日本はハイブリッド車頼みのままで大丈夫か? 2026年の米国・欧州・中国の動向と、日本の課題を考察!【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第11回
欧州委員会が「2035年のエンジン車販売停止」方針を撤回したことで、ハイブリッド車の評価が再び高まっている。では、エンジン車は今後も生き残れるのか。さらに、パリ協定を守れなかった場合、日本にはどのような影響が及ぶのか。自動車評論家・国沢光宏氏が、日本の将来に警鐘を鳴らす。
この記事をシェア
目次
エンジン車で二酸化炭素排出量を90%減らせるのか?
ここにきて「欧州はエンジン車の販売禁止を撤回した。電気自動車の時代など来ないのでは?」みたいなことを聞かれることが多くなってきた。確かに欧州委員会は2025年からエンジン車の販売を禁止するという方針を変更。二酸化炭素を90%減らせるなら電気自動車に限らなくても良いとしている。これを受けて「エンジン車でもOK」みたいに理解したんだと思う。
注意して頂きたいのは「90%減らす」となっていることと、2050年のカーボンニュートラルを動かしていない点だ。エンジン車で二酸化炭素排出量を90%減らそうとするのなら、大気中の二酸化炭素を回収して作るか、人類や家畜の食料にならない藻類等(藻ですね)や水素から作った合成燃料を使わなければならない。とはいえいずれも現時点で商業ベースに遠い。
2035年までに大量生産出来るようになったとしても、ガソリンより安く作ることなど難しいと思う。となれば、電気自動車90%のエンジン車10%か、電気自動車を70%くらいにしてPHEVが30%みたいなイメージになる。もっと現実的なことを書くと、いずれにしろガソリンスタンドの売り上げが90%減る。当然ながら需要の少ない地域だと存続出来まい。
全国のガソリンスタンド(サービスステーション:SS)数は、1994年度末の6万421か所がピーク。2023年度末時点で2万7414か所まで減少している。資料=資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック(2025年)」
全国のSS(サービスステーション)数は、ガソリン需要の変化に加え、電気自動車の普及や技術の進展、店舗の後継者不足といった複数の要因が絡み合っており、減少ペースには不確定要素が多い。 資料=資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック(2025年)」
中国ではHEV車とPHEV車が同価格帯になる日が近い?
一方、電気自動車は急速に進化している。現時点だと希少なマンガンやコバルト、ニッケルを使う三元系リチウム電池を使うため車両価格も高価。けれど今やLFP電池(リン酸鉄リチウム電池。安価で長寿命)の普及によりハイブリッド車と同じくらいの価格になっている。今後、さらに安価で寿命の長いナトリウム電池が主流になると言われており、エンジン車より安くなりそう。
すでに中国では電気自動車とPHEVとハイブリッド車の価格が同等。世界規模で見ても2030年あたりから補助金なしでハイブリッド車と同じくらいの車両価格になる可能性大。さらに電気料金は現在のガソリンと比べたって半分以下で済む。ガソリンより高価な合成燃料と比べたら、もうお話にならないくらい安価。加えて電気ならどこにでもインフラがある。
BYDの新型PHEV「シーライオン6」の完成度の高さに驚くばかり。機会があればぜひ試乗されたし。写真=塚原孝顕
欧州ではEVとエンジン車、どっちが主役になる?
欧州では日本のコインパーキングに相当する道路の駐車スペースにまで充電器があるし、従業員用の充電設備を持つ企業も多数。困るようなことはなくなりつつある。先日、欧州でエンジン車と電気自動車を所有した時の総合費用が相次いで発表された。それを見ると、基本的に電気自動車優位になっている。欧州はレギュラーガソリンで300~350円と高い。電気なら半分~3分の1で済む。
また、電気自動車は太陽光発電など発電量変化の大きい再生可能エネルギーとの相性が良い。再生可能エネルギーは需要を大きく超える発電能力が必要。昼間、太陽光発電の電力が使い切れないほど余ったら、駐車中の電気自動車に貯めておけばいい。日本の統計ながら乗用車の稼働率は5%くらいである。なるほど通勤に毎日2時間使う人でも、1日の10%以下だ。
ドイツなど自動車メーカーがある国は中国勢を排除しようとしている。一方、中国勢の工場を誘致している国も多い。欧州についていえば、なんのかんの言われながらも電気自動車が主役になっていくことだろう。
欧州では駐車場に充電ステーションが数多く設置されている。(c)Jan - stock.adobe.com
米国でも電気自動車普及の準備が進行中!
翻ってアメリカどうか? トランプ大統領は石油を掘りまくれと連呼し、パリ協定から脱退し、燃費規制も大幅に緩和した。電気自動車などどうでもいい?
どっこい! トランプ大統領の次を見ているのかフォードが中国の企業と提携。ステランティス(旧クライスラー)も電気自動車の準備を進めている。日本勢だってトヨタなどアメリカに電池工場を立ち上げた。2025年のアメリカに於ける電気自動車販売台数は前年比微増の104万台で、10%近いシェア。世界の流れは基本的にカーボンニュートラルである。電気自動車が柱だと思う。
2026年2月に入り、米フォードと中国 吉利(Geely)が協力関係の構築に向けて協議を進めているとの報道が入ったばかり。(c)Road Red Runner - stock.adobe.com
日本が国際公約を守れなかった場合のペナルティは?
日本は先進国に属す国で最も電気自動車の販売シェアが低く2025年は2%しかない。我が国も国際公約(2030年に2013年比で二酸化炭素排出量を46%減)を守ろうとすれば、圧倒的に少ない。おそらく2027年くらいから電気自動車を増やし、その上で二酸化炭素を出さない電力(世界3位のポテンシャルを持つ地熱や太陽光)を増やして行かなければならない。
守らなければどうなるか? 少なくとも欧州へ輸出する製品(農産物も含む)全てに対する罰則的な課税を掛けられる可能性大。アメリカもトランプ政権の次が地球環境を意識するようになれば、罰則的な課税を掛けられると思う。もっといえばエネルギーの自給自足は日本にとっても重要。第2次高市政権がエネルギー問題をしっかり考えてくれることに期待したい。
日本でもプラグインハイブリッドシステム普及は、これからさらに注目されるだろう。(c)yu_photo - stock.adobe.com




