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公開日:2025.10.02

新型「ゴルフR」と「ゴルフGTI」走って楽しいのはどっち? 渡辺敏史がサーキットで試す【試乗レビュー】

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

走って楽しいのは「ゴルフR」か、それとも「ゴルフGTI」か。フォルクスワーゲンの最新パフォーマンスモデル2台を、木更津のサーキットで乗り比べ。モータージャーナリストの渡辺敏史がリポートする。

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

文=渡辺敏史

写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン

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ゴルフRとゴルフGTIは何が違うのか?

74年の初代登場以来、コンパクトカーの代名詞として世界のユーザーに親しまれてきたVWゴルフ。同時に、多くの自動車メーカーのベンチマークであり続けるクルマでもある。半世紀余の間に売れた数は3700万台以上と強烈だが、愛される大きな理由はやはり走っての上質な乗り心地、高速や山道でも安心感抜群な運動性能の高さにあるだろうか。

そんなゴルフの印象を決定的なものにしたのが、75年に登場したグレード「GTI」だ。初代ゴルフをベースに、当時は珍しかった電子制御燃料噴射=インジェクションを採用して安定したハイパワーを得ただけでなく、それを支えるサスペンションチューニングなどを加えたゴルフGTIは、一見普通のファミリーカー的なナリにして、ワインディングでもアウトバーンでもポルシェに肉薄するパフォーマンスをみせるなど、型破りなインパクトをクルマ好きにもたらした。誰が言ったか「ホットハッチ」なる形容は、まさにそのギャップが言語化されたものだ。

そして現在、8代目の後期となるゴルフには、2つのパフォーマンスモデルが用意されている。ひとつは前述の通り、登場から半世紀の歴史を今年刻んだGTI。もうひとつが今回の主題となる「R」だ。その祖は今から四半世紀近く前、02年に登場したR32というグレードに端を発している。ゴルフの小さな体躯に独創的な3.2リッターの狭角V6を搭載、そのハイパワーを4WDで受け止めるというそれは、日本でも好事家の称賛を浴び、限定数が争奪戦となった。

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

以来、GTIと両輪でRもゴルフの看板を背負っているわけだが、この両車に果たしてどんな差があるのかという話にもなるわけだ。ちなみに6代目以降、搭載エンジンはパワー的な差異はあれど、両グレード共に2リッター4気筒直噴ターボとプロファイルに違いはない。そして8代目の後期モデルと位置づけられる現行型もFFのGTIが265ps、4WDのRが333psと明確な差異が保たれている。

どの世代でも運動性能に対する高い期待値を受け止めてきたゴルフの、最新の最上とは果たしていかなるものか。一見するに、普通の人にはGTIとRとの違いは見抜けないのかもしれない。

よくよくみればロアグリルやエキゾーストエンドを纏める前後のバンパーであったり、穴開きの大径ローターを携えるブレーキシステムであったりと、クルマ好きにはその差を汲めるが、大仰なウイングや地面を掘り返すようなスポイラーなどのわかりやすい空力アイテムの装着は敢えて避けているかのようでもある。

一目瞭然な識別点は4本出しのエキゾーストと小さなエンブレムくらいだろうか。パフォーマンスを誇張するでもなく、日常に違和感なく溶け込めるこの控えめさこそがゴルフRの魅力ではないだろうか。

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

新型ゴルフRは12秒速い!

今回は千葉県木更津市にあるポルシェエクスべリエンスセンター東京のコースや設備を使っての試乗機会だったため、ゴルフRの持てる力を遠慮なく引き出すことが出来た。

ゴルフRの性能的なキモは、4WDの駆動制御にある。基本は100:0で前輪側に、必要に応じて50:50まで後輪側に駆動を配分するというロジックは前型のゴルフRと同じだ。これは雨や雪などの低ミュー環境でのグリップ確保のみならず、ドライ路では後輪側を積極的に用いた旋回力の強化にも働いている。

それに加えて新型のゴルフRは、後輪の左右輪もアクティブに差動できるデファレンシャル「Rパフォーマンス・トルクベクタリング」を搭載している。たとえば左コーナーを曲がる際には右後輪を増速することでコーナリングスピードを向上させる、そんなことも可能となるわけだ。

もちろん速度や操舵角など様々な要件から最適値を判断するのは一筋縄ではいかないが、他のデバイスも含めての制御を司るゴルフRの頭脳が「ビークル・ダイナミクス・マネージャー」だ。ちなみにRモデルの開発は、ドイツのサーキット、ニュルブルクリンクの北コースで行われているが、新型は前型に対して、実に12秒のタイムアップを果たしているという。この統合制御がそれに大きく寄与していることは想像に難くない。

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R

と、これらのおかげで新しいゴルフRはぐるんぐるんに曲がるクルマに仕上がっている……かと思いきや、話はそんな浅はかなものではなかった。Rパフォーマンス・トルクベクタリングの作動状況はメーター上のインジケーターでも確認できるが、設定したドライブモードに応じて駆動制御がかなり異なっており、左右輪の差動が最も活発に働く「スポーツ」では確かにシャープな旋回感が体感できる。

最もスパルタンな「レース」はむしろそこから一歩退いたキャラクターで、そのぶん前後の駆動配分で少しでも推進力を路面に伝えようという設定にうかがえた。そして「コンフォート」ではその前後駆動配分も前輪側が主体となり、日常的な安定性に振り込んだセッティングとなっている。

軽やかな新型ゴルフGTI

ちなみに同条件で比較することができたゴルフGTIは、荷重をしっかり前輪に乗せながら舵を入れればスパッとコーナーを掻っ捌いていく、そういう軽やかさがドライビングの楽しさと直結していた。全方位的に盤石に速い4WDのRに対すれば、見方によってはFFのGTIの方がファンではないかと思う面もある。

そんな両車でありながら、一方で大前提としているのは走っての安定性や快適性といったベーシックな項目がきちんと担保されているということだ。速さだけのために何かを犠牲にはしないという辺りからは、いかにもゴルフらしい哲学が感じられる。

逆手に取れば小さくても上質かつ盤石の安定性をもって速い……という、その全能感こそがゴルフRのキャラクターともいえるだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI

SPECIFICATIONS
フォルクスワーゲン・ゴルフR|Volkswagen Golf R
ボディサイズ:全長4295×全幅1790×全高1465mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1510kg
駆動方式:4WD
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:245kW(333PS)/5600-6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgfm)/2100-5500rpm
トランスミッション:7段AT
サスペンション:(前)マクファーソンストラット(後)4リンク
ブレーキ:(前後)ベンチレーテッドディスク
タイヤ:(前後)225/40R18
価格:704万9000円

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI|Volkswagen Golf GTI
ボディサイズ:全長4295×全幅1790×全高1465mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:195kW(265PS)/5250-6500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgfm)/1600-4500rpm
トランスミッション:7段AT
サスペンション:(前)マクファーソンストラット(後)4リンク
ブレーキ:(前後)ベンチレーテッドディスク
タイヤ:(前後)225/40R18
価格:549万8000円

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