『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第65回【Movie】──エンジン版ついに本国で発売!新型フィアット500
新型チンクエチェントのエンジン版がついに発売! 大矢アキオ ロレンツォの連載コラム第65回は、待望の新型フィアット500ハイブリッドに注目!
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マイルドハイブリッド+6段手動のみ
ステランティスは2025年11月25日、新型「フィアット500(チンクエチェント)ハイブリッド」をイタリア北部トリノのミラフィオーリ工場で正式に生産開始した。
新型は、2020年発売の電気自動車(BEV)「500e」のプラットフォームを大幅に設計変更したもの。全長×全幅×全高は3631×1684×1532mmで、先代の内燃機関仕様500(以下312型)よりも60mm長く57mm広く、そして44mm高い。
エンジンと変速機はいずれも1種類で、312型ハイブリッド仕様(日本未導入)のものを基にした「ファイアフライ」3気筒999cc 65HP+12Vマイルドハイブリッドに6段マニュアルが組み合わされている。
ボディは500eと同様に3ドア、助手席側リアヒンジドアをもつ3+1、そしてカブリオの3種が用意される。イタリア市場向けのグレード構成は基本の「ポップ」、中間の「アイコン」、上級仕様の「ラ・プリマ」で、発表用の特別仕様として生産地の市名を冠した「トリノ」も用意されている。イタリア国内価格は1万9900ユーロ(約365万円:付加価値税込み)から。
エンジンは3気筒999cc 65HPと12Vマイルドハイブリッドの組み合わせ。
展示車はローンチ・エディションの「トリノ」だった。
マイルドハイブリッド化に伴い、プラットフォームはエンジンマウント、サスペンション受け部などに大幅な手が加えられている。従来型(312型)と比較して重量は約80kg増加している。
今回の新型投入は、従来の312型が2024年に施行された欧州連合の新保安基準に適合できなくなったことに関連している。
同時にステランティスは、2020年に発売したもののEV市場が成熟せず販売が伸びなかった500eの不足分を、この内燃機関版で挽回しようとしている。その意気込みはすさまじい。従来ミラフィオーリにあった「マセラティ・グラントゥリズモ/グランカブリオ」の生産設備をモデナに移設し、そこを500ハイブリッド用に充当。加えて工場従業員400名の新規雇用を発表した。
本国向け広告に「誇り高きミラフィオーリ製」と明記されているのは、単に生産拠点を312型のポーランド工場から移したという事実だけが理由ではない。近年、新型車の国外生産が続いていることに神経をとがらせるイタリア政府の批判をかわそうとする、メーカー側の思惑がうかがえる。
ふたたび街角の風景となるか
運転支援システムは全車標準装備だが、変速機は6段マニュアルのみである。
バックレストには創業時におけるFIATの正式名称であるFabbrica Italiana Automobili Torino(イタリア・トリノ自動車製造会社)の文字が記されている。
センターコンソール。500eで走行モードセクターがある場所には、アイドリングストップの入切スイッチ(左側)がある。
長身のイタリア人にとって、312型の後席居住性は評価が分かれる点だった。いっぽうで新型では、少なくとも身長166cmの筆者にとって、頭上・足元のいずれにも一定の隙間が確保されている。
2025年11月29日、筆者が住むイタリア中部トスカーナ州シエナのフィアット販売店「ウーゴ・スコッティ」では、500ハイブリッドの内覧会が開催された。展示車は、前述のローンチエディションである「トリノ」だった。車体色は「RED」と名づけられた赤で、こちらは車両代金の一部が感染症対策に携わる同名のグローバルファンドに寄付される仕組みだ。
メーカーの話としてイタリア系メディアが伝えるところによれば、オートマチックがカタログに無いのはイタリアのベーシックカー市場で今も続く根強いマニュアル人気を反映したものという。
イタリアの販売店では通例である昼休み後、開店と同時に入店してきた若者がいた。マッテオさんは1991年生まれの34歳。20数キロメートル離れた郊外から、新型を見にやってきたという。「(312型)500のファンで、今乗っているのはすでに2台めだよ」と教えてくれた。さらに驚くべきことに「僕の父も持っている」とのこと。
トリノ仕様のタイヤは中間グレードの「アイコン」同様195/55 R16。基本の「ポップ」は15インチ(+スチールホイール)、上級グレードの「ラ・プリマ」は17インチが装着される。
BEV版である500eと外観上最大の違いはフロントのエアインテークである。
テールゲートには312型の同仕様と同じく、マイルドハイブリッドを示すバッジが。リッターあたり燃費は基本グレードのポップ仕様で19.2km(WLTP混合モード)。
ドアの解錠は500eと同様ボタン式となった。
312型がデビューしたのは2007年。筆者はトリノのポー河を舞台にした発表セレモニーに立ち会った。その賑々しさとは対照的に発売直後は1957年「ヌォーヴァ500」を記憶している世代から「あんなのは500ではない」といったネガティヴな意見が多数上がった。しかし結果をいえば312型はヌォーヴァ500の18年に限りなく近い17年のロングセラーとなった。ヒットを支えた大半はマッテオさんのような、ヌォーヴァ500体験が無かった世代である。
今回の新型500ハイブリッドも、新たなジェネレーションに支えられながら徐々に街角の風景となってゆくのだろうか。ただし油断はできない。ライバルの1台はトヨタの欧州専用車「アイゴX」だ。フルハイブリッドも揃えた同車はイタリア新車登録台数でじわじわと順位を上げ、2026年1月には5位にランクインしている。フィアット「パンダ」とともにイタリアを代表するシティカーの勝負は今始まった。
312型を2台乗り継いでいるというマッテオさんは1991年生まれ。




