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公開日:2025.12.09

文句があるなら乗って言え! BYDの新型PHEV「シーライオン6」を侮るな。日本車にも負けない要素とは?【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第10回

シーライオン6のボディサイズは全長4775×全幅1890×全高1670mm

BYDの本命はPHEVだった!? 自動車評論家・国沢光宏氏が話題の新型「シーライオン6」に試乗した。その乗り心地は噂以上? 日本車や欧州車と比べてどうなのか?

シーライオン6のボディサイズは全長4775×全幅1890×全高1670mm

文=国沢光宏

画像=塚原孝顕

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BYDとは何者かを再確認

シーライオン6は中国車なので、普段でも試乗レポートや紹介記事を書くと否定的な意見を多数頂く。時節柄、さらに厳しいことになるだろうことは容易に予想出来る。

まず大前提になるのが「嫌いなら読む必要なし!」。嫌悪感持つ人はどんなに良いクルマでも中国車など買わないと思う。買わないなら記事を読むのは時間のムダ。否定的なコメント書くのも時間のムダです。

そんなハードルを乗り越えた読者諸兄のため、BYDについて少し紹介したい。

中国の自動車メーカーには「共産党系」と「民族系」がある。日本の自動車メーカーと提携している『広州汽車』や『東風汽車』の場合、共産党が投資しているのに対し『BYD』や『長城汽車』は民間。したがって中国国内での地盤は安定しておらず、むしろ積極的に海外進出しようとしている。

海外関係に詳しい人なら、中国本土から出て世界中でビジネスをしている「華僑」をイメージしてもらうのが最も解りやすいと思う。いろんな意味で慎重なトヨタながら、中国でのビジネスパートナーにBYDを選んでいる。

政治が絡むと中国は超面倒くさい国ながら(私も距離を置きたい)、人口が日本の10倍という国であり、長い歴史もあるだけに奥行きあって興味深い。クルマに責任ないし。

BYD シーライオン6|BYD Sealion 6

BYD シーライオン6|BYD Sealion 6

シーライオン6は何がスゴイ?

長い前置きになった。BYD得意のPHEV技術を使うシーライオン6である。

このクルマの面白さはハイブリッドとして乗って、何らストレスがないことだ。普通PHEVといえば搭載している電池の量が多いためハイブリッドより圧倒的に高価。加えて車重もあることなどの理由により、ハイブリッドと比べ実用燃費が悪くなってしまう。となれば自宅に充電環境無い人はPHEVなど意味なし。

シーライオン6は398万2000円(FF)でハリアーやエクストレイルに代表される国産ハイブリッド車と同等の価格帯になる。

いや、サンルーフやインフィニティのプレミアムサウンドシステムに代表される本来ならオプション設定の装備まで標準ということを考えれば、下を見て100万円くらい安い。しかも自動車税や重量税が免税になる、補助金だって出るからさらに安い。

インテリアにはインフィニティオーディオやシートヒーター、ワイヤレス充電などの快適装備も充実。インパネまわりの質感も良い。

インテリアにはインフィニティオーディオやシートヒーター、ワイヤレス充電などの快適装備も充実。インパネまわりの質感も良い。

お好みに合わせて決められる電池残量を70%に設定しておくと、常時10kWh以上の電力を持つ。オートキャンプなどの時に使えばホットプレートや照明、冬場であれば電気毛布なども使える、自然災害の時の強力な電源にだってなります。

自宅に充電環境ある人は実走行距離で70kmくらいまで電気自動車として使える。ほとんどガソリスタンドに行かなくなると思う。

乗り心地やハンドリングは日本車と互角?

シーライオン6のEV走行換算距離(等価EVレンジ)は100kmで、ハイブリッド燃費(WLTCモード)は22.4km/L。

シーライオン6のEV走行換算距離(等価EVレンジ)は100kmで、ハイブリッド燃費(WLTCモード)は22.4km/L。

試乗といきましょう。クルマのサイズはハリアーやエクストレイルをイメージして頂ければいい。Dレンジをセレクトしてアクセル踏むと、電池があれば設定残量(PHEVとして使うのなら25%)まで普通の電気自動車である。

電気自動車としてのレベルは十分高い。アクセル踏んだ時の自然な加速感や、技術的に難しい協調回生ブレーキの仕上がりも日本車の平均レベルを超える。

日本勢より深い電気自動車作りの経験を持つためだろう。乗り心地の質感やステアリングフィールも日本車に勝るとも劣らず、欧州車より少し届かない程度。

絶対的な加速は1940kgのボディに197馬力ということで「凄く速い!」レベルじゃないまでも、同じクラスのハイブリッドと同等の動力性能を持つため不満なし。むしろアクセルレスポンスなどはハイブリッドを凌ぐ。

122Nm/4000-4500rpmを発生させるエンジンと、最高出力145kW、最大トルク300Nmを発生させるモーターを組み合わせて搭載。

パワートレインは最高出力72kW/6000rpm、最大トルク122Nm/4000-4500rpmを発生させるエンジンと、最高出力145kW、最大トルク300Nmを発生させるモーターを組み合わせて搭載。

ハイブリッドシステムは、巡航時の燃費を稼ぐ直結モードを加えたホンダの2モーターと同じ。走り出しや、街中だとエンジンで発電した電力でモーターを駆動する。

巡航時はエンジンで直接タイヤを駆動する。驚くべきはWLTCモード燃費。ハリアーハイブリッドと同じ22.4km/Lとのこと。ブレーキ時の回生性能が電池搭載量少ないハイブリッドより圧倒的に大きいからだ。

さらに驚くべきはエンジン掛かった時の静粛性。中国製エンジンを少しばかり侮っていたかもしれない。日本勢のエンジンより静かで滑らか。おそらくピストンなどの精度を欧州勢から学んだんだと思う。

クルマ好きならぜひ一度試乗してみることを勧めておく。購入を考えているのなら、最大のリスクは「日本から撤退すること」。この点についていえば私も全く予想出来ない。

BYD シーライオン6|BYD Sealion 6

室内に開放感をもたらすパノラミックガラスルーフを標準装備。

SPECIFICATIONS
BYD シーライオン6|BYD SEALION 6
ボディサイズ:全長4775×全幅1890×全高1670mm
ホイールベース:2765mm
車両重量:1940kg
駆動方式:FF
エンジン:直列4気筒自然吸気
総排気量:1498cc
エンジン最高出力:72kW/6000rpm
エンジン最大トルク:122Nm/4000-4500rpm
モーター最高出力:145kW
モーター最大トルク:300Nm
バッテリー総電力量:18.3kWh
サスペンション:(前)マクファーソンストラット(後)マルチリンク
ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク(後)ソリッドディスク
タイヤ:(前後)235/50 R19
燃費:22.4km/L(ハイブリッド燃料消費率 WLTCモード)
EV走行換算距離(等価EVレンジ WLTCモード):100km
税込価格:398万2000円

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