『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第64回【Movie】──若人よ、魔改造パンダで砂漠を目指せ!
初代フィアット・パンダに乗って、チェコのプラハからガザフスタンの極東を目指す! 大矢アキオ ロレンツォの連載コラム第64回は、パンダ大好きイタリア人の若者ふたりに大注目。
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フィアット・パンダのファン大会、各地で増加中
2025年のイタリア国内新車登録台数が発表された。それによると、3代目フィアット・パンダ(319型)は10万2485台で首位を維持した。2011年の発表から14年が経過しているにもかかわらず、イタリア人ユーザーから根強い支持を受けていることがわかる。
近年イタリアでは、各地で歴代パンダのファンイベントが年間を通じて開催されるようになっている。気がつけば、筆者が住むトスカーナ州でも始まっていた。場所はフィレンツェから南西へ車で約1時間の町カステルフィオレンティーノである。イベント名を「パンダ・ア・カステッロ」という。(P)andà a Castello=カステルフィオレンティーノに行こう、という方言にかけたものである。
本欄第52回『盗んだパンダで走り出す!? 初代フィアット・パンダが若者に愛される理由。』でリポートしたイタリア北部パンディーノ村のイベント「パンダ・ア・パンディーノ」に触発された地元有志が2023年に開始したものという。
第3回を迎えた2025年も2日間にわたり、周辺のドライブ会、ストリートフード屋台、そして90年代歌謡ショーなどで盛り上がった。
カステルフィオレンティーノで2025年9月13日と14日に開催された『パンダ・ア・カステッロ』会場で。
やはり多数派は初代。オーナーが『頭文字D』ファンと思われる参加車(手前)も。
現役時代は仕事車として街中を走り回っていたパンダバン(手前)も、今はイカしたレジャーカーである。
今日きわめて希少な初代30型。エンジンはフィアット126の空冷2気筒である。脇に立つのは元オーナーのダリオさん(左)と、現所有者のアンドレアさん(右)。
その室内。1970年代末にジョルジェット・ジウジアーロが描いたスケッチをほぼそのままカタチにしている。
イタリア市民保護局による友情参加。普段は森林火災パトロールに用いられている。
2026年にモロッコ縦断ラリー参加を予定し、目下スポンサー集めに奔走しているルカさん。彼と似た夢を先に実現していた“先輩”がいた……。
サイバーパンディーノ
会場で、その“武勲”によってスペシャル展示ブースを提供されていた2人組を発見した。ローマ在住のロベルトさん(2001年生まれ・24歳)とマッテオさん(28歳)である。彼らの愛車は2003年登録のパンダである。初代の最終年だ。ただし、彼らによると購入したのは2024年で、すでに走行14万キロメートルだったという。目的は「モンゴル・ラリー」に参加するためであった。
モンゴル・ラリーは2004年に英国のオーガナイザーによって誕生したイベントだ。ラリーといっても競技ではなく、チェコのプラハ近郊からガザフスタンの極東・モンゴル国境付近の町まで6週間をかけて1万7千キロメートルを完走するのを楽しむためのものだ。
“ちっぽけで、こっけいな車で走る”という趣旨から、四輪車は原則としてエンジン排気量1000ccまで(一部1300ccまでの例外あり)のみが参加を認められる。4WD車は禁止だ。理由として、地球の4分の1周を簡単に運転できたり、月面さえ横断できそうな車は高齢者のものだから、といったユーモラスな説明が公式サイトになされている。そのため2人によれば、フォード・エスコート、英国製の日産マイクラ(日本名マーチ)といった車による参加が多かったという。
参加費は最低500ポンドで、環境保護のチャリティに回される。主催者から提供されるのは、ルートを記した書類や僅かな記念品のみだ。サポートカーは一切用意されない。保険も自身で加入する必要がある。国籍ごとに必要なビザ手続きも参加者自身で調べなければならない。
普段コンピューター・プログラマーとして働くロベルト&マッテオ組は、その21年落ちのパンダを6カ月かけてデジタル・ディプスプレイや低軌道衛星通信機器などで“武装”。旅の供として、音声認識デバイス「ヘイ・パンダ」もプログラミングして搭載した。車名は「ヴィンティッジ感とテクノロジーの力」の象徴として“サイバーパンディーノ”とした。
そして2025年のモンゴル・ラリーは7月から8月にかけて開催された。二百数十名・百数十台のエントラントと共に参加したロベルト&マッテオ組の奮闘ぶりは動画でご覧いただこう。
サイバーパンディーノのベースは2003年登録の初代パンダ。
オレンジ色のスタック脱出用ラダーといい、その他のアイテムといい積載方法にセンスを感じる。
最上部にはユーテルサット製低軌道衛星通信システムのアンテナが。
ラゲッジスペースの左半分を占めているのは、連続出力3680ワットのポータブル電源。
「砂漠のパスタ」の味
周到な準備にもかかわらず、ロベルトさんによると行程中「壊れそうなものはすべてぶっ壊れた」と笑う。さらにマッテオさんは「ある時点から、今日は何が壊れるか、予想するのが楽しみになったよ」と明かしてくれた。
ハイテク機器の恩恵を受けるうちにいつしか「形あるものはすべて壊れる」という原則を忘れ、一旦故障すると右往左往するしかない我々にとって、彼らの達観ともいえる語りは筆者に羨ましくさえ映った。
ちなみに、彼らが行程中に食べていたという簡易パスタをおすそ分けしてもらった。袋に熱湯を入れてかき回してから6分。あとは添付のオリーブオイルを入れるだけで出来上がりだ。
食べてみると、野菜風味、トマト&バジリコ味いずれも、想像よりも味わい豊かだった。子どもの頃、東京で開催されたイベントで買った宇宙食とは雲泥の差だ。
後日知ったことだが、製品は「ティベリーノ」という19世紀末から4代続く食品メーカーの新製品だった。さすがイタリア人。砂漠でもパスタの質には妥協しない。
スポンサーの数々。大小があるのは、ピクセル単位で購入してもらったため。
二人が携行したパスタ「アウトフード・エクスプローラー」。




