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公開日:2025.10.01

“技術の日産”に超久しぶりに出会った! 「次世代プロパイロット」は完全自動運転より現実的な最適解だ【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第8回

次世代プロパイロットを搭載したBEV「日産アリア」

日産は次世代運転支援技術「ProPILOT(プロパイロット)」搭載モデルを2027年に発売する予定だ。2025年9月には東京・銀座の複雑な交通環境でデモ走行を行い、高度な運転支援を披露している。その走りは、もはや普通のクルマと見分けがつかないほど。ではなぜ日産は、自動運転ではなく運転支援として発表したのか。その理由は日本でロボタクシーが普及しないことにも関係がありそうだ。自動車評論家の国沢光宏氏が日本のクルマ業界にモノ申す!

次世代プロパイロットを搭載したBEV「日産アリア」

文=国沢光宏

写真=日産自動車

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米中で実用化が進むロボタクシー、なぜ日本で走らないのか?

日産がクルマの未来を変えてくれるような技術を発表した。「次世代プロパイロット」と呼ばれる運転アシスト機能で、これを使えば交通事故を10分の1以下にすることや、高齢者の免許返納を伸ばしつつ安全を確保することだって可能。

しかも2027年度に実車採用され、価格は将来的に10万円も見えるレベルになると私は予想している。以下、詳しく紹介してみたい。

一般的に自動運転と言うと「運転手が乗っておらず目的地をインプットすれば自動で走り出す」ようなイメージを持つと思う。実際、中国やアメリカでは「ロボタクシー」などと呼ばれる無人のタクシーが実用化されている。乗ったことのある人もいるだろう。スマホで呼び出すと迎えに来る。目的地を指定してやれば街中を普通のクルマみたいにスイスイ走って到着。

なぜ日本はそうならないのか?

警察は事故が起きたなら人間を捕まえないと納得しない。自動運転車の場合、ドライバーなど存在しないため、事故を起こしたクルマを作ったメーカーの責任者をお縄にしようとするだろう。最悪、社長ということになる。一方、国民感情からすれば、そんなクルマを認可した国交省が悪いと考える。これまた国交省のTOPの責任を追及するだろう。

メーカーも国交省も「そんなら今のままでいい」。根っこはH2ロケットの成功率が世界一高いのに、人ばかりか猿や犬すら乗せないのと同じ。ちなみに中国やアメリカで事故が起きたら「責任は追及しない。ミスを見つけて再発防止策を取る」。これ、航空機事故などにも言える。我が国の警察は“ミスをした人間”を捕まえるのが仕事なのだった。日本のロボタクシー、遠いと思う。

次世代プロパイロットを搭載したBEV「日産アリア」

次世代プロパイロットを搭載したBEV「日産アリア」

日産の次世代プロパイロットは何がスゴイ?

文頭に戻る。日産が開発中のシステムは、自動運転でなく運転支援(ADAS)になる。

運転支援とはなにか? すでに普及しているアダプティブクルーズコントロールや、レーンキープ、自動ブレーキなどのこと。アクセルとブレーキを自動で行い先行車との車間距離をキープ。はたまたハンドル操作を自動で行い、車線をキープ。追突を防ぐための自動ブレーキもADASだ。

運転の主体はドライバーのため、事故があればドライバーの責任になる。警察からしても問題なし。日産の次世代プロパイロットは、運転支援を極限まで追求したと思えばいい。車載のナビゲーションシステムで目的地を設定する。続いて発進スイッチを押す。するとクルマが自動的に動き出す。交差点あればウインカー出して曲がり、信号あったら守る。横断歩道に歩行者いると止まる。

普通のドライバーと全く同じ運転をしてくれるのだった。ここでいう“普通のドライバー”は平均レベルのタクシードライバーをイメージして頂ければいい。初級ドライバーや隣に乗っているとイライラする、慎重過ぎるような運転をする人(悪い意味で言うサンデードライバー)と全く違う。次世代プロパイロット車の後を走っていても、普通のクルマと見分けは付かないほど。

都内の複雑な交通環境下に馴染んで走行するアリア(次世代プロパイロット搭載車)

都内の複雑な交通環境下に馴染んで走行するアリア(次世代プロパイロット搭載車)

加えてミスをしないから素晴らしい。クルマの周囲360度を11個のカメラで常時監視しているため、真横から接近してくる歩行者も見落とさない。今回試乗のコースはクルマだけでなく歩行者や自転車、違法駐車車両、荷車まで登場する東京のど真ん中で(銀座や新橋周辺)、しかも右折や左折など多数ある非常に難しい道路環境だったが、スタートして一度もハンドルに触る必要はなかった。

次世代プロパイロットは人間より判断速度と言う点で優れている。人間が危険を察知してブレーキ踏んだりハンドル切ったりするより早いタイミングで回避行動を行う。例えば先行車が急ブレーキ踏んだら即座に対応する。次世代プロパイロット搭載しているクルマなら、私より事故を起こす確率は低くなるだろう。75歳を過ぎると急激に事故率が高くなるけれど、このシステムなら安心です。

デモ走行中のアリアの車内。

デモ走行中のアリアの車内。

次世代プロパイロットの課題と期待

強いて課題を挙げるなら、高速道路のジャンクションや首都高など制限速度が実際に流れている速度より異様に低い(40km/h)区間や、中野駅北口ロータリーなど信号無いのに通行者が途絶えない横断歩道などの対応。自動運転だと道交法を守らなければならず、交通の流れを乱す。運転支援ならドライバーが今と同じように運転してやればOK。完全自動運転より現実的な使い勝手になる。

気になる市販時期は日産によれば2027年度。価格を聞いたら「まだ解らないです」と言うものの、高ければ普及しないことは百も承知とのこと。2030年くらいになると20万円を切ると予想しておく。また、今回は高価な「LiDAR(ライダー)」という特殊なセンサーを使っていた。車速100km/hくらいまでならカメラだけでシステム構築が可能。遠からず10万円を切るレベルになると思う。

私も不注意による事故を起こさないため、市販されたならぜひ装備されたクルマを購入したいと思う。高齢者は免許の条件(眼鏡等、と同じ扱い)として「高機能ADAS付きに限る」にすれば信号の見落としに代表される高齢者特有の事故を“ほぼ”防ぐことも出来る。その場合、任意保険の掛け金を割り引くなどすれば、購入時に車両価格が高い分をカバー可能です。

LiDAR(ライダー)はルーフに1個搭載。試作アリアのボディにはこれ以外にカメラ11個とレーダー5個が搭載されている。

LiDAR(ライダー)はルーフに1個搭載。試作アリアのボディにはこれ以外にカメラ11個とレーダー5個が搭載されている。

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