるため、自動運転での利用が基本になるのだろう。
クルマの移動に合わせて、飲食店などの情報が表示される仕組みだ。
Dream Driveの画面内には、キャラクターが登場し、ゲームなども楽しめる模様。渋滞に巻き込まれた際などに、子どもたちが退屈せずにいるのに一役買いそう。
そのほかにも多彩な技術が出展されており、「Safe Swarm」、「Honda HMI Concept」、「In-Vehicle Payment」、「Vocal Zoom」、「LEIA 3D」などがある。
スムーズな交通の流れを実現するSafe Swarm
Safe Swarmは自然界から着想を得たというコネクティッドカー技術で、魚の群れの動きのようにスムーズな交通の流れを実現するというもの。
車車間通信で前方の道路状況や障害物の情報を共有したり、合流時や車線変更時のスピードを分析し、適切なスピード・タイミングでの合流・車線変更をアシストしたりすることで渋滞発生を防ぐなど、自車のみならず、交通全体の流れが安全かつスムーズとなるような交通社会の実現を目指した技術である。
自動運転技術実現のためのHonda HMI Concept
Honda HMI Conceptは、自動運転を実現するための画像認識システム。タッチスクリーンとリモートコントローラーのそれぞれの長所を取り入れたインターフェースを採用し、安全で快適な運転を可能とする運転環境としている。
料金支払いシステムIn-Vehicle Payment
In-Vehicle Paymentは、Honda Developer Studio(HDS)とVISAが共同開発している支払いシステム。ガソリンスタンドやコインパーキングなどでクルマに乗ったまま支払いを行うことができ、悪天候時や夜間でも降車する必要がないため、安全に支払いを行えるというものだ。
ちなみに、HDSとは、Honda Silicon Valley Lab(HSVL)内に2014年に立ち上げられた、車載用アプリの早期の実用化を目的とする、Hondaエンジニアとアプリ開発者が協業する場である。
音声認識精度向上技術Vocal Zoom
Vocal Zoomは、光学的に顔の振動を読み取って、音声認識精度を向上させるという技術。騒音環境下でもクルマへのボイスコマンドの伝達をより確実にし、運転に集中できる環境を整えるのが狙いだ。Honda Xceleratorと、イスラエルのVocal Zoomが共同開発中だ。
Honda Xceleratorとは、全く新しいものを作ろうとしているスタートアップに対し、資金援助やコラボレーションの場、テスト用車両、Hondaのメンターによるサポートなどを提供する、HSVLが主体となっているプログラムである。
ナノテク利用の3DディスプレイLEIA 3D
そしてLEIA 3Dは、ナノテクノロジーを使って3D表示を行うドライバー用ディスプレイ。どの角度から見ても自然に見えるよう自動調整されるのが特徴で、Honda Xceleratorと米カリフォルニアに本社があるL3Dディスプレイ技術を開発しているEIAが共同開発している。
2017年1月7日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)