イエローのプジョー106は、日常の差し色になる小粋なホットハッチ|フォトグラファー澤村洋兵の「クルマと彩るボクらの生活」vol.5
愛車と仕事、そして人生の価値観を綴る澤村洋兵さんのフォトエッセイ。今回はフォトグラファー・ビデオグラファーとして活動する「古江ちゃん」とその愛車「プジョー106 S16」が登場。ヤングタイマーと呼ばれる1980~2000年代のクルマを“あえて”手に入れるオーナーは、一体どんな人でなぜプジョー160を選んだのだろう。
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いつの間にか同業者になっていた友人
こんにちは。フォトグラファーの澤村洋兵です。
少し前に、愛車のグロリアワゴンを車検に出しました。ということは、乗り始めて2年が経ったということ。
手に入れた当初は、少しくらい飽きが出たり、他のクルマに乗り換えたいって願望が出たりするのかも……と思っていたけれど、全くそんな気持ちにはなっていません。それどころか日を追うごとに愛が深まるばかり。これは旧車乗りだからこその気持ちなんでしょうか? もちろん、感じ方は人それぞれだと思いますが、最近のボクとクルマとの関係はそんな感じです。
というわけで、この連載も5回目になりました。不定期ですがのんびりと続けさせてもらっています。これも読んでいただいているみなさんのおかげ。ありがとうございます。
さて今回は、割と長い付き合いになってきた“古江ちゃん”こと古江優生くんの愛車を紹介します。
出会った頃の彼は、ファッション業界の人だったのですが、いつの間にやらボクと同業者になっていました。そう、彼もカメラに関係するクリエイター。フォトグラファーでありビデオグラファーとして活動しています。
そんな彼がいつの日か、SNSにやたら真っ黄色な可愛いクルマを投稿しているのを見かけました。
「もしかして、これは古江ちゃんのクルマ? いいなー! いつか見せてもらいたい。乗せてほしいなぁ」なんて漠然と考えていたのですが、この連載をきっかけに見せてもらうことになりました。
カメラに関するクリエイターとして活躍する古江ちゃん。機材談義にも花が咲きます。
一目惚れしたイエローの「プジョー 106 S16」
イエローのボディカラーが目を引く「プジョー106 S16」。プジョーとピニンファリーナの共作によるどこか気品を感じるデザインも魅力的。
そんな古江ちゃんの愛車は「プジョー 106 S16」。
小柄なサイズ感ながらイエローのボディカラーが目を引くスポーティーなクルマです。
実際見てみると、やっぱりめっちゃイエローですが、それが逆に古江ちゃんにとても似合っています。彼は普段、落ち着いたトーンの渋くてかっこいいファッションを身にまとっているので、この派手なカラーが差し色になるように感じます。さすがのセレクトセンスです。
プジョー106 S16といえば、左ハンドルの5速マニュアル、3ドアハッチバックモデルしか正規販売されなかった、割と変態仕様なクルマ。
どうしてこのクルマを選んだのか色々と話を聞いてみると、クルマ好きな父親がヨーロッパ車に乗っていたこともあり、自分でもマニュアルのヨーロッパ車が欲しいなと思っていたそう。
そして、他の候補も色々と考えてみたり、探してみたりもしたのだけれど、最後の決め手は“一目惚れ”だったのだとか。
これはクルマでもカメラでも同じですが、ルックスや出会ったタイミングなど、なぜだかビビッと来る瞬間があるもの。これから相棒になって同じ時間を過ごすのだから、そういう感覚で選びたくなるのも共感できます。
シックなファッションとのトータルバランスが良い感じ。
走りも音もいい……窓を開けて流す楽しさ
エンジン音を聞きながらドライブするのも楽しい。
インパネ周りもシンプルだけどスタイリッシュ。走りを重視したクルマの潔さを感じる。
古江ちゃんは、プジョー106の前からマニュアル車に乗っていたそうで、マニュアル車の運転操作に抵抗はなく、むしろ走るのを楽しんでいるのだとか。
ドライブしながら話を聞いていたのですが、シフトレバーをガチャガチャと操る姿って、横から見ていてもやっぱりカッコいい。ボクもマニュアルで運転したくなってきます。
「踏んだら踏んだ分だけ走ってくれるし、小回りが効くので運転していて楽しいですね。あと、このクルマは音も良くて。その音を聞くために、音楽もかけずに窓を開けて運転する時もあるんですよ」と古江ちゃん。
その変態な感じめっちゃいいですよね! 確かに軽快なエンジン音が良いBGMになって、クルマの世界に没入できる最高なドライブが楽しめそうです。
このクルマで不便なことはないのか質問してみると「意外と不便なことはなくて、この時代からクルマって完成されていたんだなって思います」とのこと。
確かにボクも「旧車って不便そう」「燃費悪そう」と言われることも多いのですが、実はそこまで不便さを感じたことはありません。もちろん90年代より前のいわゆるオールドタイマーやクラシックカーになれば、そうはいかないと思いますが……。そういう意味では、90年代から2000年代のクルマって今が狙い目なのかもしれません。
日常を共に過ごす相棒
カメラを仕事にしていると、何かと荷物が多くなる。
小柄な見た目にも関わらず、ラゲッジスペースの収納力も実用向き。
そんな古江ちゃんのプジョー106は、小柄なボディながら仕事道具も意外と積み込めます。
後席のシートバックを倒せば、ラゲッジスペースとあわせてフラットな収納スペースになり、カメラの入ったキャリーケースや三脚などのスタンド類も難なく収納できます。仕事にも使えるので、ほとんど毎日一緒に出かけているんだとか。
彼にとって仕事でも遊びでも、普段の生活に欠かせない存在となっているようです。
クルマの中はもう1つの居場所
愛車ってまるで“秘密基地”。もう1つの自分の居場所になってくれる。
古江ちゃんとクルマの話をしていて、すごく共感したことがあります。
それは、クルマを買うと、もう1つ自分の居場所ができたような感覚にもなるということ。なんというか、子どもの頃に憧れていた“秘密基地”ができたような感覚になるんです。
この新しく自分だけの空間、自分だけの世界が生まれる感覚って、他ではなかなか味わえないのではないでしょうか。これからクルマを買うか悩んでいる人が居たら、ボクたちから伝えたい楽しみの1つです。
遊びの時も、仕事の時も一緒。そして移動時間もクルマと一体になって運転を楽しめる。さらに、ただ何となくクルマの中で過ごす時間もある。
古江ちゃんの話を聞いていると、日常に寄り添って彩りを与えてくれる愛車は、まさに“最高の相棒”になっていると感じます。なんかいいな……と心底思いました。
そんな風に考えていると、ボクも自分の愛車を運転したくなってきます。というか相棒に会いたいというような感覚でしょうか。これも旧車に乗るようになって芽生えた、新しい感情ですね!
もし、これを読んでいるあなたがまだ、愛車を手に入れていないなら、ボクや古江ちゃんのように、相棒と呼べるクルマに出会って、ぜひこの感情を味わってみてほしいです。
仕事もプライベートも、日々を共に過ごす相棒。





