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公開日:2026.02.12

高速道路の「通勤パス」今後どうなる? 国が方針発表。お得な「半額使い放題」の全国展開はいつ? 浮かび上がる課題とは。

高速道路がいつでも最大半額になる「通勤パス」が試行中。 (c) chococoffee - photoAC

高速道路の通勤定期にあたる「通勤パス」の社会実験が、複数エリアにおいて進められている。国土交通省の報告を読み解きながら、通勤パスはどういうものなのか、そして今後どうなるのか、現状を見ていこう。

高速道路がいつでも最大半額になる「通勤パス」が試行中。 (c) chococoffee - photoAC

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省

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高速道路の「通勤パス」は社会実験として実施中

高速道路で通勤パスの社会実験が実施されている。(c) Paylessimages - stock.adobe.com

高速道路で通勤パスの社会実験が実施されている。(c) Paylessimages - stock.adobe.com

鉄道やバスで通勤する場合、毎回運賃を支払うよりも「定期券」を買うほうが割引でお得になる。1か月や3か月、半年などの期間が設定され、乗車回数が多くなっても出費が変わらないので安心だ。

一方、高速道路にはそうした「定期券」は無いのだろうか。料金支払いの手間は、ETCの導入でかなり楽になった。しかし、定期券が持つ「割引」のメリットを享受したいという事業者や利用者も少なくないだろう。

実は、高速道路の通勤定期にあたるシステムは、現在「通勤パス」という名前で、複数エリアでテストケースが進められているところだ。2025年12月に国土交通省の委員会が開催され、その中間報告が公表されたばかりだ。通勤パスとはどういうものなのか、そして今後どうなるのか、現状を見ていこう。

従来の「朝夕割引」と試行中の「通勤パス」の違い。通勤パスは曜日・時間帯を問わないが、事前の申し込みが必要。

従来の「朝夕割引」と試行中の「通勤パス」の違い。通勤パスは曜日・時間帯を問わないが、事前の申し込みが必要。

通勤パスの仕組みは以下のとおりだ。

●利用する車種・区間を指定して、NEXCOのサイトで事前に申し込み。
●販売単位は「1か月」のみ。
●「販売額の2倍」の料金(利用可能額)まで乗り放題。
●利用可能額を超えても「超過分が5割引」になる。
●曜日・時間帯は不問。
●1日あたり「3回まで」利用可能(その日の4回目以降は通常ETC料金)。

つまり単純に、実質5割引となる「半額パス」と捉えることができる。設定された販売額はあくまで、ほとんど使わない人をふるい落とすための「供託金」のような存在だと言える。

では、高速道路を何回利用すれば元が取れる、あるいは利用可能額を使い切れるのだろうか。

例えば、新潟県の「長岡IC~新潟西IC」を通勤する場合、ETC通常料金は片道1,600円で、通勤パスは16,000円。つまり「5往復」で元が取れる。「10往復」すれば利用可能額を使い切れるのだ。

通勤パスは「ETC平日朝夕割引」の進化版

「通勤パス」を利用したことによる変化。

「通勤パス」を利用したことによる変化。

通勤パスは、これまでの「ETC平日朝夕割引」に代わるものとして、試験的に導入されてきた。ETC平日朝夕割引とは、平日の6~9時、17~20時に料金所を通過することを条件に、同じ区間を5回以上利用すれば3割引、10回以上で5割引になるシステムだ(最大100km相当)。

課題として「割引時間に交通が集中して渋滞を招く」「時間帯が合わない勤務体系の人が損する」という点があった。そこで、より柔軟な対応ができる施策として、曜日・時間帯を問わない「通勤パス」を全国的に拡大していく方針が示されたのだ。

最初に社会実験が始まったのは、2023年度の石川エリアだ。現在は以下の6エリアに拡大している。

【北海道】札幌南IC~千歳IC
【新潟県】新潟亀田IC/新潟中央IC~長岡IC
【山梨県】大月IC~長坂IC
【石川県】金沢森本IC~加賀IC
【香川県】白鳥大内IC~坂出IC/善通寺IC
【長崎県】大村IC~長崎IC/川平IC

国土交通省の発表によると、2024年度の各エリアにおける、1か月あたりの平均申込数は約220~600件ある。最多は石川県の約600件で、申し込み上限に達したのは新潟県と長崎県だ(上限500件)。

1人あたりの月平均利用回数は27~36回で、最多は長崎県の36回。これは、およそ月20日前後の通勤利用に相当する。また、全国平均で23%のユーザーが「月40回以上」利用している。一方、「10回以下」の利用にとどまっているユーザーも6%いた。

ユーザーの声で印象的なのが「高速道路を朝だけ使っていたのが、夜にも使うようになった。家に早く帰れるようになり、家族との時間が増えた」「時短勤務だったので、朝夕割引の時は帰りに高速道路をフルで使えなかった。通勤パスのおかげで助かった」というものだ。

通勤パスにより「高速道路の利用増」となったのは54%。うち23%は「今まで高速道路を使っていなかった」ユーザーだった。

これは少なくとも、通勤パスによって生活が楽になり、割引の恩恵に与れる機会が増えたという、「質的改善」があったことが、ある程度わかる結果と言えるだろう。

しかし、高速道路の利用増によって、交通量が増えすぎて渋滞を招けば本末転倒だ。ユーザーの走行距離の増加率は、通勤時間(ETC平日朝夕割引の時間)とそれ以外でほぼ同じ。つまり、特に分散を促進している効果はないようだ。この結果から、通勤時間帯の交通量増加が相対的に大きい可能性も考えられる。もし、これが交通容量を超えれば、渋滞を招く可能性もあるだろう。

現在の通勤パスの社会実験では、申し込み上限が設けられているため、交通量の増加が抑えられているのが実情で、報告書でもそう分析されている。このまま全国で、申し込み上限なしの本格展開が始まれば、混乱を招くかもしれないため、慎重な検討が求められている状況だ。

通勤パスの全国展開はいつになる?

2026年度以降も試行が継続され、その結果をもとに今後の展開が決定される。

2026年度以降も試行が継続され、その結果をもとに今後の展開が決定される。

通勤パスが全国で本格展開されるのは、いつになるのだろうか。

国の2023年時点の発表では、2026年度中とされていた。しかし、2025年12月に開催された委員会の資料では、2026年度以降「試行の継続」「試行結果の分析・とりまとめ」「現行の平日朝夕割引のあり方を整理の上、本格導入をめざす」という記載がある。また、新たな試行箇所の選定に関する記載もあるため、全国での本格展開はもう少し先になるだろう。

国は次の試行箇所について、渋滞リスクを避けて「大都市近郊区間等は含まない」としている。さらに区間や料金設定など「試行条件の変更等を検討」する方針だ。

果たして次に通勤パスを体験できるのはどこになるのだろうか。そして、次の試行結果によっては、全国展開はしないと結論付けられてしまう可能性もあるだろう。通勤パスの今後から引き続き目が離せない。

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